好きしょ!(第10話) 原作比較考察
加藤 義啓です。
以下、自ら投稿した記事をもとに、
原作ゲームとの比較考察をしたいと思います。
多分に原作ネタバレを含むので、ゲームを
クリアしていない方のうち、プレイするつもりの
ある方はご注意願います。
(註)以下、引用の原作はいずれもPC版です。
仕様の関係上、『1』のメッセージにはIDが
存在しない為、引用では『2』〜『4』のみの
IDを紹介しています。
----- Original Message -----
From: "加藤 義啓" <katoocom@eos.dricas.com>
Newsgroups: fj.rec.animation
Sent: Wednesday, March 16, 2005 9:27 PM
Subject: 好きなものは好きだからしょうがない!! (第10話:2005/3/12放送分)
> 30 #
> 29 #視聴はテレビ神奈川放映のものです。
> 28 #以下、アニメに留まらず
> 27 #原作ゲームのネタバレも含むので
> 26 #ゲームをクリアしていない方のうち、
> 25 #プレイするつもりのある方(笑)は
> 24 #ご注意願います。
> 23 #
> 22 #尚、当人は第5話放映の時点で
> 21 #原作PC版『3』まで解析完了、
> 20 #『4』コンプリート、解析中(70%程度)
> 19 #
> 18 #『ビリプラ』及び『ファンディスク』は
> 17 #持っていないので『も待て』の内容には
> 16 #詳しくありません。
> 15 #
> 14 #
> 13 #
> 12 #略称凡例
> 11 #『1』…『FIRST LIMIT』
> 10 #『2』…『TARGET†NIGHTS』
> 09 #『3』…『−RAIN−』
> 08 #『4』…『+White Flower+』
> 07 #『ビリプラ』…『Be-reve Primary』
> 06 #『も待て』…『もう、待てないって!』
> 05 #
> 04
> 03 .TITLE 10 【憎悪】
> 02 .TEXT ON
> 01 .SCT 10
> 00
>
> 【第10話 憎悪】
>
> 階段を昇り、事件現場へと向かう空と直。
> 身体の不調を堪える空に、何があっても夜に
> 頼らない事を約束させる直。
> …う〜ん、夜が転落の原因なのか、それとも
> 直がそう考えているのか……。
>
> 次第に蘇るその時の記憶。空に迫る芥。そして
> そこから逃れるようにガラスを割り━━!!
> …矢張り、アニメ版では芥がトリガーとなる
> 役回りのようですね。
原作ではトリガーとなっていたのは相沢。
そして、その相沢を恐れた夜が緊急避難の
為に飛び降りた、というのが『1』ラストで
七海の唱えるおもて向きの理由でした。
しかしそれが間違いである事は、『3』の
ラストで相沢の口から真相が知らされる
事により判明します。
------------------------------
> 何かを思い出せるかもしれないから昔の事を
> 聞かせてくれと頼む空。直は「羽柴にとっても
> 辛い話になるよ」と言うが、それでも喰い下がら
> ない空に話し始める。━━それはまだ幼い頃の
> こと、深夜、祭に呼び出されて施設(?)を抜け出す
> 空と直。そして祭は言う。「引っ越すんだ…。
> 飛行機に乗って、遠くに行くんだって……」
> …空と直はもともと親無しという設定に
> 変更されているのでしょうか。まぁ、流石に
> 原作の“あれ”は描写するのはキツいというのは
> 理解出来ますが…。祭の留学モティーフも、
> 幼少時の引越しというものに置きかえられている
> 感じです。
一言で幼少時と言っても、時制にはかなりの
前後関係があるので複雑ですが、原作では
もともと祭は勿論、空や直にも両親がいた事に
なっています。同時に、その頃から、真一朗や
七海との近所付き合いもありましたが、この
時点ではまだ空達は相沢達との関係は無く、
「学園」も全く関係ありません。原作では
「施設」という名前で登場しますが、この
施設は研究所から救出された後、空が
置かれた場所です。この施設から
抜け出していたという話はあります。━━
┃☆参照:
┃☆ 『2』【祭ちゃん、パニック!】
┃
┃原作:MES-ID 1646〜1649(部分引用)
┃*オレは兄ちゃんたちに助けられた後、病院に
┃*入れられたらしい。その後、どっかの施設に
┃*入れられたみたいで、オレは何度もそこから
┃*抜け出してた。で、そん時だ。祭に
┃*見つけられたのは。なんか自分の記憶じゃ
┃*ねぇ感覚だったし、いま考えてみると変な
┃*感じがする。
また、祭は『3』の後、学園を卒業した後に
海外に留学していますが、一方で幼少時の引越しの
モティーフとしては、むしろ祭を残して空と直が
「引っ越した」とされた事になっています。
この時、真一朗達も祭の前から姿を消しています。━━
┃☆参照:
┃☆ 『2』9日目【ごめんね……?】
┃
┃原作:MES-ID 6179〜6184(部分引用)
┃*「帰ってきたら……お母さんがもう遊びに
┃*行っちゃだめだって……。僕は会いたかった
┃*のに、家から出ちゃだめって……」
┃*なに……? 祭、なに言ってんの?
┃*「おみやげ渡したかったのに……2人は
┃*引っ越したからって……お家が焼けた
┃*からもう帰ってこないのよって……。
┃*……捜してもらおうと思ってね、お兄ちゃんと
┃*ななちゃんの所にも行ったのに……
┃*2人もいなかったんだ……」
┃*これって……祭、子どもの頃の……
┃*オレたちがさらわれた時の話をしてるのか?!
┃*「僕には……なにも出来なかった……。
┃*怒ってる、よね……? 僕だけ助かったん
┃*だもん……」
━━新歓イベント中、薬で精神崩壊している祭の
セリフより。この場面は、祭が単なるお調子者の
策士では無く、薬によって初めておもてに出した、
傷心も持つキャラクターでもある面を覗わせて
います。ちなみに真一朗や七海が消えた理由は
『4』の「七海ルート」で明かにされ、以後、
マンションが真一朗と七海の拠点となります。
------------------------------
> そんなある夜。白衣の“奴ら”と芥によって
> 監獄のような部屋に連れ込まれる空。「俺が
> 何したって言うんだよ!」「学園でも何度も
> 脱走したそうじゃないか。父さんが言ってたよ、
> お前達がいなくなった処で、誰も心配なんて
> しないって」
> …幼少時の芥、コミック以外では初登場で
> しょうか。それよりもこの芥のセリフはかなり
> 重要な事に触れています。
>
> ----- Original Message -----
> From: "加藤 義啓" <katoocom@eos.dricas.com>
> Newsgroups: fj.rec.animation
> Sent: Monday, January 31, 2005 2:24 AM
> Subject: 好きなものは好きだからしょうがない!! (第3話:2005/1/22放送分)
> > #アニメでは青の人物設定って、どうなっているんでしょうね?
> > #青も廉も風太も学園初等部という事になっているようですし、
> > #研究所のダークな部分や七海達を貶める陰謀といった部分が
> > #(少なくとも今の時点では)描かれていないので、どのように
> > #展開していくのか気になります。
> > #初等部全体が“施設”に相当する設定だったりしたら
> > #イヤだなぁ……。(汗)
>
> #芥はここで「学園」という言葉を使っていますが、
> #つまり当時から空(と直)は「学園」と呼ばれる
> #施設にいた事になっています。もしかしたら本当に
> #学園全体そのものが研究所施設の一環という設定
> #なのかもしれません。この辺りは残り2話で明かに
> #されるものでしょう。
「好きしょ!(第3話) 原作比較考察」
<ctqoct$pc6$1@ccsf.homeunix.org>記事も参照。
また、ここでは「何度も脱走→拉致」という
流れになっていますが、原作では「拉致→救出→
→施設→何度も脱走」という順。モティーフの
使われ方が違いますね。
------------------------------
> その部屋で再会する直だったが、彼は
> “奴ら”に傷を負わされていた。自意識を
> 失っている直を叩き目を醒まさせると、
> 空はこう言った。「俺は臆病なんかじゃねぇ、
> だから、あいつらにやり返してやる…!
