永井@茨城県在住です。

 7月に国会を通り、問題になっている国立大学法人法ですが、附則8条第2項の
表記に問題があると感じています。

 附則8条第1項では、現在「法人である職員団体」が法人化の際に「労働組合
法の適用を受ける法人である労働組合」になることが規定され、第2項では「
法人である労働組合」が国立大学等法人成立後60日以内に労働委員会の証明と
登記を行なわなければ、「解散するものとする」とあります。

 これが、「解散するものとする」ではなく、「法人である労働組合は労働組
合法が適用されなくなるものとする」であれば、問題ないと思うのですが、
「勤労者の団体」に「解散するものとする」と言うのは、憲法28条の「勤労者
の団結する権利」に反するのではないか、と感じています。


 国家公務員は、憲法28条の適用に対し、同じ憲法15条第2項による制限を受
けています。具体的には国家公務員法の中で団体行動権と団体交渉権に制限が
加えられていますが、あくまで憲法15条第2項を強く主張することで、「全体
の奉仕者」としての活動を阻害する行為を禁じているだけであって、憲法28条
に反するような表記にはなっていません。

 今回の大学法人法はいろいろと問題のある法律ですが、私はこの条文の表記
が一番気になっています。

※憲法28条で規定される「勤労者の団体」は、国家公務員法第108条の2によ
 り、「職員団体」、労働組合法第2条により、「労働組合」と呼び名が規定
 されています。


●国立大学法人法

附則
(各国立大学法人等の職員となる者の職員団体についての経過措置)
第八条
   国立大学法人等の成立の際現に存する国家公務員法第百八条の二第一項
  に規定する職員団体であって、その構成員の過半数が附則第四条の規定に
  より各国立大学法人等に引き継がれる者であるものは、国立大学法人等の
  成立の際労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)の適用を受ける労
  働組合となるものとする。この場合において、当該職員団体が法人である
  ときは、法人である労働組合となるものとする。
2 前項の規定により法人である労働組合となったものは、国立大学法人等の
  成立の日から起算して六十日を経過する日までに、労働組合法第二条及び
  第五条第二項の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受け、かつ、その
  主たる事務所の所在地において登記しなければ、その日の経過により解散
  するものとする。
3 第一項の規定により労働組合となったものについては、国立大学法人等の
  成立の日から起算して六十日を経過する日までは、労働組合法第二条ただ
  し書(第一号に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。


●日本国憲法

第二十八条【労働者の団結権・団体交渉権その他団体行動権】 
 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これ
  を保障する。 

第十五条【公務員の選定罷免権、公務員の性質、普通選挙と秘密投票の保障】 
1 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。 
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、
   その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。