いいじまです。fj.sci.medical のみ。

メタンフェタミン(日本の覚醒剤のほとんどはこれ)は臨床ではほとんど使われ
ていないんじゃないでしょうか。

アメリカだとADHDの治療にアンフェタミンが頻用されますが(第一選択がメ
チルフェニデート=リタリン=で、第二選択がアンフェタミン)、ADHD関係
の訳書ではアンフェタミンという名前は頻繁に出てきても、メタンフェタミンの
名前は見たことがありません。

で、その手の本では、アンフェタミンは日本では発売されていない、という訳注
がついているのが常ですが、覚せい剤取締法で覚醒剤に指定されているという事
実は書かれていません。訳者は当然知っているはずですが、覚醒剤=恐怖、とい
うイメージからADHD(の治療)への偏見が増長されるのを防ぐためにそうし
ているのでしょうね。

> 私は、医学や薬物に特に詳しいわけではありませんが(ツマが医者なのでほの
> かに雰囲気は知ってる)、医学論文って今時全世界で共有されてますよね?
> 私の専門(情報工学)なんかだと、普通は英語のメジャーな論文誌は(ざっ
> と)目を通すわけで、欧米の研究者の一般的な見方というのはわかります。
> 少なくとも、研究者なら自分の専門に関する論文はサマリをするはずです。
> 
> ということは、日本でアンフェタミン系薬剤に関する研究者がいらっしゃるの
> なら、少なくともそれは知っているだろうし、あまり世界的な潮流とはずれた
> 発表をするはずがないと思うのです。
> 
> それとも、もしかして日本では論文査読者が(日本の方針に反した)世界的な
> 潮流と一致した論文をリジェクトしたりするのでしょうか。

う〜ん、そういう論文を書いても、学者本人や医学界にほとんどメリットがない
んではないでしょうか。厳格なコントロールの元でならば覚醒剤が有用なことも
あるということは精神医学や麻酔学の専門家なら常識だし、下手な論文を書くと
雑誌編集部ともども学界から袋叩きにあうし、一般に広まった偏見(と言ってい
いでしょう)を払拭するのが困難なのはハンセン病元患者宿泊拒否事件の顛末を
見ても明らかだし。

で、医療目的では、アンフェタミンの代わりとしては今のところリタリンとベタ
ナミンの2つがありますし、モダフィニールという新薬も国内で臨床試験の段階
に入っています。

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飯嶋 浩光 / でるもんた・いいじま   http://www.ht.sakura.ne.jp/~delmonta/
IIJIMA Hiromitsu, aka Delmonta           mailto:delmonta@ht.sakura.ne.jp