佐々木将人@函館 です。

>From:"Miyasun" <miyasun@mtj.biglobe.ne.jp>
>Date:2003/07/24 18:00:16 JST
>Message-ID:<thNTa.836$FN4.506@news1.dion.ne.jp>
>
>$ 清原(チャンウォン)地方裁判所・晋州(チンジュ)支部の尹
>$ 南根(ユン・ナムグン)部長判事は「親しい人に不利益を与え
>$ たくないという理由で、証人としての出頭を極力避け、出頭し
>$ たとしても『思い出せない』と答えるケースが多い」と話す。
>
>というのが主な偽証のようです。これは佐々木さんの挙げた
>(1)(2)とは違うと思います。でも(3)とも言えないわけで…

法律学サイドではこれは(1)か(3)に分類するんです。
というのは証人には自分が罪に問われる事項を除いては
黙秘権というのが認められないんですよ。
その結果もし知っていることであれば
「思い出せない」というのは記憶に反することを言ったことになります。
覚えていることを覚えていないと言う訳ですから。
これは(3)のパターン。
本当に忘れちゃったのなら記憶が変わっているんで(1)のパターン。

>余談ですが、占い師が占いを外しても罪にならないのは知っ
>てますが、故意に虚偽の占いをした場合にはどうなりますか?

本当に虚偽の占いの結果を伝えたのであれば
もし占いの対価をもらっていて
「もし虚偽の占いだとわかっていたら対価など支払わなかった」
という事情がある場合に詐欺罪成立です。

でも詐欺罪が成立しなければ
虚偽の占いの結果を伝えることには
犯罪は成立しないでしょう。

>たとえば、とある場所で大騒ぎが起こるのを知ってたとして、
>わざと誘導して騒ぎに巻き込ませるような場合。

そこに誘導することで犯罪が成立するのであれば
その誘導の方法が虚偽の占いの結果を伝えることであっても
偽の手紙を渡すことでも
端的に嘘を言うことでも
犯罪の成立には変わりがないでしょう。
いわゆる「だました」パターンだけど
刑法では「だましてお金をとる」以外のだます行為を
一般的に規制する条項はないし
他にも聞いたことがないです。

> 「その人の記憶はAであった」が証明出来るくらいならそも
>そも証言の必要はない気がする…

まあ時間的に言うと
その人の証言の後で別の証言とかと照らし合わせて
はじめてそうだとわかる場合もあるんで……。

でも一般論として難しいのがわかっていただけたようなので幸い。

>その数字が各国の偽証罪の要件、事案の起訴率等で覆る事があ
>るのか。日本ではそういった事例が実は多いのか。これが否定
>されれば、600倍という数字に意味はなくても、証言の信用度
>という点では差が解るでしょう。

定性的な議論でいいなら
この場合国民性で一般化するのは誤りに近いと思っています。
これは日本人を見ていれば一発でわかる訳で
事実に反することを平気で言う人もいるし
裁判所には嘘をつけないという人もいるし……。
たぶん、それはどこの国の人でも一緒なんですね。
だからきっと韓国人が法廷で正直に言わない程度に
日本人だって正直には言ってないだろう
そう大差はないだろう……って考える方が普通だと思うんですね。
あとはどんなところで差がつくかを考えてみる。

例えば上の韓国の裁判官の話が本当だとするなら
日本と韓国の差はなんだろうか……と考える訳ですよ。
例えば儒教思想の差だと思います?
……ただそうだとしても
  結局感想にしかすぎないよね……。

># ちなみに、法廷で嘘が多いと言ってたあの方はどうも変な
># 人だと判明しました。

そうです。
実は法廷では嘘が多いのかもしれないんですよ。
あたしだって「法廷ではみんな本当のことを話している」とまで
言うつもりはさらさらないし
結果本来勝つべき人が負けている例や
本来負けるべき人が勝つ例だってきっとあるんだと思います。

だけどそうやって裁判の批判をする人の言うことの
全部が全部を鵜呑みにしちゃいけないし
「自分の言い分が通らないから批判しているだけ」
かどうかの見極めをしなきゃいかんのです。

>個人的にはクイズ マジオネアのほうが(違

シュリオネアじゃだめ?
……ファイナル・シーサー!

>○韓国WEB六法
>http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9133/target.html
>
>他人任せで心苦しいのですが、日本との違いなどがあれば教
>えてもらえませんでしょうか。

条文だけ見ただけではだめで
解説書もあわせて見ないとわからないですよ。

ぱっと見た感じ日本の刑法にいまだにすごく似ているし
日本との差はあまり感じないのも感想としては持っていますが。

>> アメリカで陪審裁判を選択するのは
>> 究極的には「職業裁判官はもっと信用できない」という話ですし。
>
>そ、そうなんですか。
>なぜ *もっと* 信用できないのでしょう?想像もつかない。

う〜ん、これこそ国民性の差ですかね……。

ぶっちゃけて言っちゃうと
「イギリスのシステムを信用していない」
ところからアメリカは始まっているんじゃないかなあ……。
英米法とは言うものの
アメリカはどっちかというと制定法指向だし。
なにせ独立戦争の引き金を引いたのは
茶に対する課税で
……以来アメリカは茶を好まない……。(笑)

多少理論的に言うと
アメリカの法制度の指向って
実は「民主主義」指向が強いんですよ。
三権分立も大統領制をとって徹底している。
でも職業裁判官なり職業検察官による司法ってえのは
きわめて非民主主義的ですな。
だって民衆の意向で決まるんじゃなくて
民衆の意向とは無関係に法の論理によって決まるはず。
……どう考えても非民主主義的ですな。

で民衆の意向を反映させるために重要な司法ポストは公選。
陪審だって理念としては司法への参加で
きわめて民主主義的
(この点イギリスの陪審とは位置づけが違う。)

じゃあなんでそこまで民主主義にこだわるかと言えば
やはし……イギリスのシステムへの反感じゃないのかえ……。

># なんでも、指名されると拒否権が無いとか?

でし。
アメリカの陪審だって陪審員側に拒否権はないっすよ。
拒否権認めてたら誰も陪審をやらない。
(誰も……は語弊があるけど……
 だいぶぶんやりたくないようですよ。
 法曹関係者のアメリカ留学者のレポートなんかを見ていると。)

>私がアメリカの陪審員制度について初めて触れたのは、もう10年
>以上前になるかな。日本人留学生がハロウィンパーティーか何か
>で訪問宅を間違えて、「freeze」を「please」と聞き間違えて射
>殺されてしまった事件で無罪になったという話。あれで「陪審員
>制は変!」と思いましたね。

その事件の顛末自体は
陪審制というより法制度もしくは国民の意識の違いの方が
大きいと思いますよ。

例えば日本で大都市近郊の一軒家だと思いねえ。
見知らぬ外国人が振るフェイスのヘルメットで家の中にずかずか入ってきたので
「何者だ?」
と言ったら
「私は……」と名乗りつつさらに入ってきたので
手にしたバットで殴りつけたところ
うちどころが悪く死んでしまった……。

さあ何罪成立?

これは傷害致死罪で過剰防衛が成立して刑が減軽される可能性あると思うし
状況次第では起訴猶予があると思う。
家の内外って違いはあるかもしれないけど
日本人にとっての家の中がアメリカ人にとっての門扉の中だって可能性は
ない?
銃については自衛目的の所持が許されている訳だからねえ。

陪審制の危険というのは
(それを描くのが目的ではなかったのだが)
十二人の怒れる男に描かれているし
つかこうへいのパロディもある意味描いているところです。
公平な陪審を構成するためとして認められているいろんな理由による
陪審員からの排除(弁護側検察側それぞれに認められる)や
専断的排除(なんと何人かまでは理由なしに排除できる)が
かえって不公平な陪審を産む原因になっているという
アメリカ発の批判もありますし
職業裁判官による裁判に問題があるのと同様に
陪審制にも問題はあるんです。
……裁判員制がそれぞれの欠点を薄めるものならいいんだけどね
  それぞれの欠点をよせ集めたものにならなきゃいいけど……。
(ちなみにドイツの参審制が参考になったと言われています。)

----------------------------------------------------------------------
Talk lisp at Tea room Lisp.gc .
cal@nn.iij4u.or.jp  佐々木将人
(This address is for NetNews.)
----------------------------------------------------------------------
ルフィミア「私のアンソロ本を書くって本当?」
まさと  「それ、微妙に間違っている……。」