At Tue, 24 Feb 2004 00:18:49 +0900,
in the message, <c1d5jl$cs4$1@news.mirai.ad.jp>,
Fuhito Inagawa <fuhito@za.ztv.ne.jp> wrote
>ある国では犯罪ではない様な事が別の国では明確な
>犯罪行為だったりした場合に、罪刑法定主義という
>ものが有名無実になったりしないんでしょうか?

なぜ?

「ある国では犯罪でない」「別の国では明確な犯罪」というのは「罪刑法定主
義が有名無実では言えない」はずですが
(刑罰の問題はさておく。)。
「罪刑法定主義が有名無実」ならば「ある国では犯罪かどかどうかがわからな
い」はず。

「犯罪である/ない」と言えるのは罪刑法定主義が有名無実でないから。
罪刑法定主義は、確かに国民の行動の自由を保障する(そのための告知機能)
という側面もあるけど、その根幹にあるのは、「刑罰権の恣意的運用の防
止」。
もともと罪刑法定主義は、「罪刑専断主義」という国家刑罰権の恣意的発動に
歯止めを掛けるもの。
他国の法令を知らないために犯罪を犯してしまうのなら確かに個別事情におい
て告知機能が働いていないために行動の自由が実質的に保障されていると言え
ないかも知れないが、だとしても、法律がなければ国家が勝手に刑罰権を発動
できないことに変りはない以上、やはり罪刑法定主義の存在意義はあります。
行為者の主観面に対する効果がどうあれ、客観的に犯罪でない行為について後
で犯罪にすることだけは絶対にできないわけですから。

告知機能が完全には機能せず行動の自由の保障が主観的に完全に担保できない
としても、客観的には少なくとも刑罰を科されないという限りにおいて国民の
権利は確実に保障されているのです。

# そもそも理想通りに機能するのは完全に観念的な問題ですからね。
 どうしたって上手くいかない部分はあります。
 もっともそんなことは折り込み済みで、刑法38条3項のような規定もある。

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SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp