河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

LHCとブラックホールにつっこんでるマイミクがいたりしましたが...

「相対性理論は間違っている」という「と」はたくさんいるが、
量子力学に突っ込む「と」があまりいないのは何故だなんて話が
あったっけ。ブラックホールは相対性理論寄りの話で、LHCは量子
力学寄り。

量子力学自体は割りと簡単で、

   Φ = H Φ'

だけ。しかも、Φはベクトルで、Hは行列。行列のかけ算は高校生
でもわかる。Φ'が入力でΦが出力だと思っても良いし、Φ'が今
でΦが未来だと思っても良い。

Φが現実世界の状態なわけなんだけど、観測されるのは確率だけ。
(もはや、確立という字も辞書に載る日も近い気がする... テレビ
でも良く見るし...) で、確率は、観測するものを行列Pで表して、

   Φ・PΦ

という式で計算するだけ。・は内積。中学生で習うんだっけ? <Φ
|P|Φ> と書いたりもするけど、Φというベクトルと、PΦ (ベク
トルにPという行列をかけた)ベクトルの内積を計算するだけ。こ
れで、終り。これ以外に何もない。

確かに、簡単すぎて突っ込みにくいかも。あとはHとかPを現実世
界に合わせるだけだし。

面白いのは、量子力学の方程式自体には時間も空間も区別がない
こと。時間と空間を最初からあるものとして議論する相対論とは
全然別なんだよね。なんか特別な形をしたPが空間の位置とかに相
当するだけ。

と言うわけなので、ブラックホールみたいな時空の大域的な構造
は素粒子レベルでは、あまり意味はないだろうと僕は思ってます。
ある現象を見て「ここから、ここまではブラックホールだった」
と想像することは出来るけど、直接観測は出来ないだろうってな
感じですね。

Wikipedia によると、ブラックホールに吸い込まれたものは特徴
がなくなってしまうので、情報が失われるんだが、これは、H の
ユニタリ性(逆行列が必ず存在する(本当はHH* =1だが))に反する
なんて話が載ってました。

その話は、熱力学の第二法則(熱が平均化する方向にしか物事は進
まない)に関しても同じなので、何をいまさらって感じ。なんだけ
ど、ペンローズの「皇帝の新しい心」では、そこにいきなり突っ
込んで、第二法則とブラックホールが組になっているんだ見たい
な話だったとかいうのを思い出しました。

場の量子論になると、また時空間をad-hocに導入して、Φ(x,y,z,
t)みたいなことをするんだけど、計算するための便宜でしかない
と思う。真空が変な振舞いをするのは、数学的点を勝手に導入し
たからさ。

もっとも、計算できないけど、すっばらしく美しい物理理論って
のは沢山ある。ディラック先生の高階偏微分方程式とか、ハイデ
ルベルグの非線形宇宙方程式とか、紐理論とか... 結局、計算で
きないとだめなので、「計算するための便宜」が重要。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科