工繊大の塚本です.

In article <333b5ebf-4b25-4c46-a295-0ee5c92541be@l6g2000yqb.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> A(≠φ)を全順序集合とする場合,Aから領域C(集合の集合?)への写像fが取れる
> (∵選択公理)。
> この時,A∋∀α→f(α):=E_α∈Cなるαによって決まるCの要素E_αが存在する(∵選択公理)。
> この時,像f(A)を{E_α}_{α∈A}と書き,
> 更に∀α∈Aに対し,e_α∈E_αなるe_αが取れる写像gが取れる(∵選択公理)。
> この時,g(A)を{e_α}_{α∈A}(={e_α;α∈A})全体からなる集合
> {{e_α}_{α∈A};e_α∈E_α}(=g(A);gはAからE_αへの選択写像})を
> Π_{α∈A}E_αと書く。
> という定義になろうかと思います。

貴方は「直積集合の定義」と「その定義による直積集合が
空集合ではないこと」とを混同しています.

今, 集合論的に「直積集合」が集合として定義されることを
示すのが第一の課題ですから, 何かの「全体からなる集合」
というだけでは不十分です. そのような「全体」が確かに
集合となることが確認できるような定義を与える必要があります.

選択公理は, そのように定義された「直積集合」が空集合
ではないことを宣言するもので, それは又別のお話です.

ということで, 貴方の「定義」では, 夾雑物を取り除いて
「直積集合」がどう定義されているかを見ると, 不十分である
としか評価できません.

> F⊂Map(A,∪_{α∈A}E_α)なる部分集合Fが直積集合という訳ですか。
> えーと,このFはどのような部分集合かというと,
> ∀α∈Aに対してIm(F)∩E_αが単集合になるようなものですね。

違います. 先に,

> In article <100809223950.M0108891@ras1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > というところで, Π_{α ∈ A} E_α = ∩_{α ∈ A} (π_α)^{-1}(E_α)
> > という式が意味を持つことになります.

と書いたように, F = Π_{α ∈ A} E_α = ∩_{α ∈ A} (π_α)^{-1}(E_α)
が F の定義です. Im(F) ∩ E_α が単集合になる, で何を
主張したいのかも分かりません.
 
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/topology/direct_product_set0.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/topology/direct_product_set1.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/topology/direct_product_set2.jpg
> を紐解いてみました。

この記述は naive な集合論に基づくものですから,
今の問題の参考にはなりません.

# 選出公理の意義については一応の説明がありますね.

> つまり,Λを任意の集合とし,((A_λ)_{λ∈Λ}:=)A∈Map(Λ,X)とする(但し,Xは任意の集合)。

 X は任意の集合ではありません.
集合族 (A_λ)_{λ∈Λ} について考える場合には, 少なくとも,
全ての λ について A_λ ⊂ X という条件が置かれています.
普通は X = ∪_{λ∈Λ} A_λ と取っておくことでしょう.

# 貴方の式で「 A 」が挟まっているのは, A_λ = A となる
# 特別な場合のことに言及しようとしたのか, 集合族を
# 表そうとしたのか, さっぱり分からないので,
# 無視しておきましょう.

> この時,{a∈Map(Λ,∪_{λ∈Λ}A_λ);∀λ∈Λ,a(λ)∈A(λ)}:=Bを

こう書けば一応正解です.

> A∈Map(Λ,X)の直積集合といい,Π_{λ∈Λ}A_λと表す。

「 A∈Map(Λ,X)の」直積集合というのは意味不明です.
「集合族 (A_λ)_{λ∈Λ} の直積集合」となっていれば,
正解です.

> 次にλ'∈Λに対して{a(λ')∈X;a∈B}を∪_{λ∈Λ}A_λからA_λ'への射影と言い,
> proj_λ'で表す。

 a(λ') は唯一つ定まる元ですから, { a(λ') ∈ X; a ∈ B} という
集合にすることはありません. a(λ') を「 a ∈ Π_{λ∈Λ} A_λ の」
 A_λ' への射影と呼び, 更に,
直積集合 Π_{λ∈Λ} A_λ の各元 a に対して A_λ' への射影 a(λ') を
対応させる写像を proj_λ': Π_{λ∈Λ} A_λ → A_λ' で表す
わけです. (この写像も射影と呼ばれます.)

