工繊大の塚本です.

In article <343798ff-3070-4e78-8675-9d4e8b8d676c@j32g2000yqc.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <110119175306.M0114782@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > (i) の M\"obius function M\"ob(n) に付随する
> > Dirichlet 級数 \sum_{n=1}^\infty M\"ob(n)/n^s が
> > \prod_{p: prime}(1 - 1/p^s) となることは簡単です.
> > 後者を展開して出てくるのは, (-1)^k/(p_1 p_2 \cdots p_k)^s
> > の形(但し, p_i らは相異なる素数)のものだけで,
> 
> えーとこれは
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/formula1913.JPG
> という具合になるという事でしょうか?

等式の並ぶ順番が変ですね.

> ??の箇所はどのように理由付けできますでしょうか?

 (\zeta(s))^{-1} = \prod_{p: prime} (1 - 1/p^s)

は良いですね. prime p を小さい方から番号付けておけば,

 = \proc_{i=1}^\infty (1 - 1/(p_i)^s)

も当たり前.

 = (1 - 1/(p_1)^s)(1 - 1/(p_2)^s)(1 - 1/(p_3)^s) \cdots

の展開が分からないのは困ります.
各項から 1 ばかりを選んで掛けると 1,
どれか一つの項から 1 でない方を選んで掛けると (-1)/(p_i)^s
どれか二つの項から 1 でない方を選んで掛けると (-1)^2/(p_i p_j)^s (i < j)
等々となり,
 1 でない方を選ぶ個数が k 個になれば,
 i_1 < i_2 < \cdots < i_k なる自然数について 
 (-1)^k/(p_{i_1} p_{i_2} \cdots p_{i_k})^s 
の項が出てきて, それら全てを合わせたものが
元の式の展開になるわけです,

 = 1 - 1/(p_1)^s - 1/(p_2)^s - 1/(p_3)^s - \cdots
   + 1/(p_1 p_2)^s + 1/(p_1 p_3)^s + 1/(p_2 p_3)^s + 1/(p_1 p_4)^s + \cdots
   - \cdots
   + (-1)^k/(p_1 p_2 \cdots p_k)^s + \cdots
   + (-1)^k/(p_{i_1} p_{i_2} \cdots p_{i_k})^s + \cdots

となっていきますが,
ここで各項の分母は全て異なる自然数 n についての n^s であり,
分子はその n の M\"ob(n) になっているわけです.
では, \sum_{n=1}^\infty M\"ob(n)/n^s の全ての項が
出て来るか, と考えると, 本質的には出て来ています.
 
> > n = 1 を除いては,
> > ちょうど n = p_1 p_2 \cdots p_k  (p_i らは相異なる素数)
> > のときだけ M\"ob(n) = (-1)^k で,
> 
> これはM\"ob(n)の定義からそうですね。
> 
> > それ以外のときは M\"ob(n) = 0 なので Dirichlet 級数の和に
> > 現れないことに対応しているわけです.
> 
> Dirichlet級数の和とは
> http://beauty.geocities.jp/yuka26076/study/Number_Theory/dirichlet_series1918.JPG
> 即ち,Σ_{n=1}^∞ a_n/n^sの事ですよね。
> すいません。"現れないことに対応している"とはどういうことでしょうか?

 n がどれかの素数 p を 2 以上のベキで含めば,
 M\"ob(n)/n^s = 0/n^s = 0 ですから,
和からは省いて, 現れないとして良い.
それと (1 - 1/(p_1)^s)(1 - 1/(p_2)^s)(1 - 1/(p_3)^s) \cdots
の展開で出て来る項の分母 n^s の n は
相異なる素数の積の形のものだけであることが
対応しているわけです.
 
> > # 普通のゼータ級数の Euler 積表示では,
> > # n = (p_1)^{e_1} (p_2)^{e_2} \cdots (p_k)^{e_k}
> > # のときも和に入れないといけないので,
> > # \prod_{p: prime}(1 + 1/p^s + 1/(p^2)^s + \cdots + 1/(p^e)^s + \cdots )
> > # という無限和の無限積を展開した,
> > # のに比べれば, ずっとやさしい.
> 
> そうなんですか。ちょっと意味がよくわかりませんが。すいません。

何故 Euler 積表示が Dirichlet 級数 \sum_{n=1}^\infty 1/n^s
と一致するのか, をちゃんと理解しておく必要があります.

> Σ_{p∈P}Σ_{r=1}^∞(ln p)(p^s)^{r-1}
> =Σ_{p∈P}Σ_{r=1}^∞(VM(p^r)(p^s)^{i-1}
> から
> =Σ_{n=1}^∞VM(n)/n^s
> がどうして出てくるのでしょうか?

細かいところながら, 間違っていますね.

 \sum_{p: prime} \sum_{r=1}^\infty (\log p)/(p^r)^s
 = \sum_{p: prime} \sum_{r=1}^\infty VM(p^r)/(p^r)^s

です. n = p^r でなければ, VM(n) = 0 ですから,
 n = p^r でないような n については
 VM(n)/n^s = 0/n^s = 0 となり,
 \sum_{n=1}^\infty VM(n)/n^s
 = \sum_{p: prime} \sum_{r=1}^\infty VM(p^r)/(p^r)^s
です.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp