小泉首相が靖国神社に参拝するということは、日本が国として
日韓両国、世界との間で行ってきたシンボリックなコミュニケー
ションを破綻させる効果があるのです。
 言辞と行動の不一致となるのです。

 この問題からすると戦争責任について賠償責任を念頭に置いて
語るのは筋違いだと思います。
 講和や友好条約締結の前提として日本は過去の戦争について
その責任を認め深く反省したわけです。
 この前提が国民の代表者である総理大臣によって覆されるのは
望ましくないことでしょう。
 小泉首相は参拝の意図を明確に述べていますが、政治的シンボ
リズムとしては矛盾にみちた行動になっています。
 中国や韓国はこのことに対して納得がいっていないわけですから
政治の道具になっているかどうか以前の問題です。
 中国が何に対して怒っているのか。靖国神社の歴史観ではなく
A級戦犯の合祀であるというのもこの問題を技術的にとらえすぎ
た意識の表れではないかと思います。

 中国が怒っているのは小泉首相の言動不一致であり、過去の
コミュニケーションまでも否定する効果を持っているからです。
 小泉首相に欠けているのは過去の外交の成果に対してどのよう
な態度で臨むのか、という問題についての判断力だと思われます。
 靖国神社参拝が不戦の誓いのシンボルになると考えるのは総理
の自由ですが、客観的にはとんちんかんなことになっているわけ
です。コミュニケーションは相手の視点をシミュレーションしつ
つ進めなければ成立は難しいのではないでしょうか。
 すでに失敗だとわかっている方法をかたくなに貫いても進展が
ないことは明らかです。

Horiuchi Satoru