工繊大の塚本です.

In article <iv4q5k$7n6$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> C\setminusZ^-でlim_{n→∞}n^s n!/Π_{k=0}^n (s+k)が正則になるのですね。

その表示ではさっぱりわからないけれども,
 e^{\gamma s} z \prod_{k=0}^\infty ((1 + s/k) e^{-s/k})
は全複素数平面で正則であることが分かる,
という話です.

> In article <110702173355.M0125798@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 岩波講座 現代数学への入門「複素関数入門」神保道夫著 を
> > 良くお読み下さい.
> 
> 拝見致しまして
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/prop199_93__01.jpg

 \lim_{n \to \infty} n^s n!/\prod_{k=0}^n (s+k) の式そのままで
 s = 0 を放り込んで議論することには意味がありません.

 Weierstrass の乗積表示に帰着して議論するしかありませんが,
最後の行への変形に計算間違いがあります.

  (1 + s/k) e^{-s/k} (= e^{-s/k} + (s/k) e^{-s/k})
   = 1 + ((1 + s/k) e^{-s/k} - 1)
  (= 1 + (-1 + e^{-s/k} + (s/k) e^{-s/k}))

は 1 + 1 - e^{-s/k} + (s/k) e^{-s/k} とは違います.

> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/prop199_93__02.jpg
> となったのですが
> 0<∃M,r∈R;for∀s∈{s∈C;|s|≦r},|(1+s)exp(-s)-1|≦M|s|^2からどうして
> for 0<∀R∈R,for∀s∈{s∈C;|s|≦R} and R/r≦∀k∈N,
> |1-exp(-s/k)+s/k exp(-s/k)|≦MR^2/k^2が言えるのでしょうか?

 r と R と実数全体の R とがごっちゃになっていますが,
任意の実数 r に対し, ある実数 M について,
 |s| \leq r であれば, |(1+s) e^{-s} - 1| \leq M |s|^2 ですから,
 |s| \leq r であれば, 任意の自然数 k について
 |s/k| \leq r であって, |(1 + s/k) e^{-s/k} - 1| \leq M |s/k|^2
 \leq M r^2/k^2 となります.

> > s = 0, -1, -2, \dots では (1/\Gamma(s)) が零点を
> > 持ちますので,
> 
> え?  "零点"とは1/\Gamma(s)=0の解の事ですよね。
> s=0,-1,-2,…の時,Γ(s)=∞ですよね。分母が∞になるからといって
> 1/Γ(0)=0,1/Γ(-1)=0,Γ(-2)=0と単純に言っていいのでしょうか?

一般に, 有理形関数 f(s) の m 位の極 s_0 の近傍に於いて
 Laurent 展開

  f(s)
   = a_{-m} (s - s_0)^{-m} + a_{-m+1} (s - s_0)^{-m+1} + \cdots
     + a_{-1} (s -s _0)^{-1} + a_0 + a_1 (s - s_0) + a_2 (s - s_0)^2 + \cdots
   = (s - s_0)^{-m} (a_{-m} + a_{-m+1} (s - s_0) + \cdots
                     + a_{-1} (s - s_0)^{m-1} + a_0 (s - s_0)^m
                     + a_1 (s - s_0)^{m+1} + a_2 (s - s_0)^{m+2} + \cdots
   = (s - s_0)^{-m} g(s)

を考えると, g(s) は g(0) = a_{-m} \neq 0 の正則関数であり, 
 1/f(s) = (s - s_0)^m (1/g(s)) ですから,
 1/g(s) が s = s_0 のまわりで正則であるので,
 1/f(s) は s = s_0 で m 位の零点を持つ正則関数になります.

もっとも今の場合話は逆で, Weierstrass の乗積表示
 e^{\gamma s} z \prod_{k=0}^\infty (1 + s/k) e^{-s/k}
が全複素数平面で正則な関数であることが先ず分かり,
それを W(s) とすると, W(s) は s = 0, -1, -2, \dots で
 1 位の零点を持つことが分かります.
 Re(s) > 0 であれば
 1/W(s) = \lim_{n \to \infty} n^s n!/\prod_{k=0}^n (s + k)
 = \int_0^\infty t^{s-1} e^{-t} dt となるので,
 W(s) を, Re(s) > 0 で \int_0^\infty t^{s-1} e^{-t} dt により
表される関数の逆数の, 全複素数平面への解析接続とすることができます.
そこで, Re(s) > 0 で \int_0^\infty t^{s-1} e^{-t} dt により
表される関数の全複素数平面への解析接続 \Gamma(s) を
 1/W(s) という有理形関数であるとして与えることができ,
 W(s) = e^{\gamma s} z \prod_{k=0}^\infty (1 + s/k) e^{-s/k}
が s = 0, -1, -2, \dots で 1 位の零点を持つので,
 \Gamma(s) は s = 0, -1, -2, で 1 位の極を持つことが
示されることになります.

# \Gamma(s) から見れば, W(s) = 1/\Gamma(s) ということになります.

因みに, \Gamma(s) の表示の仕方は Weierstrass の乗積表示には
限りません. \Gamma(s) が s = 0, -1, -2, \dots で 1 位の極を
持つことには別の分かりやすい説明もあります.
 
 \chi: (Z/nZ)^\times \to C^\times の像が { 1 } でないなら,

> > L(s, \chi) は正則になります.

は, 95 page の命題 3.15 (3) の最後に書いてあるのですから,

> えっ。

と驚くには及びませんし,

> どのようにして L(s,χ)=
> Σ_{a=1}^{N-1}χ(a) 1/(N^s lim_{n→∞}n^s n!/Π_{k=0}^n (s+k))
> [Σ_{n=0}^∞(-1)^nB_n(a/N)/(n!(s+n-1))
>  +∫_1^∞ exp(-au/N) u^{s-1}/(1-exp(-u))du]が
> 全複素平面で正則である事が言えるのでしょうか?

はちゃんと書いてあることですが,
任意の \chi に対して L(s, \chi) が高々 s = 1 のみを極とする
全複素数平面での有理形関数になることと,
 \chi: (Z/nZ)^\times \to C^\times の像が { 1 } でないなら,
 \sum_{n=1}^\infty \chi(n)/n^s は Re(s) > 0 で定義された
正則関数を表すことは,
御理解いただけているのでしょうか.

> 今,定義域はC\setminus{1}であって{s∈C;Re(s)>0}ではないので
> lim_{n→∞}n^s n!/Π_{k=0}^n (s+k)の表記を使わねばならないのではないでしょうか?

逆です. Re(s) > 0 でないと
 \lim_{n \to \infty} n^s n!/\prod_{k=0}^n (s + k) の表示を使う
意味がありません. それを Weiertrass の乗積表示に書き換えて,
初めて全複素数平面での意味が出てきます.
 
> > *  \chi(Z) は常に 0 と 1 とを含んでいますから,
> >   L(s, \chi) が s = 1 でも正則になる為の条件を
> >   \chi(Z) \neq { 1 } とするのでは意味がありません.
> 
> すると正則になる為の条件はどのようになるのでしょうか? 

 \chi: (Z/nZ)^\times \to C^\times の像が { 1 } でないなら,
とするか, \chi: Z \to C の像が { 0, 1 } でないなら,
とするか, のどちらでも良いでしょう.
-- 
塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp