In article <ju6v96$93r$1@dont-email.me> kyokoyoshida123@gmail.com writes:
>取り敢えず,多様体の定義を知りとうございます。
このような数学的概念の定義について考える場合、
「数学的な議論に耐える厳密な定義」と
「考え方の概要や活用場面を理解するための漠然とした定義」とは
全く切り離して別のものと考えた方が良い場合があります。
「多様体」なんて、その典型じゃないでしょうか?

多様体の「漠然とした定義」は
「曲線や曲面の概念を拡張したもの」とでも表現すれば良いでしょう。
もちろん、このような曖昧な表現では、数学的な議論には耐えませんから、
そういう意味では「定義」と呼ぶべきではないかもしれません。
しかしながら、社会科学で用語を定義する場合や、
自然科学でも中身のよくわからない複雑系を
外から切り崩して分析していこうとする場合などには、
この程度の曖昧な「用語定義」を行う場合がありますから、
そういう意味で「定義」と呼ぶのは間違いではありません。
しかし、それは「数学的な定義」とは全く別物です。

ただ、その概念が「大雑把に言ってどういう考え方なのか」
「どういう問題を考える場合に、どのように役立つのか」
ということを理解するには、
このような「漠然とした定義」が役立つことがあります。

「曲線や曲面の概念を拡張したもの」という表現では何が曖昧かというと、
曲線や曲面の「どの性質に着目」して、それを「どのように拡張」するかが、
全く明示されていないというところです。
そして、その「着目のしかた」には何通りも考えられますから、
その各々に対応して、異なる「多様体の定義」があると考えておけば良いでしょう。

これらは単に「考え方の基本的な方向性」が同じというだけのものですから、
中には一方が他方に条件を追加したものという関係にあるものもあるでしょうが、
そんな単純な関係には無いものも当然出てきます。

                                戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
                                 toda@lbm.go.jp