Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
佐々木@横浜市在住です。
# 「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から着想を得て
# 書き連ねられているヨタ話を妄想と呼んでいます。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)<ckdgd5$206$2@zzr.yamada.gr.jp>、
(その2)<clfs1u$sq4$2@zzr.yamada.gr.jp>、
(その3)<cmkpa7$n9v$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その4)<cnpq23$uoi$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その5)<couhh3$6bl$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その6)<cq3l78$ci5$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その7)<crdmn4$ft7$3@zzr.yamada.gr.jp>、
(その8)<csvnro$s1b$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その9)<cu7vhd$j9o$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その10)<cvrqev$sj1$1@zzr.yamada.gr.jp>の続きです。
^L
★神風・愛の劇場 第173話『水妖』(その11)
●桃栗町町境近く
温泉スパ桃栗の更衣室。ロッカーが立ち並ぶ一画でカサコソと物音がした
としても、そろそろと午後の客が入り始めた事を示すざわめきの中では
誰もその事に気付きはしませんでした。そしてやや間を置いてから、人気の
無い一画で突然ロッカーの薄い鉄の扉が開いたとしても単に鍵の掛け忘れ
としか思われませんでした。
●桃栗町の外れ・ノインの館
普段の彼に比べるとやや慌しくリビングに通じる扉を開いたミカサ。時間的な
点を考えれば別に驚くには当らないノインの食事風景を見てやや意外な顔を
見せました。
「ノイン様…」
「はい」
「お食事中ですか」
「ええ。あなたも如何ですか。久しぶりに私が作ってみたのですが」
「美味しいでぃす」
全の狙ってはいないが故の絶妙の合いの手にノインは笑顔で頷きます。
一方でミカサの方はやや困惑の度合いを増した様子でした。
「火急の用との事だったのでは」
「あぁ、はいはい。そうでしたね。先ずは座ってください」
「はぁ…」
言われるままに、ほぼ彼の定位置となったノインの斜向かいの椅子に腰を
下ろすミカサ。既に薄々は自分が乗せられただけなのではないかと疑い
始めていました。
「実は大した用事では無さそうだと思ってますね」
「いや、それは……」
「構いませんよ。私としては大事と思ったので声をかけたのですが、
実際のところどうなのか。それはミカサ自身で確かめてください」
「確かめるとは」
「水晶珠を使った遠隔透視の事は知っていますよね」
「はい、一通りは」
「最近、神の御子の側も敏感になっていましてね。遠く離れた場所を
明瞭に見る為に強い念を送ると逆に気付かれてしまいそうな状況です」
「はい。その点は私も懸念していました」
「そこで考えました。従来からある呪符を使った中継を一部改良して、
途中の経路に人間社会の仕掛けを使ってみようかと」
「と仰いますと」
「要するに電話中継ですね」
「念を通信網に乗せるという事ですか」
「その通りです。今日はそのテストケースを実験してみています」
「その中で何か起こったのですか」
「取りあえず見て下さい」
ノインが取り出したのはテレビのリモコンでした。それを見たミカサは
無意識の内にリビングの隅に置かれたテレビ受像機の方へ顔を向けます。
訪れた時には気付きませんでしたが、テレビには以前は無かったはずの
配線が数本余計に接続されています。その反対側は部屋の隅から壁の中
へと消えていて、その先がどうなっているのかは判りません。そして
ミカサの見ている前で、プツンと小さな音を響かせると同時にテレビの
画面が明るくなりました。そこへ映し出されたのは薄いピンクの逆三角形の
布切れと上下に伸びる白みを帯びた肌色。そして画面の端から二本の手が
進出してきたかと思う間も無く、指先が布切れと肌色の境目に掛かり
布切れは画面の下の方へと滑って行きました。布切れが移動するにつれて
肌色の上に見えていた浅い谷間が段々と深まり…。ミカサは初めて見せる
俊敏な動きでノインと全とテレビを結ぶ線上に立ちはだかり、ノインから
リモコンを奪い取るとテレビに背中を向けたまま肩越しに電源を切りました。
とても困惑した、とでも言いたげな表情でノインが口を開きます。
「何をするんですか」
「それはこちらの台詞ですっ!」
「中々良い映りでしたね」
「一体何を透視したんですか!」
「見て判りませんでしたか?」
「そ、それは着替え中の女性の…いや、そんな事はどうでも良いのです」
「どうでもいい事は無いでしょう。大事なことです」
「何がですか」
「ちょっと寄り過ぎですね。引いて全身が映る様にしますか」
「そういう事を言っているのではありません」
「ところで何時もあんな感じの下着なんですか?」
「は?」
「…判らないんですか」
「何の事ですか」
「あのお尻の持ち主の事ですよ、当然」
「判るわけがありません」
「つまりミカサはユキの尻を見たことが無いのですね」
「ある訳が無いでしょうっ!」
「そうですか」
「…ユキ?」
「ええ。ミカサならすぐに判るかと思ったのですが」
「ななな、何を」
「まぁ、ある意味では予想通りですが」
「予想とはいったい」
「それはどうでも良いので置いておきましょう」
「…そうですね。もっと大事なことがありました」
「そうですそうです。ですからリモコンを返してください」
「駄目です。そもそも何故着替えを覗く事が大事な実験なんですか」
「覗いている訳では無く、たまたま実験中に着替えが行われているという」
「同じ事です。終わるまでリモコンはお返しできません」
「どのくらいで終わりますか」
「そうですね、15分くらいで…」
ノインがニコニコしながら頷いている事に気付き、ミカサは慌てて付け
加えます。
「彼女の着替えを部屋の外で待っていた事が何度かあるだけです」
「はい。そうでしょうとも。信じていますよ」
ミカサは心の中で、またしても間抜けな会話に巻き込まれた自分を何度も
繰り返して罵っていました。
●桃栗町町境近く
着替えの途中でふと手を止めたユキ。その隣りでぽつんと立っていた
チェリーが不思議そうな顔で見上げます。
「どうしたの?」
「今、ちょっと何かを感じた様な」
ユキはそう言いながら周囲を見回します。更衣室の中はそれなりの人数の
話し声が混ざり合い喧騒と言う程ではありませんが、ざわめきが充ちています。
ですがユキとチェリーが使っているロッカーを含む辺りには他には誰の姿も
見えませんでした。その事を確認した後、ユキは最後にチェリーを見つめます。
「ん?」
「あのね、ちょっとだけ後ろを向いていてくれるかしら」
「えっと、あ、はい」
いくら外見が少女でも中身は半分、或は三分の二は男性かそれに近いもので
あると今更気付いたユキは流石に今のチェリーの前で下着を脱ぐ度胸は
ありません。背中を向けたチェリーに、念の為タオルを頭からすっぽり被せ
更にもう一度周囲を丹念に見回した後にユキは素早く水着に着替えます。
「ありがとう。もういいわよ」
「あのね、やっぱり私も着替えないと駄目なのかな」
「そうよ。着替えないと中に入れないし、折角新しい水着を買ったんだから」
試着室ではユキと二人だけだったという事もあり、何とか我慢の範囲に収まって
いた恥ずかしさ。それが今は大衆の前にその姿を晒す事になるという恐れにも
似た大きな塊になってチェリーにのしかかっていました。それでも、何とか
仕事仕事と自分に言い聞かせて着替え始めたチェリー。俯き加減の姿勢で
最後の一枚を脱ぐ途中で動きが一瞬止まり、それから何故か顔を上げて目を
閉じたまま裸になると水着はあっと言う間に着終えました。何度も着替えた
甲斐があってか、最早水着は目を閉じていても簡単に着る事が出来る様に
なっていたチェリー。ですが勿論、そんな事を試してみた訳ではありません。
ユキは当然の様に彼女の行為を不思議に感じていました。
「どうしたの?」
「えっと…ちょっと」
「ん?」
「…見慣れないものがあって、じゃなくて無くて…その…」
「…」
「…」
しばし無言で真っ赤な顔をして佇む二人がそこに居ました。
●桃栗町の外れ・ノインの館
十数分の後、ミカサは即座に消す事も可能な様に神経を集中させながら
リモコンの電源ボタンを押し込みました。再び糸を弾いた様な音がした後、
明るくなった画面には誰も映ってはおらずただ鉄の細長い扉が付いた箱が
並んでそそり立っている光景が見えているだけでした。ミカサはほっと胸を
なでおろしつつリモコンをノインに返すのでした。リモコンを受け取った
ノインは待ってましたとばかりに幾つかのボタンを忙しく操作します。
その間、テレビ画面の中の風景がぐるぐると動き回り最後には最初と同じ場所を
見下ろす視点へと変化していました。
「着替え終えて行ってしまった様ですね。実に残念です」
「ノイン様、別にユキの着替えでなくても実験は出来たのでは」
「可能だったかもしれませんが問題があります」
「問題とは」
「私のヤル気という大問題です」
「……そうですか」
「何しろ遠隔地の映像を鮮明に再生する為の術ですので、ヤル気は大事です。
ヤル気が出ないと術に掛ける力が弱まってしまいますから」
「元々、弱い術で鮮明な映像を得る実験だったと理解していたのですが」
「そんな事を言いましたか」
「ええ、確かに仰いました」
「忘れました」
「そうですか…」
「とにかく」
ノインは再びリモコンをぽつぽつと操作し始めます。
「ロッカーなどを延々と映していても意味がありません。移動させます」
「移動?そもそもこれは何処なのですか」
「それはですね」
ミカサの疑問に対してノインは今までの経緯を簡潔に語って聞かせます。
「大体のところは了解しました。ですが、いきなり送り込むのでは無く
シン隊長には習熟の機会を与えるべきだったのではと考えますが」
「まぁ彼なら何とかしてくれるでしょう」
「何とかですか」
「ええ。それにユキがエスコートしてますし現地にはエリスとアンも
揃ってますから」
「そんなテキトーな事で良いのですか」
「いいんですよ。別に作戦行動じゃありませんし」
「それではいったい何なのですかこれは」
「ですから効率の良い透視の実験です」
「…判りました。とにかく暫く様子を見ましょう」
「ええ。そうしましょう」
ミカサは最後の質問をぐっと堪えていました。本当のところ、この行動の
意味は何であるのかという肝心な質問を。
“暇つぶしに決まってます”
というノインの答えを聞いてしまったが最後、彼の事を信頼し続ける自信が
今のミカサからは失われているのでした。
(第173話・つづく)
# 最近、微妙に低い展開ばかり書いている気が。
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
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