In article <f8dncl$31ja$1@ccsf.homeunix.org>,
wahaha@pop01.odn.ne.jp says...
>SF的面白みって何?というSF者でない私にはSF的?にも
>面白く思えて、「パラドックス」ってのもすげー重要な位置づけにあるなぁと
>感じたんだけどね。

原作小説の「時かけ」およびNHK少年ドラマの「タイムトラベラー」な
んかだと、いわゆるジュヴナイルSFってことで、ただ単に(というのは
言い過ぎか)時間旅行とかのアイディアが出てくるだけでオッケーだっ
たと思うんです。まだまだSFが一般的ではなかった時代の作品だし。

でも、いまどきはもう、ジュヴナイルとはいえ、時間旅行くらいで驚く
人はいないんじゃないかと思うわけで。時間旅行の目的だとか、歴史改
変のパラドックスの処理の仕方、なんてあたりに面白みがないと、あん
まり意味ないんじゃないかと思うわけです。ていうか、今思った。

そういう意味で言うと、アニメの「時かけ」は、登場人物の言動とかそ
んなところは今風かもしんないけど、時間旅行というネタそのものの扱
いは、古色蒼然としてる気がするわけです。なんていうか、最初にマジ
ンガーZを見た人は、人が乗って操縦する巨大ロボットつうだけで興奮
したかもしんないけど、今じゃ、なんでもかんでもガンダムかよ、みた
いな。って、ちょっと違うか。


「パラドックス」ってことでいうと、元記事にも書いたように、結局、
あの未来人の彼が能力を再チャージしたうえで、真琴が能力を得る以前
の時点に戻ってきて、すべてなかったことにしてしまえばいいじゃん。
みたいな議論もあるとは思うんです。そういうことが可能な設定のよう
だし。でも、あの作品のテーマは、そういう部分にはない。とも思うわ
けでして。
# つか、それはこの作品のストーリー上のパラドックスであって、時間
# 旅行にまつわるパラドックスではないと思うし(そういう「なかった
# ことにする」のを阻止しようとする物語とかはあるけど)。同様に、
# 誰かの幸福が別の誰かの不幸になり得るって話も、倫理上の(?)問題
# ではあれ、時間ネタ固有の問題じゃあない。

それと、元記事では「多世界解釈か?」なんて書いたんだけど、あとに
なって考えてみると、そういうわけでもなさそうなんですよね。最初に
そう思った根拠は、この作品の主人公としての真琴は、メガネくんが死
んじゃったときにその歴史を変えようとして過去に跳んだんだけど、未
来人の彼のセリフによると、別の時間の流れでは、ただ泣きじゃくるだ
けだったらしい、ということがあったから。

なんだけど、そもそもこの作品でのタイムリープって、その主体が過去
に跳んだ瞬間、本来、行き先の時点に存在していた本人は消え失せてし
まうものなんですよね。しかも、意識だけが入れ替わるのではなく、肉
体も含めて上書きコピーされる感じで(→カラオケで声が枯れる)。考え
ようによっては、消されるほうはたまったもんじゃない。つうか、ある
意味、殺人と一緒。未来人の彼の場合は、消されるべき本人がいないか
らいいんだけど。

一方で、過去に跳んだ側の本人がもともと存在していた時間の流れのな
かで何が起こるのかについては、作品中で一切言及されてない(と思う)
ので、よくわからない。まあたぶん、跳んじゃった本人のかわりに、跳
ぼうとは考えなかった本人が忽然と出現するんでしょうけど。

だとすると、未来人の彼が未来に帰ったとき、そこには過去に跳ばなか
った彼が存在しているはずだから、ここでもまた上書きコピーが行なわ
れることになる。んだけど、こちらは行き先が過去の場合以上に微妙な
問題。本人が過去に跳んだ瞬間より前の時点に帰ってこないと、本人と
周囲の記憶(というか歴史)に重大な齟齬が生じる可能性がある。戻って
みたら、腹ボテの彼女ができてました。なんてことならまだしも、すで
に本人が死んじゃってたら、どうなるんだろ。


…なんてことを考えるのもSF的な楽しみのひとつだと、まあ個人的には
思っとるわけですが。アニメの「時かけ」は、とりあえずそういうのと
は無関係なところで制作されたものなんだと思います。別に、だからダ
メだってこともないでしょうし、実際、それなりに楽しかったし。
--
AMAUMA