古典物理学で言うところの「ラプラスの魔」というのは、宇宙の全
ての原子の位置と運動量を知り、その全てを瞬時に計算できる存在
にとっては、未来は過去同様に明らかであるというものです。狭い
意味で、この計算可能性は否定されました。

しかし広い意味での「ラプラスの魔」というのは、未来は現在の状
態によって既に決まっているという決定論そのものを表します。

現代に合わせて言葉を直せば、
  系を撹乱することなく系の状態を知ることができ、ある状態か
  ら次の瞬間の状態への変化を知りえる存在にとっては、未来は
  決定的である。
というものになります。

系を撹乱しないということは、当然この宇宙に存在するものではあ
りませんが、仮想的なものであるため、そういうものが存在するか
どうかはここでは問題ではありません。

この現代風「ラプラスの魔」による決定論を否定するためには、同
じ状態から、複数の違う状態への遷移があることを証明しなければ
なりませんが、これは原理的に不可能です。

しかもエヴェレットの多世界解釈でも、決定論的な世界となります。
http://www.threeweb.ad.jp/~qm/index_jap.html

また、非因果的な確率事象により、決定論が否定されたかに見えま
すが、そうではありません。非因果的事象は、系の状態と無関係に
発生する要素であり、本来あるべき状態から別の状態へ「変える」
わけではなく、必然的に発生することを表します。つまり不変です。

世界は、予測可能な因果的事象+予測不可能な非因果的事象の組み
合わせ構成されるものの、どちらも不変的な要素であることには何
も変わりはありません。

未来が変わることはありません。変わったように見えるのは人間の
予測が外れたに過ぎないわけです。

結論としては、未来は人間には予測不能であるものの、既に決定さ
れています。
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 Name   : Shin-ichi TSURUTA  鶴田 真一  (as SYN)
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