> いいか、憶えとけ、俺の名前は夜だ」━━
> その話を聞き、空は、自らの対実験保身人格として
> 「夜」が誕生し、その導き手として直には
> 「らん」なる人格が生まれた事を知る。
> …漸く「夜」の意味を知るに到りました。
> ともあれ、性的虐待が漠然たる児童虐待へと
> リアレンジされたのは無難な選択だと思います。
┃☆参照:
┃☆ 『1』【小さな祈り】
┃☆ イベントCG-ID 72
┃
┃原作:
┃*…………………………
┃*……空ちゃ…………
┃*……大丈夫。大丈夫だよ、ナオ。
┃*……いたいよぉ……
┃*痛いのはナオじゃない。別のナオだよ。
┃*……別の……?
┃*……ほら、いたくナイ。……だろ?
┃*…ホントだ……いたくない、ね……
┃*……スゴイね、空ちゃん……
┃☆参照:
┃☆ 『2』【あなたの大切なモノ、いただきます】
┃☆ イベントCG-ID 73
┃
┃「好きしょ!(第1話) 原作比較考察」
┃<cto4vi$14bn$1@ccsf.homeunix.org>記事参照
空が漸く「夜」の存在理由を理解したという
意味では、シーンとしては原作の『1』ラストに
相当すると考えるべきでしょうか。
ところでアニメでは検体とされる直、それに
抵抗し、直を守ろうとする空(夜)という構図
でしたが原作はそう単純では無いようです。━━
┃☆参照:
┃☆ 『3』9日目【守ってあげる】
┃
┃原作:MES-ID 6753〜6760(部分引用)
┃*研究所にいた頃もこうやってオレを
┃*守ってくれてたのか……? ホントは
┃*恐いクセに一生懸命になってさ。研究員に
┃*真っ先に抵抗するのはいつもオレのほう
┃*だった。だけどそのせいで散々殴られて、
┃*オレが動けなくなる度に藤守が庇って
┃*くれたんだ。だけどあいつらは藤守の
┃*抵抗を笑いながら抑え込んでは、オレの
┃*目の前で……。恐かっただろ? 悔し
┃*かったよな? 立ち向かっていく度に
┃*ボロボロにされて……。藤守がオモチャ
┃*みたいに扱われるのは、オレへの
┃*みせしめだった気がする。なのに
┃*藤守は笑うんだ。オレがきっかけを
┃*作ってたんだ……。オレのせいじゃん。
┃*全部、オレのっ!
#原作夜の誕生に比べてアニメ夜のそれはだいぶ
#イメージが違います。もともと幼い折の空も、
#原作のそれとは異なり直をからかうで無く、
#むしろ守る強さのイメージが出ているので、
#原作にあるような傷の嘗め合いという雰囲気
#からは遠いというのがあるのかもしれません。
#どちらの空や夜の像が好みかは評価が分かれる
#処でしょう。
------------------------------
> 寮で待つ祭。そこに学が倒れ込んでくる。
> 七海には連絡が取れず、真一朗を呼ぶ祭。
> 目を醒まし、真一朗の姿に驚く学だったが
> 「水都先生は空の後見人なんだ」
> …アニメ版では隠していないんですか。
水都 真一朗が空の親権者になっている事を
知るのは真一朗自身だけです。七海も
知っていると考えるのが相当ですが、これ以外
には空自身でさえ、次のタイミングを逃して
しまうと知り得ない話でした。━━
┃☆参照:
┃☆ 『3』7日目【数学教諭室8】
┃
┃原作:MES-ID 3635〜3654(部分引用)
┃*扉の隙間からそっと中の様子を窺ってみると、
┃*うめちゃんっ?! ……なんで? 理系と
┃*文系の教師がこんなとこで話してるのは
┃*かなり変かも……。まさか教師同士で騒ぎは
┃*起こさねぇとは思うけど……。
┃*「梅谷先生がここまでいらっしゃるとは……
┃*どんなご用件ですか?」
┃*「羽柴の事です」
┃*「羽柴……あぁ、羽柴の事でなにか?」
┃*「先日、羽柴の実家はどうなっているのか
┃*個人データを見てみました。すると、巧妙に
┃*隠してありましたが……水都先生、あなたが
┃*羽柴の身元引き受け人……保護者になって
┃*いました。……これはどういう事なんですか?」
┃*「……どういう事もなにも……。私が羽柴の
┃*保護者ではまずい事でも?」
┃*「羽柴は奨学金で学園に通っていたはずです。
┃*なぜ、あなたがここまでする必要が……」
┃*「プライベートに踏み込まないでいただきたい。
┃*私と羽柴がどういう関係であれ梅谷先生、
┃*あなたには関係のない事だ」
┃*「……わかりました。しかし、羽柴になにか
┃*あった時は私はあなたと戦う覚悟も出来て
┃*いますから」
┃*「ふ……勇ましい事だ」
━━うめちゃんはこの後、『4』終盤に到るまで
水都の「真一朗」としての顔を知ることはありません。
------------------------------
> 学は、芥と直の会話を話す。一方、現場では
> 直の回想が続いていた。━━らんという
> 人格と、「夜」という空の支えで研究所でも
> 耐えていけた直だったが、そんなある夜、
> 真一朗と七海が現れ、2人の救出に臨む。
> …やや男っぽさのイメージのある七海です。
> 作画の乱れと観る向きもあるでしょうが、
> 一人称が「僕」だった頃の七海と思いたい
> ですね。
原作とアニメでは時制の前後関係も、
その時間の長さも異なるので直接的な対称を
見るのは無意味だという上で続けます。
七海の一人称が「僕」であった時期が具体的に
いつ頃の期間なのかは明確ではありません。
原作空も幼い頃に接触していた七海を
「ずっとお姉さんだと思ってた」(『2』
【夜の場所】MES-ID 5099)くらいなので、
この頃には既に女性っぽい様であったと
考えるのが良さそうです。しかし同時に、
七海が相沢の下から逃げ出した頃の一人称も
また「僕」であり、『4』の「七海ルート」での
CGを観ても廉のような中性的な顔立ちを
うかがう事が出来ます。━━
┃☆参照:
┃☆ 『4』8日目中回想【2人の再会】(七海ルート)
┃☆ イベントCG-ID 111
┃☆ イベントCG-ID 112
┃
┃原作:MES-ID 15256〜15259
┃*「もうだめ……。もう走れない……。
┃*でもあれは……地下であんなことをしてた
┃*なんて……。今まで開発していた薬も
┃*あれに? 僕の研究があんなことに……?
┃*……どうしよう。どうすれば……」
------------------------------
> 「いいか、空、直。今から俺と駆けっこだ。
> 途中で諦めたら二度とここから出られないかも
> しれない。死ぬ気で走れるか? …よし…、
> ……走れ!」一斉に走り出す4人。しかし
> 直が倒れる。「ナオ!」「くーちゃん…!」
> 鳴り響くサイレン、追い掛けてくる白衣の者達。
> 「ナオ…! …待って、ナオが!」「ダメだ、
> もう間に合わない!」「…くーちゃん……」
> …動きがつくと、こういう様子だったんだなぁ…と
> 思わされます。原作とほぼ同じ構図で再現して
> いる辺りもグッときます。
真一朗が潜入し、救出するという具体的な
描写は原作中にはありません。回想シーンは
常に「ダメだ……っ間に合わねぇ……っ」
「………おいてか…ないでぇ」に終始します。
逆に言えば空にとって、この直との別れの場面は
それだけ心に刻み込まれるものであったとも
取れます。
┃☆参照:
┃☆ 『1』【表と裏の侵入】
┃☆ イベントCG-ID 3
------------------------------
> ━━1人取り残された直は、それからも
> 空が助けにきてくれる事を信じていたと
> 話す。そんな忌まわしい出来事を忘れ、
> 直の事さえ憶えていなかった自分に
> やるせなさを感じる空。「俺はずっと
> らんを通して夜を見ていた。そして夜の
> 向うに羽柴を感じていた」と呟く直に
> 遂に赦しは満たされ、2人は結ばれる。
> …原作のらぶりゃな感じと違って、
> アニメ版はアニメ版でしんみり系で来ました。
> アニメの方が重くなっている場面って、
> もしかしてこれが初めてではないでしょうか。
┃☆参照:
┃☆ 『3』12日目【オレの気持ちは……?】
┃☆ 〜【反対語】
━━なんでも屋の偽物、新歓イベントの波瀾も
無事に終え、真一朗と七海の喧嘩も仲直りし、
大団円の果てにある2人の情事。その後に
続く悲劇をより対比的に濃く押し出す一時の
至福。それが原作での描かれ方です。
------------------------------
> 翌朝、「さよなら、くーちゃん…」と1人
> 別れを呟く直。
この直のセリフは案外見落としてしまいますが、
原作の流れを踏襲しつつ、リアレンジを加えて
います。『3』に於いて空と直が結ばれるのは
「真相ルート」系と「空×直End」。その内、
前者のフラグが立っていると、濡れ場を経た後に
このようなシーンがあります。
┃☆参照:
┃☆ 『3』13日目【動けないから】
┃☆ イベントCG-ID 102(スクロール)
┃☆ イベントCG-ID 1014(セル)
┃
┃原作:MES-ID 10851〜10858(部分引用)
┃*「……くーちゃん」
┃*あ、藤守。良かった。どこにいるのかと
┃*思ったぜ。ずっと一緒にいたのに突然
┃*いなくなるんだもんな。
┃*「変なくーちゃん……。俺はどこにも
┃*行かないよ。だって俺、ここから動けない
┃*から。だから、バイバイ」
┃*あ、藤守っ?! なんで……? なんでだよっ?!
┃*藤守……ふじも……っ…――。
何故動けないのか。この伏線帰結は『4』の終盤。
------------------------------
> そしてその直後、すれ違いで
> 駆け寄る真一朗達。寮部屋で目を醒ます空。
> 「藤守は…?」「あれから寮にも戻って
> 来なかった。学校も無断欠席してる。何か
> あったの? ナオくんの事だから、ひょっこり
> 帰ってくると思うけどね」「何でいなく
> なるんだよ、俺、間違ってたのか?」
> 「空がそれでいいと思ったんでしょ?
> だったらそれでいいんだよ」
> …こんな処に「友情End」のモティーフを
> 持ってきました。カップリングの無い祭に
> 於いて、「祭End」の別名を持つ
> 「友情End」は祭ファンにとっては
> 「やってくれた!」という感じかもしれませんね。
「祭End」と呼ばれるものは『1』及び
『2』のそれぞれ「友情End」と、『3』の
「犯罪者End」,『4』の「崩壊End」。
いずれの場合も祭は、直(や仲間)を失った空の
心を支えるという役処になります。
┃☆参照:
┃☆ 『2』【僕がついててあげるから】(友情End)
┃
┃原作:MES-ID 7054〜7068(部分引用)
┃*「……藤守……っ?!」
┃*扉が開く音を聞いて、咄嗟に藤守の名前を
┃*口にしてた。
┃*「……ごめん。僕だよ」
┃*「まつり……なに謝ってんだよ?」
┃*オレの気持ちを見抜いてか祭がすまなそうに
┃*謝ってきたけど……オレってばどんな顔
┃*してたんだ?
┃*「大丈夫。僕がいるから」
┃*不思議と祭に言われると少しだけ気分が
┃*落ち着いてきた。
┃*「ナオくんだって落ち着いたら必ず戻って
┃*くるよ。一緒に待ってよう?」
------------------------------
> 空の部屋を出た祭は学と出会う。学は芥の
> 話していた「発動」に付いて祭に説明する。
> 一方、真一朗は七海を問い詰めていた。
> 「直がいなくなった。永瀬 芥も消えた…!
> 昨日、どこに泊まった! 何故、電話に
> 出なかった!?」「真一朗にあんな事を
> 言われて1人になりたかった。電話に
> 出なかったのは話したくなかった、それだけ
> だよ…」と答え、「…マンションは?
> 藤守くんが頼れるのは真一朗しかいないでしょ」
> と続ける。その言葉に真一朗は走り出す。
> …話のテンションがどんどん上がって
> きます。
>
> その入れ違いで祭と学が七海の処に現れ、
> 真実を正される。以下、セリフを全文引用。
> 「人格操作というのを知っていますか?
> 強い恐怖心を植え付ける事で、人間の魂を
> 思うままに操り、記憶さえも消してしまう…」
> 「何かの本で読んだ事があります。人格操作を
> 施した人間を戦争等で敵国に送り込む。訓練
> された記憶は失っている為、怪しまれる
> 事も無い。…けど、何かのきっかけで
> スイッチが入ると記憶が呼び戻され、
> 一転して恐ろしい殺人兵器と化す…!」
原作中、「人格操作」という単語は一度も
登場しませんが、次のような形で紹介されます。
┃☆参照:
┃☆ 『1』【ある結末の真実】
┃
┃原作:(部分引用)
┃*「闇の薬屋さん。薬っつっても、カゼ薬
┃*とか目グスリとかそんなナマやさしー
┃*モンじゃねぇぜ? 証拠を残さずヒトを
┃*簡単にヤれるモノ。心を操ってしまえる
┃*モノ……そんな兵器のようなクスリだ」
------------------------------
> 「私は相沢という科学者の下でその実験に
> 関わっていました…。真一朗とて、自分が
> 求めているものが間違いだと気付きました。
> 私は相沢の下を離れ、新しい生活を始めました。
> 私と真一朗の傍には、家族みたいに、いつも
> 本城くん達がいて……でも、そんな幸せは
> 長くは続かなかった。本城くんが引越した後、
> 羽柴くんと藤守くんが消息を絶ったんです。
> 相沢は私へのあてつけから、実験の為に
> 2人を…! 真一朗と私は相沢の手から
> 2人を連れ戻そうとしました。でも結果的には
> 藤守くんを置き去りにする事になって
> しまった。最初から償う事なんて無理だった
> んです。何もかも私のせいで…私が出会わな
> ければ、好きにならなければ、皆巻き込む
> ことも無かったのに…!」
> …セリフとシンクロしつつ空が動き出します。
> 視点が空でしかなかった原作ゲームでは出来ない
> 演出です。
┃☆参照:
┃☆ 『2』【七海の真相】
┃
┃原作:MES-ID 5446〜5465(部分引用)
┃*「私は……相沢の部下でした……。けど…
┃*途中で恐ろしくなって……逃げ出したん
┃*です……そして……真一朗に相沢の件を
┃*依頼した……クライアントは……私です。
┃*ごめんなさい……羽柴くんたちをこんな
┃*ことに巻き込んだ原因は私です……
┃*私さえ……私さえ逃げなかったら……」
┃*「七海ちゃんは相沢と一緒の目的で
┃*そんなモノ作ってたのか?」
┃*「違います……! まさかあんなことを
┃*してるなんて……私はただ……ただ
┃*純粋に……なのにあんなことを……!
┃*ホントなら…………真一朗にも合わせる
┃*顔ないの…に……っ」
#ところで、原作ファンがここで注目すべきは
#本編では無く真一朗達5人が集うアパートでしょう。
#これは『3』の「怪盗ルート過去End」の
#モティーフ。実際には「過去End」は、
#本編からは考え難い世界、パラレルワールドに
#なっています。何故ならば、この頃には空にも
#直にも両親はおり、従って真一朗達を親代わりに
#川の字に寝るというのは、考え辛いのです。
#文芸上、お泊りという印象も薄く、原作者は
#誤ったか、或いはおまけEndの一つとして、
#完全なパラレルワールドとしたのかもしれません。
#アニメではこの幼い頃の5人揃ったアパートの
#情景を辻褄の合う本編への組み込みをしています。
------------------------------
> 「七海先生は相沢の研究がそんな
> 恐ろしいものとは知らなかったんだ。でも、
> 気付いた時には科学者としての探求心に
> 抗えなくて後戻りできなくなっていた。
> 永瀬部長もきっと…」と弁護する学。
> 「だとしたら、永瀬 芥が言っていた
> 計画の発動と言うのは何らかの形で空の
> 人格を操作するって事…?」その祭の
> 推理に何かに気付く七海。
> …アニメ版の学の役回り、すごくいいですね。
> 原作ゲームと違って、いなければならない、
> もはや狂言回しに近い存在になっています。
> 賛否はあるかもしれませんが、『も待て』も
> 含めた全シリーズを通しての中心人物なので
> そういう意味ではこういう役回りは非常に
> 学に合っているかもしれません。
七海の告白だけで無く、科学に接する者として
知識を発言し補足、弁護する。先に紹介した
「【七海の真相】」ではこの役は真一朗や
空でした。
------------------------------
> マンションに戻る真一朗。そこには果たして
> 直がいた。「皆、心配したんだぞ」「だったら
> 何故もっと早く迎えに来てくれなかったの…?
> もう遅いよ…」寂しく笑う直。そしてマンションの
> 扉に迫る空。遂に悟り、絶叫をあげる七海。「これは
> 罰なんだ!!」祭も声を上げる。「空は何をしようと
> しているんだ!?」そして扉は開かれて━━
> …待て! 待て々々! 本当に“あれ”を
> やるんですか!?
┃☆参照:
┃☆ 『3』13日目【始動】
┃
┃原作:MES-ID 10952〜10961
┃*……あれ? オレ、いつの間にマンションに
┃*来てんだろ? これって夢じゃねーよな?
┃*また夜が勝手に動いたとか? まぁ、
┃*それなら別にいいんだけど。だって藤守に
┃*会いに来るつもりだったしな。あ。
┃*兄ちゃん? なんだ、兄ちゃんも藤守に
┃*呼び出されてたんだ? そっかー……
┃*じゃあしょうがねーよな。あーあ。
┃*あれ? けどなんで兄ちゃんを見て
┃*残念な気持ちになってんの? 別に
┃*兄ちゃんがいてもいいじゃん。
┃*なのにどうしてしょうがねぇなんて
┃*思ってんだろ……。……いや、これで
┃*いいんだ。兄ちゃんがここへ来るのは
┃*仕方のないコトなんだよな。だって
┃*そういうふうに決まって……決まってるって
┃*なにが? あれ? オレなんかおかしい?
┃*いや、おかしくなんか……けどなんか
┃*変だよ。どうしよう。オレ、どうしたら
┃*いいんだ……?
“あれ”に関しては次回に書くとして、その
問題のシーンに続いて、このようなモノローグが
あります。━━
┃☆参照:
┃☆ 『3』13日目【雨の雫】
┃
┃原作:MES-ID 11203〜11205
┃*……なぁ、これがいったいなんなのか、
┃*誰か教えてくれよ。これが本当にオレたちの
┃*現実なのか? オレたちが受けるべき
┃*罰だとでも言うのか……? だったら
┃*……なんて…――。
━━「罰」
また、『好きしょ!』では「扉」も象徴的な
存在として扱われています。空の精神世界にある
封印された忌まわしき過去の思い出として登場
する他、『3』の「水都ルート」でも禁断という
象徴として出て来ました。アニメではサスペンスたる
演出の小道具という意味の他に、原作を知る
視聴者にはこれらのモティーフを束ねたものと
して提示しているようにも見えます。
> 総合評価。
> 作画の乱れすら気にならない暗いテンション。
> 話としては良い評価を出したいです。流れが
> 駆け足とも思えますが、今回は比較的よく纏めて
> いる方です。濡れ場はもう一味欲しい気も
> しますが、学校の廊下というシチュエーションを
> 以ってまぁ、良し。(笑) 原作では相沢の
> 立ち回りが芥にリアレンジされた為に、原作を
> 知る者には、知る故にラストが読み辛くなっている
> という点も評価すべきでしょうか。
+-----------------------------------+
I 加藤 義啓 katoocom@eos.dricas.com I
+-----------------------------------+
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735