> つまり,(a_c',a_c,a_c'',a_c''',…)が果たして集合になるかという事ですね。

それは勿論問題なのですが, ここで言っているのはそうではありません.

> もし有限組(a_c',a_c,a_c'',a_c''',…,a_c^(n))なら
> 対集合の公理と和集合の公理を繰り返し使えば
> (a_c',a_c,a_c'',a_c''',…,a_c^(n))が集合になる事は言えますよね。

対集合の公理を繰り返し使えば,
 (a_c, a_c', a_c'', ... , a_c^{(n)})
 = (…((a_c, a_c'), a_c'')…, a_c^{(n)}) という
一つの存在が集合であることは言えますが,
そのことから,
それらを「全て集めた」集合 A_1×A_2×A_3×…×A_n
 = (…((A_1×A_2)×A_3)…×A_n) が集合になることが
導かれるわけではありません.

で, 和集合の公理をどう使うのですか.

> でも無限組(a_c',a_c,a_c'',a_c''',…)が集合になる事は
> 選択公理を使わないと集合である事が言えないのですね。

そうではなくて, 無限組が一つは存在することを保証するのが
選択公理です.

> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/topology/transfinite_induction0.jpg
> 
> は完全に間違いなのでしょうか?

はい, 完全に間違いです.

> 直積集合の定義は選択公理を使って定義してしまえば
> 超限帰納法など持ち出す必要は無いのですね。

ですから, 直積集合の定義には選択公理は必要ありません.
それが一般に空集合でないことを示すのに
選択公理が使われます.
ましてや超限帰納法を持ち出す必要はありませんが,
ともあれ, 貴方の超限帰納法の理解は間違っています.

> これはつまり(a_c,a_c',…,a_c^(n))が集合になる事と
> (a_c,a_c',…)とが集合になる事とは意味が異なるという事でしょうか?

これについては上で説明しました.

> > 超限帰納法では, 「極限基数」のところでどうなるか,

これは失礼しました. 「極限順序数」の誤りです.

> κが極限基数とは連続体仮説が仮定されてた時に
> ∀i∈N∪{0}に対して∃j∈N∪{0};アレフ_i<アレフ_j<κなる基数の事ですね
> (但し,アレフ_0:=#N,アレフ_1:=#R,アレフ_2:=#(2^R),…とする)。
> でもこのような基数が本当に存在するのでしょうか?

この記述は「極限基数」の説明としてどうかと思いますが,
まあ, 忘れて下さい.

> すいません。どのように注意すればいいのでしょうか?

「順序数 α で P(α) が成立すれば,
順序数 α+1 でも P(α+1) が成立する」を示して確かめられるのは,
「後続順序数」γ = γ' + 1 のところでの超限帰納法の仮定
「任意の順序数 β < γ = γ' + 1 のところで P(β) が成立すれば,
(特に γ' < γ' + 1 のところで P(γ') が成立しているので,)
 γ = γ' + 1 で P(γ) が成立している」が成立していることだけです.
「極限順序数」γ のところで超限帰納法の仮定が
成立していることを示すには,
( γ = γ' + 1 となる γ' は存在しませんから,)
別の議論が必要です.

> 写像全体では写像全体の部分集合ですか。
> ここの部分集合のところがいまいち分からないのですが。
> 写像全体ではダメなのですよね。

ですから, Map(Λ, ∪_{λ ∈ Λ} A_λ) 全体ではなく,
 { a ∈ Map(Λ, ∪_{λ ∈ Λ} A_λ) ; ∀ λ ∈ Λ, a(λ) ∈ A_λ } という
その部分集合を取ることになります.

> 直積集合はち射影を使っても定義されうるのですね。

上のように書く代わりに,
部分集合 F ⊂ Map(Λ, ∪_{λ ∈ Λ} A_λ) として
 F = ∩_{α ∈ A} (π_α)^{-1}(E_α) を取って,
 F で Π_{α ∈ A} E_α を定義しても同じことです.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp