工繊大の塚本です.

In article <ceff785c-ac2e-40a5-8ecc-f415998f8613@y23g2000pre.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> はい。他にもルベーグ可測の定義ってあるのでしょうか?

 Lebesgue の元の定義は, Lebesgue 外測度から Lebesgue
内測度を定義して, その二つが一致する集合を可測集合と
したのでした.

> In article <090127210645.M0122865@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> >  R^d を可算個の有界な Borel 集合 {B_n}の交わらない和に分けます.
> 
> {B_n}⊂σ(T):={R^d, φ}∪{t^c⊂R^d;t∈T}∪{∪[i=1.. ∞]t_i⊂R^d;t_i∈T}∪T
>  (但し, σ(T) はTで生成されるσ集合体, B_1,B_2,… は互いに素) ですね。

例えば, 全ての整数の組 (n_1, n_2, ... , n_d) について
 [n_1, n_1 + 1)×[n_2, n_2 + 1)×…×[n_d, n_d + 1) の
全体を考えると, 互いに交わらない可算個の有界な Borel 集合で,
それらを B_n と並べると, R^d = ∪_{n=1}^∞ B_n となります.

> >  E が Lebesgue 外測度について Caratheodory可測であれば
> >  E ∩ B_n も Lebesgue 外測度について Caratheodory可測で
> 
> ①ならば∀A⊂R^d,m^*(A)= m*(A∩(E∩B_n))+m*(A∩(E∩B_n)^c)…②
> であることは後述にてCaratheodory "可測集合全体の集合はσ集合体をなす"
> と仰ってますのでB_nもCaratheodory可測なら
> E∩B_nはCaratheodory可測と言えますね。B_nがCaratheodory可測である事は
> どうして言えますでしょうか?

後で述べたように, Borel 集合は Lebesgue 外測度について
 Caratheodory 可測です.

> > あり, m^*(E ∩ B_n) ≦ m^*(B_n) <∞より上の議論から
> > Lebesgue可測になります.
> 
> ∀n∈N,m^*(E∩B_n)<∞で②が成り立つのでm^*(E)<∞の場合と
> 同様にしてE∩B_nはルベーグ可測が言えるのですね。

はい.

> > 任意の ε > 0 について, E ∩ B_n ⊂ U_n となる開集合 U_nで
> > m^*(U_n\B_n) < ε/2^n, m^*(U_n\(E ∩ B_n))<ε/2^n となるものを取れば,
> >U = ∪_{n=1}^∞ U_n について,
> 
> B_n=E ∩ B_n: ルベーグ可測なので確かにこのようなU_nが取れますね。
> 
> >   U\E = ∪_{n=1}^∞ (U_n\E)
> 
> OKです。
> 
> > = ∪_{n=1}^∞ ((U_n\E) ∩ B_n)
> >   ∪ ∪_{n=1}^∞ ((U_n\E)\B_n)

一般に A = (A ∩ B) ∪ (A\B) ですね.
 
> > ⊂ ∪_{n=1}^∞ (U_n\(E ∩ B_n)) ∪_{n=1}^∞(U_n\B_n)
> > となるから m^*(U\E) < 2ε となり, E は Legesgue 可測です.
> 
> 納得です。

宜しいでしょうか.
 
> > 普通は G_δ 集合 H と, 外測度 0 の集合 H\E が
> >  Lebesgue 外測度について Caratheodory可測であることと,
> 
> つまり “Hは G_δ 集合で m^*(H\E)=0 
>          ⇒∀A⊂R^d,m^*(A)= m*(A∩(H\E))+m*(A∩(H\E)^c)“
> という命題があるのですね。

一般に, m^*(K) = 0 であれば, Caratheodory 可測, つまり
 ∀A ⊂ R^d, m^*(A)= m^*(A ∩ K) + m^*(A ∩ K^c)
が成立します.

> >  Lebesgue 外測度について Caratheodory可測である集合が
> >  σ加法族を為すことから,
> 
> Σ:={E⊂R^d; ∀A⊂R^d,m^*(A)= m*(A∩E)+m*(A∩E^c)} とすると
> R^d∈Σで  E∈Σ⇒E^c∈Σ はすぐに言えますよね。
> E_1,E_2,…∈Σ⇒∪[i=1.. ∞]E_i∈Σも言えるのですね。

はい.

> > E = H\(H\E) も Lebesgue 外測度について Caratheodory可測
> > であることを導くのだと思います.
> 
> HがCaratheodory可測であること(∀A⊂R^d,m^*(A)=m*(A∩H)+m*(A∩H^c))
> はどうすれば言えますでしょうか?

 H は Borel 集合ですから, Lebesgue 外測度について
 Caratheodory 可測です.
 
この辺りは Lebesgue 測度を Caratheodory の構成で
定義している教科書を読めば載っています.

> > 直接, 任意の集合 A について m^*(A) =m^*(A∩E)+m^*(A∩E^c)
> > を示すことも可能である筈ですが, 簡単な議論をちょっと思いつきません.
> 
> 略解を漸く見つけました。
> (十分性)
> ∀A⊂R^d, ∃GはG_δ集合;A⊂G,m^*(A)= m^*(G) (∵命題(?))
> なので

この部分を,

> >  Hint は,
> >  A に対して, 自然数 n について,
> >  A ⊂ U_n の開集合 U_n で
> >  m^*(A) ≦ m^*(U_n) < m^*(A) + 1/n となる物を選んで,
> >  G = ∩_{n=1}^∞ U_nをとれば,
> >  G は G_δ 集合で, A ⊂ G であり,
> >  m^*(G) ≦ m^*(U_n) < m^*(A) + 1/n より,
> >  m^*(G) ≦ m^*(A) であり,
> > 一方,m^*(A) ≦ m^*(G) ですから,
> > m^*(G) = m^*(A) となることをいっています.

のように示しておけば良いわけです.

> m^*(A)= m^*(G)=m^*(G∩(E∪E^c))=m^*((G∩E)∪(G∩E^c))=m((G∩E)∪(G∩E^c))
> (∵G,Eはルベーグ可測なので(G∩E)∪(G∩E^c) もルベーグ可測)

なるほど, ルベーグ可測集合の方が Borel 集合族を含む
 σ加法族になることを使って良いわけですね.

> = m(G∩E)+m(G∩E^c) (∵G∩EとG∩E^cとは互いに素なので可算加法性)

ルベーグ測度の可算加法性も既に分かっていると.

> = m^*(G∩E)+m^*(G∩E^c) ≧ m^*(A∩E)+m^*(A∩E^c).
> よって EはCaratheodory可測.

了解しました.

> (必要性)
> Caratheodory可測集合Eに対して,∃G:G_δ集合;E⊂G,m^*(E)=m^*(G) …③(∵命題(?))
> Caratheodory可測の定義よりm^*(G)=m^*(G∩E)+m^*(G∩E^c)と書け,
> G∩E=Eよりこの式はm^*(G)=m^*(E)+m^*(G∩E^c)と書け,③より
> m^*(G∩E^c)=0 即ち,m^*(G\E)=0. よってEはルベーグ可測.
> 
> となっているのですが最後でG∈T (但しTはR^dの通常の位相)が言えないと
> Eはルベーグ可測とは言えませんよね。

「定義」は inf { m^*(U\E) ; E ⊂ U, U ∈ T } = 0 なら
 E は Lebesgue 可測でした.

> Gは開集合の共通部分で必ずしも開集合にはなりませんよね。

その通りです.

> うーん, 最後でどうしてルベーグ可測と言えるのでしょうか?

 G = ∩_{k=1}^∞ O_k, O_k ∈ T とします.
 U_n = ∩_{k=1}^n O_k ∈ T を考えると,
 G ⊂ … ⊂ U_{n+1} ⊂ U_n ⊂ … ⊂ U_2 ⊂ U_1 です.
 U_n\G は Borel 集合ですから Lebesgue 可測であり,
 ∩_{n=1}^∞ (U_n\G) = φ ですから, Lebesgue 測度の
可算加法性から lim_{n→∞} m(U_n\G) = 0 です.

  m^*(U_n\E)
  = m^*((U_n\G)∪(G\E))
  ≦ m^*(U_n\G) + m^*(G\E)
     = m(U_n\G)

ですから, inf { m^*(U\E) ; E ⊂ U, U ∈ T } = 0 です.

但し, この証明はやはり, m^*(G∩E^c) = 0 を導くところで
 m^*(G) = m^*(E) < ∞ を使っていますから, m^*(E) = ∞
のときには, <090127210645.M0122865@cs1.kit.ac.jp>
のようにしないといけません.

 m^*(E) < ∞ のときの証明は,
 <0a41dd59-f3d3-46a3-b6a2-17a7f6d79303@r36g2000prf.googlegroups.com>
の方が直接的で分かり易いですね.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp