Re: Cauchyの積分定理により∫_C u^{s-1}/(exp(u)-1)duが定数となる理由
工繊大の塚本です.
In article <120626190151.M0123967@ras2.kit.ac.jp>
Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
! f_s(u) = u^{s-1}/(e^u - 1) とするとき,
! 0 < \epsilon_1 < \epsilon_2 に対して,
! \int_{C_{\epsilon_2}} f_s(u) du - \int_{C_{\epsilon_1}} f_s(u) du
ここで C_\epsilon というのは, 実軸の正の無限大から
\epsilon まで実軸を移動して, 原点中心半径 \epsilon の
円周上を, 偏角 0 から 2 \pi まで移動し, 実軸を
\epsilon から正の無限大まで移動する路です.
In article <jt01cu$5kh$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> これは
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph170.jpg
> という図になりますね。
その図では C_{\epsilon_2} と C_{\epsilon_1} の差が
どうなっているのか, 明確に記されてはいません.
! = \int_{\gamma_{\epsilon_2}} f_s(u) du
! - \int_{gamma_{\epsilon_1}} f_s(u) du
! + \int_{\epsilon_1}^{\epsilon_2} f_s(x) dx
! - \int_{\epsilon_1}^{\epsilon_2} \exp(2 \pi i s) f_s(x) dx
! となることに注意します.
> これは
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> という図になるのですね。
> 赤部は一周してからε_2→ε_1に移動するという意味で青部より下に描いてます。
はい.
! ここで \gamma_\epsilon は
! 原点中心半径 \epsilon の円上を,
! 実軸の正の部分との交わりから一周する路ですが,
! u^{s-1} は円周上では一価にはならないので,
! \int_{\gamma_\epsilon} f_s(u) du を閉曲線上での線積分としては
! 扱えません.
> 積分値が一意的に定まらないからですね。
被積分関数 u^{s-1} の実軸の正の部分から出発するときの値は
u^{Re(s)-1} e^{i Im(s) \log u} とするという「分枝」を
選ぶことにしていますから,
\gamma_\epsilon での線積分の値は一意に決まりますが,
> 積分路で一価となる被積分関数しか積分できないという事を
> しっかり覚えておきたいと思います。
何処を出発点とし, 何処を終点とするか, を定めない閉曲線上での
線積分ではないことに注意して下さい. 一価でない被積分関数を
相手にするときには, 何処が出発点で, 何処が終点で, 出発点での
分枝として何を選んでいるか, によって結果が異なります.
! 実軸の正の部分は二つの別のシートの上にあると考えて,
! [\epsilon_1, \epsilon_2] + \gamma_{\epsilon_2}
! + (- [\epsilon_1, \epsilon_2]) + (- \gamma_{\epsilon_1})
! という閉曲線で囲まれた領域上とその周において
! f_s(u) が一価正則であることを用いることになります.
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> と考えたのですが前述で
> 「u^{s-1} は円周上では一価にはならないので,」
> と仰ってますよね。u^{s-1} は円周上では2価関数なのでしょうか?
いいえ. 可算個の値を取ります.
> 3価以上の多価関数なら二シートだけでは足りませんよね?
今考えている積分路とその内部を含む領域を考えるときは,
実軸の所で2重になるようなシートを考えれば十分です.
> In article <120629172135.M0105513@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > \int_{C_\epsilon} u^{s-1}/(e^u - 1) du は
> > \epsilon に依りません.
>
> ふーむ。これが相変わらず謎なんですよね。
> どうして無限大の先で曲線Cが繋がっているかは分からないんですよね?
繋がっているとは考えません.
> なのでCは閉曲線かどうかさえも分からず,,,
C_\epsilon は閉曲線ではありません.
> 従って,Cauchyの積分定理も使えませんよね?
> どうしてεに依らないのでしょうか?
\int_{C_{\epsilon_2}} f_s(u) du - \int_{C_{\epsilon_1}} f_s(u) du
は f_s(u) の \Gamma_{\epsilon_1, \epsilon_2}
= \gamma_{\epsilon_2} + (- [\epsilon_1, \epsilon_2])
+ (- \gamma_{\epsilon_1}) + [\epsilon_1, \epsilon_2]
という閉曲線上での積分として書くことが出来て,
閉曲線 \Gamma_{\episilon_1, \epsilon_2} 及びその内部を含む
領域上で f_s(u) の一価正則になる分枝が選べるので,
Cauchy の積分定理が使えます. だから \epsilon に依りません.
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop205_283__06.jpg
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop205_283__07.jpg
> という具合で宜しいでしょうか?
はい.
> > 貴方が図で記述している路では閉曲線になっていません.
これは <http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph167.jpg>
についていったもので,
> 一応,赤線分と青線分は別々のシートにある(交わってない)ように
> 見えるように描いたのですが。
> これでも単純閉曲線になってませんでしょうか?
\gamma_{\epsilon_2} と \gamma{\epsilon_2} での向きを
修正した <http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg>
であれば宜しい.
> > s - 1 が整数, つまり, Im(s) = 0 で Re(s) - 1 が整数
> > でなければ, u^{s-1} は多価です.
>
> ではどうしてε_1→ε_2→γ_{ε_2}→ε_2→ε_1→γ_{-ε_1}は一価だと
> 仰ったのですか?
今考えている \Gamma_{\epsilon_1, \epsilon_2} という
閉曲線とその内部を含む領域上では一価正則になる分枝を
選ぶことが出来るからです.
> 円周上でもf_s(u)は常に多価なんですよね?
それはそうです.
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> なら閉じていますよね?
はい. そう修正する必要がありました.
> > u^{s-1} は原点で分岐しているのですが,
> > 実軸の正の部分という原点から出る半直線で
> > 複素数平面を切ったところでは一価正則になるからです.
>
> u^{s-1}は円周上では多価になるのでしたよね?
はい. しかし, 今考えている領域上では
一価正則になる分枝を選ぶことが出来ます.
C_{\epsilon} の上での線積分
\int_{C_\epsilon} u^{s-1}/(e^u - 1) du
を考えるときは, いつでも, C_\epsilon の最初の
実軸を正の無限大から \epsilon に移動するところでは
u^{Re(s)-1} e^{i Im(s) \log u}/(e^u - 1) という値を
取る分枝を選ぶ約束であることに注意しましょう.
> それとも"円周上でu^{s-1}が多価になる"とは
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph173.jpg
> つまり,arg(u)=0 or 2πでのみで多価になるという意味だったのでしょうか?
> それで正実軸を繋ぎ目として2葉のRiemann面を使えばu^{s-1}は
> 円周上ででも一価となるという解釈てら宜しいのでしょうか?
その解釈は間違っています.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735