Re: ブラックホールと量子力学
河野真治 @ 琉球大学情報工学です。続きなんだけど、mixi に書
くのはちょっとだめか。
特殊相対性理論は、実用的には、ニュートン力学に質量がm = m0/
β (β=√1-(v/c)^2) という補正が付くだけ。ローレンツ変換と
かも、質量の補正から導出されちゃう。ファインマン物理にも「
これだけで十分です」とか書いてある。運動エネルギーの分だけ
重くなったような感じ。
例えば、速度vが増えると質量が増えるので、振子が重くなったこ
とに相当して、振子時計が遅くなったように見えるというわけ。
単に見えるだけってあたりが相対性なわけで、一緒に動いている
人に取っては、見ている人の質量も増えているので遅れは見えま
せん。光は静止質量0なので、遅くなったりはしません。
電磁気の方程式の方からローレンツ変換を導出して、それから質
量の補正が必要だということを示したのがアインシュタインなわ
けなので、手順が逆ですが。4次元の計量が d x^2+dy^2+dz^2-cdt^
2 だということに対応するのがきれいすぎます。ローレンツ変換
に対して物理法則を表す方程式の形が変わらないのを共変性とい
うらしい。
双子のパラドックスで「加速して戻って来る」のと「重力場の中
に入っている」ってのが時間の遅れから見ると同じでしょってあ
たりから、一般相対論の話が出て来たらしい。
と言うことは、一般相対論も「重力場の中では質量の補正が起き
る」程度のことなのか? 重力エネルギーの分だけ重くなるっての
はわかりやすい。残念ながら、そうではないらしいです。それだ
けだと、光は重量ゼロなので、その論法だと重力で曲がらない。
例の日食の実験では光も重力場で曲がるというのがわかっている
ので、それでは実験と合わない理論になってしまう。重力レンズ
とかあるしね。電磁場の方程式の方の補正(おそらくは誘電率/透
磁率)がない限り、光は曲がらないので、なんらかの補正があるは
ず。
4次元の計量に関して、もっと一般的な係数を使ってやって、その
係数が、そばにある質量とその運動(を表す運動量テンソル)によ
って決まるってのが一般相対性理論になる。質量の補正だけで何
故足りないのかってのは、結構、難しい。スピン2とか双極子とか、
そんなことが関係してそうなるらしい。
一般相対論では、物理法則は任意の曲線座標系に対して同じ形を
持ち、それは一般共変性と呼ばれる。これは、共変性よりはきつ
い。双子のパラドックスの解決には一般相対論が必要かどうかっ
てな議論もあるんだけど、僕は、双子のパラドックスには任意の
軌跡をたどっている二人が同じ主張をするのだから、一般共変性
の仮定が入っていると思うので、必要だってな立場です。でも、
実際に曲がっているわけではない(曲率=0なので)から微妙ではあ
る。
共変性と一般共変性はほとんど差がないんだが、空間が曲がって
いると差が出る。なんと普通の微分が一般共変性を持たなくなる。
空間が曲がっている分の補正が必要になる。補正した後の微分を
共変微分と呼ぶ。これが、電磁場の方程式に対する補正に相当す
るはず。なんだけど、計算はしてません。
でも、どうも共変性も一般共変性も「それが絶対的に必要」って
わけではないらしい。これらは、物理方程式の変数を変換(ゲージ
変換)しても解は不変(ゲージ不変性)の一種であって、それは自発
的に破れたりするし。つまり、初期条件とかで「たまたま成り立
っているだけ」みたいなところがある。
量子論で、 一般共変性が成り立っているかどうかはわからない。
そんなわけなので、一般相対論をそのまま延長して、素粒子的ブ
ラックホールの議論をするのは、僕は、ちょっと怪しいと思う。
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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科
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