「北の狙いは何か?」は日本人の常套的解明手段である。その場合、
昨晩のNHK「クローズアップ現代」に出演したクリントン政権の
北問題担当者の「北の立場になって考えてみよ」という発言が注目される。
世界の百数十ヶ国と友好関係にある北には、国際法を守る、守れるという
自負はある筈だ。
国際的承認が得られるかどうかは別として、北としては、米国がならず者
国家の烙印を押し、対話を拒否し、先制攻撃を辞さない姿勢を見せ、韓国
でさえ宥和政策とは裏腹に米韓合同軍事演習を継続し、日米軍事同盟が北に
向けられている限り、自国の防衛は当然であり、軍事演習も当然であると
考えるであろう。或いは、米国が太平洋全体を使ってミサイル実験を行っ
ている以上、北がその辺の海にポチョンと落ちる程度のオモチャを飛ばす
ぐらい何の問題もないではないか、とも。

問題は、周辺の国際間即ち米国に近い韓国はともかく、自国と友好的な中露
二ヶ国との間にどのような了解関係を構築するかであったろう。
ムスダンでの発射準備が喧伝されてから発射実行までかなりの時間を割いた
のはその点についての見極めが必要だったからではないか。
発射の可能性について、多くの国に予知若しくは熟知して貰いたい、
そのような思惑さえあったかも知れない。
しかし最終的には「中露としても、事前に了解を与えて、ミサイルの発射行為
を承認するというかたちは取れないであろう」という結論に達したであろう。
そういう極めて困難な国際環境のもとにありながら、発射予定の情報が充分に
各国にゆきわたっている状況をみてとって、発射に踏み切ったのではなかろうか。

さてわれわれが「北の狙いは何か?」の問題に気を取られているけれども、
実はそれ以前に解明されなけばならない、しかも、北問題解明にとって最も
欠落している視点がわれわれ自身のなかにある。それは、
「米国が北との対話を依怙地になって拒否し続ける狙いは何か?」の問題に
ついてである。(以下次号)