工繊大の塚本です.

In article <16b9e18c-b5b0-430e-aaa2-b6173095cdf0@m18g2000vbi.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> 定義は
> 『線形空間V(≠{0})をS(+)S^⊥(但し,S≠{0}且つS^⊥≠{0})と直和分解した時に

ま, S = {0} や S^⊥ = {0} の場合も含めて良いと思います.

> 任意のv∈Vは,
> v=s(+)s' (但し,s∈S,s'∈S^⊥)と一意的に表される。
> この時,Ev:=sと定義し,このEをS^⊥に沿ったSへの正射影という』
> になるかと思います。

その定義では orthogonal projection E の
線形変換としての特徴付けは直ぐには分かりませんが,
まあ良いでしょう.

> In article <090629122352.M0329410@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> >  V は実ベクトル空間で, α_i は全て実数です.
> 
> Vは複素ベクトル空間,α_jは複素数
> や
> VはFベクトル空間,α_jはFの元(但し,Fは体)では考えられないのでしょうか?

体 F 上のベクトル空間 V と,
その上の非退化対称双線形形式 ( , ): V×V → F が
与えられたとしても, V の部分ベクトル空間 S の
直交 S^⊥ は S の補空間になるとは限りませんから,
直交射影はうまく定義できません. 色々条件をつけて
考えることになります.

 V を複素ベクトル空間にして, エルミート内積を考えれば,
 self-adjoint operator とか orthogonal projection とか
が考えられて, 同様の話が出来ますが,
 self-adjoint operator については α_i はやはり実数です.
 self-adjoint operator の代わりに normal operator を
考えれば, α_i が複素数の場合も含むことになります.

ま, 実ベクトル空間 V に内積(正定値対称双線形形式)が
与えられていて, α_i は実数であるとしましょう.
 
> E_j^2=E_jかと思いますがこれをどのように使えばいいのか分かりませんでした。

 E^2 = E とは E が射影(projection)であることです.
「直交」射影であるにはそれでは足りません.

 V の元 v, w に対し,
 Ev は Im E の元, (I-E)w は Ker E の元, ですから,
 E が orthogonal projection (直交射影)であれば,
 (Ev, (I-E)w) = (v, E^*(I-E)w) = ((I-E^*)Ev, w) = 0 です.
 E^* - E^*E = 0, E - E^*E = 0 より, E^* = E が分かります.
結局, E^* = E, E^2 = E となることが,
 E が orhtogonal projection である為の必要十分条件です.
 
> とりあえず
> 
> E_1,E_2,…,E_rの像となる線形部分空間をS_1,S_2,…,S_rとすると,
> E_1,E_2,…,E_rは互いに直交する射影なので(∵仮定),
> これは∀i≠jなら<E_ix,E_jx>=0を意味する。つまり,S_i∩S_j={0}で

「つまり」で結ぶなら, 「 ∀x, y ∈ V について,
 i ≠ j なら (E_i x, E_j y) = 0 」としておかないと.

> これはV=S_1(+)S_2(+)…(+)S_rと直和分解される事を意味する。
> よって,∀v∈Vに対してv=c_1s_1+c_2s_2+…+c_rs_rと一意的に書ける。

 c_1s_1 といった書き方が間違っています.
各 i について, s_i = E_i v とすれば, s_i ∈ S_i であり,
 v = s_1 + s_2 + … + s_r.

> 今,Av=Σ_{j=1}^r α_jE_jv=Σ_{j=1}^r α_jc_js_j…①で

 Av = (Σ_{j=1}^r α_j E_j) v = Σ_{j=1}^r α_j s_j.

> 一方,Av=Ac_1s_1+Ac_2s_2+…+Ac_rs_r…②と書ける(∵Aは線形写像)。

 Av = Σ_{j=1}^r A s_j.

> よって①,②から
> (A-α_1I)(c_1s_1)+(A-α_2I)(c_2s_2)+…+(A-α_rI)(c_rs_r)=O
> (但し,Iは単位行列)と書け,

 Σ_{j=1}^r (A - α_j I) s_j = 0.

> vは任意だったからこの式は恒等式になっていて
> A-α_1I=A-α_2I=…=A-α_rI=Oでなければならない。

どうしてですか.

もし A - α_1 I = 0 なら, A = α_1 I で,
 A は単にスカラー α_1 倍するという線形写像になって
しまいます.  又, α_1 ≠ α_2 でしたから,
 A = α_1 I = α_2 I は成立しないので, 常に r = 1 になる.

どうも世の中にはそうならない self-adjoint operator が
沢山あるようです.

> 従って,A=α_1I,A=α_2I,…,A=α_rIと言えるので,

言えないでしょう. 言えたとしたら,

> 或るx_1,x_2,…,x_rに対して,Ax_1=α_1x_1,Ax_2=α_2x_2,…,Ax_r=α_rx_rと書ける。

どんな x についても A x = α_1 x とかが成立しますが.

> これはα_1,α_2,…,α_rがAの固有値である事を意味する。

 A = α I なら, α は A の(唯一つの)固有値になりますが,

> しかも仮定より,α_1,α_2,…,α_rは相異なる。

相異なる固有値は持たないことになりますね.

> としてみたのですが,,

ですから, 間違った議論です.

> E_j^2=E_jという条件は使いませんでしたが,,
> どのように証明すればいいのでしょうか?

先ず, E_j らが互いに直交する orthogonal projections で
あることから, E_i E_j = 0  (i≠j) を導きましょう.

 A = Σ_{j=1}^r α_j E_j,
 I = Σ_{j=1}^r E_j,
 (E_j)^2 = E_j, E_i E_j = 0  (i≠j), (E_j)^* = E_j,
から, s_j ∈ S_j = Im E_j について,
 A s_j = α_j s_j となることを示し, 更に,
 A v = α v, となる v ≠ 0 があれば,
どれかの i について α = α_i となり,
 v ∈ S_i となることを示せばお仕舞です.

なお, (E_j)^* = E_j は, A = Σ_{j=1}^r α_j E_j が
 self-adjoint になることを保証しています.

因みに, 内積がないベクトル空間 V が
線形変換 A の
互いに異なる固有値, α_1, α_2, ... , α_r に属する
固有空間, S_1, S_2, ... , S_r の直和になっているとき,
 V から S_i への, S_i 以外の S_j の直和に沿っての,
射影を E_i とすれば,
 A = Σ_{j=1}^r α_j E_j,
 I = Σ_{j=1}^r E_j,
 (E_j)^2 = E_j, E_i E_j = 0  (i≠j),
ですが, 逆に(E_j ≠ 0 について)これが成り立てば,
 A の固有空間分解が与えられることが言えます.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp