工繊大の塚本と申します.

In article <ken9af$5e5$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> キースラ著,齋藤正彦訳の無限小解析
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/infinitesmal_analysis_from_p5_to_p9.pdf
> で自然延長の定義を探しています。
> p7の初等性質とは一階論理(∧,∨,¬,∀,∃を組み合わせて作られた命題論理式)の事を
> 指すようです。
> 
> それでf∈Map(A,R) (但し,A⊂R)の自然延長f^*∈Map(A^*,R^*)を
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_natural_extension__00.jpg
> という具合に定義を試みたのですが

自然延長と呼ばれるものの存在はこの「無限小解析」においては
「公理」です. 9 page に公理Cがあるでしょう.

> f^*(A^*\setminus R)=??
> の右辺は何と書けるのでしょうか?
> 7ページには"fと初等性質を共有"するようにf^*を定義するように
> 記述されているのですが

公理Cで保証された自然延長がどのような性質を持つかは
公理Dで述べられています.

> 例えばf(x)=sin(x)ならf^*(x)ではsinの曲線を崩さないように
> 滑らかに実数の隙間を超実数で埋めて定義するのかなとも思いましたが,
> キチンと数式で記述する事が出来ません。

それは x に対して y = \sin x がどのように定められたかを
辿れば記述できるわけです.

具体的には \sin x = \sum_{n=0}^\infty (-1)^n x^{2n+1}/(2n+1)! と
定めれば, その自然延長も同じ式を満足します.

> あと,
> http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E6%BA%96%E8%A7%A3%E6%9E%90
> での自然延長の欄で
> 『f:R→R,R^*∋x={x_1,x_2,…}, (但し,各x_i∈R)
> f^*(x):={f(x_1),f(x_2),…}で定義されるf^*をfの自然延長という』
> というシンプルな定義を見つけたのですが

この定義は, R^* の超積(超ベキ)での構成を前提としていますので,
「無限小解析」における公理的立場とは違うものです.

> ここでxはRの部分集合になってますよね。

違うのです. R^* の元を分かりやすく区別して x^* としますが,
 x^* は R の無限積, \prod_{i \in I} R を,
 I の超フィルター U を用いて定まる同値関係で割った時の
同値類であるわけです.
 (a_i)_{i \in I} \in \prod_{i \in I} R,
 (b_i)_{i \in I} \in \prod_{i \in I} R,
について, (a_i)_{i \in I} と (b_i)_{i \in I} が同値であるとは,
 { i \in I | a_i = b_i } \in U となることだと定義します.
 (a_i)_{i \in I} を含む同値類を [ (a_i)_{i \in I} ] としましょう.
 I を自然数全体 N として, N の一つの自明でない超フィルター U を
とれば, x^* = [ { x_i }_{i \in N} ]  (x_i \in R) となります.
 Wikipedia の記述では x = { x_1, x_2, \dots }  (x_i \in R) で
実数の無限列の「同値類(クラス)」を与えたつもりなのです.
正しくは x^* = [ { x_1, x_2, \dots } ]  (x_i \in R) であり,
同値類を表す [ ] を省いたのは問題です. しかし,
 \sin^* x^* = [ { \sin(x_i) }_{i \in N} ] とするというのは
超積を用いての R^* の構成では自然なものです.

> だから"R^*⊃x={x_1,x_2,…}"と書くべきだと思うのですが、、

部分集合ではなく, R の無限列の同値類だと考えているのです.

> R^*の元はRの部分集合なのですかっ!?
> そうしますと,f^*は2^Rから2^Rへの写像になっているのですが、、
> http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/infinitesmal_analysis_from_p5_to_p9.pdf
> ではR^*の元はRの部分集合であるという定義らしきものは見当たらないのですが。
> 勘違いしておりますでしょうか?

ということで違います.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp