Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その11)です。
# 年度末故(…とは関係無いけど)、妄想活動が停滞気味です。
# …で、あと暫くは停滞気味が続いてしまうかも……^^;;;;
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その10)は<newscache$sfa7uh$klk$1@news01a.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その11)
●水無月ギャラクシーワールド・レストラン『銀河亭』
昼食が出てからは、まろんはツグミの方を振り返ることは無く、その方向を気
にする様子もありませんでした。
「(無理してるわね)」
そう思い、まろんには聞こえない位小さく溜息をついたのは都。
料理を平らげ、出て来たあまり美味しいとは言えないコーヒーを飲み干すと、
息つく暇もなくまろんは、都の手を引くようにしてレジへと向かって行きました。
その時ももちろん、まろんはツグミの方を見向きもしなかったのです。
そのようなまろんの行動は逆に、都にまろんがツグミのことを気にしているこ
とをしっかりと印象づけました。
「まろん」
「へ!?」
都はレジの前に立ったまろんの手を取り、そして腕を回しました。
「ちょ、ちょっと都」
「なぁに、まろん」
「その…」
「今日、あたし達は何をしに来てるんだっけ?」
「え?」
「あたしとまろんは、今日ここで、何をしているの?」
まろんの目を真っ直ぐ見て、都は問い詰めました。
「…ト」
「聞こえない」
「…ート」
「え!?」
わざとらしく、耳に手を添えて都は大きな声で聞きました。
店内はざわついていて、それ位の声を出した程度で聞き咎める人はいませんで
した。
「デート!」
「はい、正解」
そう言うと、都はまろんの腕に自分の腕を回します。
まろんが店内の様子を振り返ったのが丸分かりでしたが、この際それは無視し
ます。
まろんが気にしていたのは、この店内で目の前の店員を別にして、今の会話を
聴き取る可能性のある唯一の人物。
都の予想通り、まろんは直ぐに都の方に顔を戻しました。
「支払い。あたしがするから。まろんは先に外に出てて」
「でも」
「そういう約束でしょ」
「…うん」
まろんが肯くと、都はその背中を押して店外へと押しやります。
まろんが店の外に出たのを見届け、支払いのため財布を出しながら都は思いま
す。
「(らしくないわね。あたし…)」
●水無月ギャラクシーワールド・入場ゲート前
「ここが遊園地って奴か」
「人が多いわね」
「全くです」
入場ゲートの前に、褐色の肌をした二人の少女と一人の中年男が立っていまし
た。
招待客の来訪は、この時間は一時的に少なくなっており、その数少ない招待客
達はこの珍しい外見の三人組を指さしこそしませんでしたが、注目していました。
「む…」
その視線に真っ先に気づいたトールン。
彼の行動原則の第一は、人間達に目立ってはならないと言うもの。
それ故、直ちにこの場所を離れるようにアンとそのおまけに忠告しようとした
のですが、人間達の視線が別の方向に急に向けられました。
「あら。レイさん達だわ」
「畜生。俺達より目立ってやがる」
そう舌打ちしたのはエリス。無理もありません。
背筋を伸ばし、長いブロンドの髪と黒い髪をなびかせ歩く美貌の女性。
それだけで人間の男達の視線を釘付けにするには十分でしたが、その二人が仲
睦まじく腕を組み金髪の方が黒髪の方に寄り添う形で歩いていたので、ゲート前
にいた人間の注目を一身に集めていたのです。
「馬鹿共が…。一言、言ってやらねば」
そう呟き、レイとミナの方に歩いて行こうとしたトールン。
その前に、普段の様子からは信じられない程の敏捷さで、アンが前に立ちはだ
かりました。
「行っちゃ駄目だよ」
「姫」
「ここでトールンが出て行ったら、私達まで目立っちゃう」
「むぅ…」
アンの言う事にも一理あったので、トールンは大人しく引き下がりました。
もっとも、アンが止めた理由は別にありましたが。
「さぁ、私達も行きましょう」
「おう」
そう言うと、アンとエリスは腕を組んで遊園地の中に入って行きました。
その様子を見て眉をひそめたトールン。
しかし、彼は結局何も言いませんでした。
●海の聖母マリア教会
「警部、警部」
教会を視界に入れることの出来る場所に停めてあった車。
その扉を鍵でも閉まっていたのか、春田は叩きました。
程なく内側から鍵が開けられ、春田はその中に乗り込みます。
「警部。弁当、貰ってきました」
「おう、済まないな」
寝ぼけ眼で氷室は言うと春田が出した弁当を受け取りました。
「いやぁ、これ貰ってくるの苦労しましたよ」
コンビニで売られている弁当の方がまだマシと思えるそれを見て、一瞬顔をし
かめ、箸袋に書かれた職員食堂の名称を見て肯いていた氷室は、「ん?」という
表情を見せました。
「実はついさっき、事件が起こって弁当の在処をなかなか教えて貰えなくて」
「事件?」
「車が事故を起こして爆発したそうで。幸い、死者は出なかったらしいですが」
「さっきから聞こえてるサイレンはそれでか」
「何だ。聞こえてたんじゃ無いですか」
「聞こえてたさ。だが、ここを離れる訳にはいかんだろう」
「それはそうですが」
「テロとかそう言うのでは無いんだな?」
「それが、その…」
「何だ?」
「事故を起こした車には、不自然な穴が空いていまして」
「穴? タイヤか?」
「車輪毎やられたそうです。それと、馬鹿でかい銃を持って駆ける男の姿も目撃
されてます」
「つまり、何者かがその車を狙撃したということか?」
寝ぼけ眼だった氷室の眼は既に敏腕警部に相応しいそれに変化していました。
「はぁ。それで湾岸署は非常線を張ると聞きました」
「待てよ。すると……」
「はい。ジャンヌ対策に動員する警官の数を減らすと通告がありました」
「何だと!」
そう叫ぶと、氷室は弁当を恐ろしい勢いで食べ、車の外へと出て行くのでした。
●水無月ギャラクシーワールド
都達がレストランを出た時にも、ツグミは表情を変えませんでした。
ただ一瞬、彼女が頬の筋肉を少しだけ動かしましたが、どうして彼女がそうし
たのか、弥白には判りません。
最近は使っていない、諸々の機材を使えば恐らくは判ったのかもしれませんが。
レストランを出た後は、いよいよお待ちかね? の絶叫マシンが並ぶエリア。
どれから回ろうかと流石の弥白も目移りしてしまいます。
「どれから行こうかしら?」
そう言い、ツグミの方を振り向いた弥白。
だが、ツグミからの返事はありませんでした。
「ツグミさん?」
今日は敢えて彼女のことを名前で呼ぶようにしていた弥白の呼びかけにも、ツ
グミの返事はありませんでした。
「あ…すいません。何でしょう」
二回程呼びかけて、ようやくツグミが反応を返すと、弥白は溜息をつきました。
「…ごめんなさい」
「え!?」
反応が無いかと思えば今度は突然の謝罪。
弥白も咄嗟にどう反応して良いのか判りません。
「ちょっと、考え事をしていて。でも、もう大丈夫ですから」
「そう…ですの」
「さ、次はどこに連れて行ってくれるんですか?」
「えっと、それでしたら…手始めにあのフリーフォールなんかどうでしょう?」
「フリーフォール『テルス』……地球のことね。良いわね。行きましょう」
急に笑顔を見せると、まるで最初から場所が判っているかのように先にずんず
んと進んで行くツグミ。
ですが弥白には、ツグミがかなり無理をしていることが判っていました。何故
なら。
「ツグミさ〜ん。そっちじゃ無いですよ。こっちで〜す」
そう言いながら、佳奈子はツグミを追いかけて行くのでした。
*
「えっと…このコースターは?」
ノズルを沢山つけた巨大なロケット。
その周囲をループしているコースターを見上げながら、まろんは言いました。
「ロケットコースター『マルス』よ」
「マルス? 水金地と来たから、次は火星よね。それであのロケットは?」
「ロシアの何とかいうロケットのレプリカだそうよ」
「へー」
そう言い、コースターを見上げていたまろん。
何を思ったのか、辺りをキョロキョロと見回しました。
そんなまろんの様子を見て、都は彼女の手を握って引っ張って行こうとしたの
ですが。
「あ…アンさんだ」
「え!?」
「おーい!」
まろんはぶんぶんと手を振りました。
都がその方向を見ると、殆ど点にしか見えないような距離に、確かにアンらし
き人影が見えました。
それを見て、今日何度目かの溜息をつく都なのでした。
*
「…あ、まろん様だ」
遊園地の中に入り、ショッピングモールを抜けてアトラクションが並ぶ場所に
出ようとした時、まろん達の姿を真っ先に見つけたのはエリスでした。
「え!? あ、本当だ。手を振ってるよ。どうする?」
「一応、友達なんだろう」
「まぁ、そう言う事になるのかな?」
「迷子になった時に助けて貰った。家に上げて貰って飯をご馳走になった。立派
な友達さ」
「それもそうね。一応、挨拶位は」
「なりませぬ!」
まろんの方に向け歩き出そうとしたアン達の前に両手を広げトールンが立ち塞
がりました。
「神の御子に近づいて万が一のことがあったら一大事。行ってはなりませんぞ」
「別に戦いに行く訳じゃ無いわ。それに、まろんさんとはお友達…」
「敵です」
「良いだろ。ちょっと位」
「大体貴様は神の御子と戦った仲であろうが」
「髪の色違うんだから判りゃしないって」
「そうそう」
「決まったらおっさんはそこどきな」
「おい!」
「ちょっと挨拶するだけだから」
「ならばこのトールンも一緒ですぞ」
「おっさんは来なくて良いよ」
結局、言い合いながらまろん達の方に向け歩いて行く三人でした。
*
「あ、こっち来るよ。おーい」
「一緒に居るの、誰かしら?」
「こんにちわ」
この前会った時よりは大分はっきりとした口調で、アンはまろん達に挨拶をし
ました。
「アンさんも来てたんだ」
「はい」
「あの…」
「あ。紹介します。私の双子の姉の」
「ダイアナ。こっちのおっさんはギル」
まろんはダイアナと自己紹介した女の子の顔をじろじろと見ます。
どこかで見たような瞳。
そしてアンとお揃いのデニム地のジャケットの下に着込んだブラウスにはち切
れんばかりの……。
「まろん!」
「何?」
「口元、口元」
都に指摘されて、まろんは口元から垂れかけていた涎を手で拭いました。
「お姉さんがいたんだ」
「小さい頃に養子に出されて、離ればなれに育ったけどな」
「そうなんだ…」
「今日はそういう訳で、姉妹水入らずなの」
「余計なのが一人いるけどな!」
「余計で悪かったな!」
大音声でギルと呼ばれた男は叫びました。
「ト…えっと、ギル…ギルバートさんは私の叔父なの。知らない土地で私達が出
歩くのを心配してついてきたの」
「アンのことなら、俺が守ってみせるのにな」
「貴様!」
今にも喧嘩を始めそうなギルとダイアナ。
そんな二人の様子を見て、まろんは笑い始めました。
「何がおかしい!」
ダイアナとギルの声が見事にはもりました。
「仲が良さそうで良いなって」
「へ!?」
「馬鹿な」
「だって、本当に仲が悪かったら、口も利かないもの」
「本当よ。ギルとダイアナは仲が悪そうに見えるけど、これはこれで仲が良い
の」
アンがそう言うと、ギルとダイアナは互いにそっぽを向きました。
その仕草さえも、仲が良い証拠にしか思えなかったまろん。
ふと、あることに気づきました。
「…あれ?」
「何?」
「日本語……」
いつの間にか、アンの日本語が完璧に近いものになっていたことに気づいたま
ろん。
それを指摘すると、何故かアンはとても驚いたような表情をしました。
「アンは言葉を覚えるのが早いんだよ」
「ダイアナさんも日本語がお上手ですね」
「昔、日本人の教師から習った」
「へー。凄い」
更にダイアナとギルのことについて根掘り葉掘り聞きかねない勢いだったまろ
ん。
そんな彼女の耳を都が引っ張りました。
「痛てて…。何すんの都!」
「アンさんとダイアナさんは姉妹水入らずって言ってたでしょ。これ以上邪魔し
てどうすんのよ」
「でも…」
「気にしないで下さい。良かったらお茶でも」
「いえいえ。あたしとまろんもデート中なので」
「まぁ。それは」
「それじゃ、あたし達はこれで。ほら、行くわよ、まろん」
「はいはい。それじゃアンさんとダイアナさん、また今度〜」
名残惜しそうにしているまろんの腕をしっかりと握り、ジェットコースターの
行列へと向かって行く都でした。
*
都に引っ張られるように連れて行かれるまろんを見送ったアン達。
その姿が人混みに紛れて見えなくなると、アンは溜息をつきました。
「あ〜びっくりした」
「何がだよ?」
「言葉のことよ」
「ああ、ヤマトコトバとか言う奴か?」
「日本語。私、この国の言葉を知っているということを忘れていたの。それで、
片言の言葉しか、まろんさんの前で話したことが無くて」
「どうして?」
「この言葉は、勉強して身につけたものじゃないからかな」
「ああ…成る程」
「どういうことじゃ」
「この国の言葉は、私が覚えたものなんだ。王宮で無理矢理学ばされた。現在の
神の御子が生誕した国の言葉だって」
その時のことを思い出したのでしょう。
げんなりという表情をエリスは浮かべました。
「それで、その思い出が知識と一緒に私の頭の中に」
「双子の姉妹だからな」
「認めんぞ!」
そう叫ぶトールンを置き去りに、エリスはアンの手を引いて遊園地の中心部に
向け走って行きました。
(第172話・つづく)
そろそろ片言言葉というのも何だと思いまして。^^;;;;
では、また。
--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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