Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
先週は表稼業の都合等で休んでしまいました。
# で、今週も表稼業の都合で短め^^;;;
例の妄想第172話(その7)です。
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その7)
●濱坂市・水無月ギャラクシーワールド
「お待たせしましたぁ」
彼の特徴であるちょっと間延びした声がして、ツグミは俯いていた顔を上げま
した。
同時に、何故だかほっとした気分になっている自分に気づき、嫌な気分にもな
ります。
弥白のことが嫌いだとか、苦手だとかいう訳ではありません。
ただ、気味が悪いと思われている。
そう弥白が思っているだろうという確信が、ツグミに言葉を発することを躊躇
わせていたのでした。
「すいません。遅くなりました」
今度は、弥白と一緒に来た佳奈子が戻って来ました。
この娘のことについてはツグミは良くは知りませんでしたが、少なくとも自分
に対して何の警戒心も抱いてはいないのがすぐに判ったので、彼女とは直ぐにう
ち解けることが出来ました。
「それでは、行きましょうか」
「今度はホラーハウスでしたっけ?」
「はい。音響ホラーハウスなので、瀬川さんにも楽しめるかと。あの…こういう
のは?」
「実は初めてなの」
「楽しみでぃす」
そんな会話を背中で聞きながら弥白は思います。
ツグミはここでどんな反応を示すのだろうかと。
●濱坂市上空
トキが飛び去った後を追うように、アクセスは桃栗町から線路伝いに北へ北へ
と飛行を続けていました。
セルシアが抜けた穴を抜けるべく、アクセスが弥白の側で護衛の任に当たるよ
うに、稚空から依頼されたからでした。
途中でトキに追いつきそのことを告げ、彼と濱坂市中心部上空で別れたアクセ
スは、目的地へ向け方向を変えました。
目的地の場所については概略の位置しか知らなかったのですが、大観覧車が見
えたので迷いようはありません。
問題はその後で、大勢いる人間の中から、どうやって弥白を捜し当てるのか。
そう考えていたアクセスは、急に何かを感じると、身体を傾けて急旋回しまし
た。
すると彼が真っ直ぐ飛んでいた時に位置していたであろう空間に向け、邪悪な
気配をもった何かが通り過ぎて行きました。
「(気の矢?)」
白昼堂々、魔族からの攻撃を受けたことを瞬時に悟ったアクセス。
目を閉じ、その気配の出所を探ります。
しかしこの地はヒトの気配が多すぎて、その中から魔族の気配だけを探すのは
困難を極めました。
しばらくこの地を探索した後で、諦めて遊園地へと向かおうとした時です。
再び、魔族からの攻撃を受けたアクセス。
今度は警戒していたので、攻撃を受けた方角から逆算して魔族の位置を割り出
すことが出来ました。
「(地上かよ!)」
人間達の建物と建物の隙間から、魔族が攻撃を仕掛けて来ているのでした。
ここがヒトの居ない山の中であれば、どうということの無い相手です。
しかしここで遠距離攻撃を行い、周辺に被害を及ぼさないで済ませるだけの技
量はアクセスにはありませんでした。
「(トキならこんな相手、瞬時に方をつけられるんだろうな)」
攻撃の力そのものでは彼に負けるつもりはありませんでしたが、その精度につ
いては明らかに劣ることを自覚していたアクセス。
敵の攻撃力を考えると、警戒さえ怠らなければ負ける筈は無い弱敵。
無視して通り過ぎるのも一つの手ではありましたが、攻撃までされてそんなこ
とが出来るアクセスではありません。
直ぐに方をつける。そう決めると、ビルとビルの谷間へ向け、急降下して行き
ました。
●水無月ギャラクシーワールド・警備センター
「警戒部隊より警報! 天使1、ハマサカ駅方面より来襲しつつあり」
遊園地の各所を映し出すモニターが並び、何事かあれば直ぐに警備員に対応を
指示する通信設備が完備されている警備センター。
しかし現在、そこに座っているのは本来そこにいるべき人々ではありませんで
した。
本来、そこに座っているべき人々は、魔術により眠らされ縛られた上で倉庫に
転がされています。
「どうします? 大隊長殿?」
頬に傷を持った男が横に座っていた人間の姿をした者に話しかけました。
「御子と合流されると厄介だ。足止めを」
そう言うと、フィン旅団の第二大隊長──シンは、本来の魔族のみが理解出来
る言葉で何事か命令を発しました。
「我々は出なくて良いのですか?」
「あなた方はこの場所で必要とされていますから。ここは私達にお任せを」
そう言うとシンは立ち上がり、姿を消してしまうのでした。
●濱坂市中心部
攻撃は、人通りの少ない裏通りから放たれたもののようでした。
しかし予想通りというべきか、アクセスが地面近くまで降下した時には魔族の
気配は弱くなっていて、どこに敵がいるものか判らなくなっていました。
「(実体の無い悪魔か?)」
そうであるとすると、攻撃力は微弱であるものの捕捉が厄介。
そんなことを考えていると、今度は背中から攻撃を受けました。
「痛!」
障壁の展開が間に合わず、直接攻撃を喰らってしまったアクセス。
しかし、攻撃の威力自体が大したことが無いので、怪我らしい怪我もありませ
ん。
振り返り様に攻撃…しようとして、アクセスは思いとどまりました。
その方向は表通りであり、ヒトがひっきりなしに歩き回っていたからです。
仕方無く、今度は慎重に障壁を展開しながら表通りに向かってゆっくりと進ん
で行きました。
すると、今度は両横の建物の壁に潜んでいた魔族から直接攻撃を受けたのです。
「この…」
予め溜めてあった気で光球を急速展開、敵に向かって放とうとしたアクセス。
その方向には建物しか無く、ヒトを巻き込む心配は無い…と思いかけ、建物の
中にもヒトが居るのだという当たり前の事実を思い出しました。
しかし、一度作りだした光球は既に発射寸前。今更止めることは出来ません。
「糞っ!」
アクセスは毒づくと、発射直後に光球を自らの意志で炸裂させました。
ある程度調節していたとはいえ、それなりの威力。
爆風は通りに面していた建物のガラスを何枚か割り、アクセス自身も障壁毎壁
に叩き付けられました。
「痛たたたた…」
周辺の建物からは彼を嘲笑する笑い声が響きましたが、ヒトに危害を加えるこ
とが出来ないアクセスは、対処のしようがありません。
これが人通りの絶えた夜中であれば、建物毎消滅させるなり、手順は面倒です
が封印するという手もあるのです。
しかし白昼堂々、人混みの中で攻撃を受けた場合には、如何に天使達の力が魔
族を超越していたとしても打つ手が限られるのが実情でした。
「何だ何だ?」
先程の爆発に気づいたのでしょう。
ヒトがこの裏通りを覗き込み、割れた硝子に気づいて騒ぎ始めていました。
仕方無く、この場を一時退却することにしたアクセス。
上空高く舞い上がろうとして、何かにぶつかりました。
「何だこりゃ?」
ビルとビルの間には、何時の間にか結界が張られており、アクセスが上空へと
抜け出すことを阻んでいました。
*
トールンは音を建物の中で聞きました。
アンとエリスは、百貨店で服を何着も試着している最中。
女性向きの服ばかりが揃えられている売場には恥ずかしくていられなかった
トールンは、階段の側にある椅子に腰を下ろしてただじっと二人が買い物を終え
るのを待っていたのです。
そんな時、彼の耳に微かな爆発音が聞こえました。
続いて、魔族のものと思われる嘲笑の声。
後者の方は、ヒトには聞こえない筈でしたが、ヒトでは無いトールンの耳には
確かに届きました。
「何じゃ?」
そう呟き、立ち上がるとパタパタとアンとエリスもこちらに向け駆けて来るの
が見えました。
黒いワンピースとエプロン姿だったエリスは、いつの間にかデニム地のジャケ
ットに同じ素材のスカートという姿に変わっていて、手には紙袋を幾つも提げて
いました。
「今の聞こえた? トールン」
「はい。姫」
「こんな所でドンパチかよ」
「取りあえず外へ」
トールンが先頭に立って外に出ると、表通りから今いた建物の横に通じている
道の入り口に、人垣が出来ていました。
「あ!」
「何? エリス」
突然、叫び声を上げたエリス。
アンは彼女の見ている方向を見上げようとして、突然目を塞がれました。
「いけません、姫」
「何? 離して」
「いいえ。離しません」
「エリス! トールンを何とかして」
「良いけど…。大丈夫かな?」
「どういうこと?」
「天使がいる」
「天使? 本当なの?」
「本当です。1匹だけですが」
トールンが言うと、アンは小さく溜息をつきました。
「大丈夫よトールン。今更、天使位で驚いたりしないわ。ヒトの姿だったとは言
え、天使のレイさんやミナさんの前でも平気だった訳だし」
「それもそうだな。離してやれよトールン」
「お前に命令される言われは無いわい」
トールンが手を離すと、アンはエリスが見ている方角を注視しました。
つい最近、自分が暴走する切欠となった小さな天使の背中が見えました。
それをじっと注視していたアン。
そのまま飛び去るのかと思いきや、何故か天使がこちらを向きました。
「む…」
目が合ってしまったような気がして、トールンとエリスは顔を俯きました。
しかし、アンだけはその天使のことを見続けていました。
「アン!」
小声で、エリスが声をかけて来ました。
「……大丈夫。私は大丈夫だから」
「それは判ったから」
「向こうに気づかれます。お目を伏せて下さい」
トールンにまで言われ、アンは漸く視線を天使から外しました。
「どうやらここも安全な場所とは言えないようです。ノイン殿の館に戻りましょ
う」
「駄目よ。予定通り遊園地に行きましょう。エリスは作戦に参加する訳だし」
「エリスは一人で行かせれば宜しい」
「そうだよ。アンは…」
「仲間を置いて、私一人が安全な場所にいる訳にはいかない」
「姫…」
「さ、行きましょエリス」
トールンの承諾の言葉を待たず、アンはエリスの手を引きずんずんと先へと進
んで行き、仕方無くトールンも後を追いかけて行くのでした。
●濱坂市・水無月ギャラクシーワールド
「ああ、怖かった〜」
「でぃす」
音響ホラーハウスの中から、明るい声を響かせ出て来たツグミと全。
アトラクションの中でも何かある度に盛大な悲鳴を響かせていた二人なのです
が、弥白からするとわざと悲鳴を上げているようにしか思えません。
当の弥白と言えば、絶対に醜態を晒すまいという思いが強すぎたのか、そもそ
もこのアトラクションで何が起こったのかもろくろく覚えていない始末。
ただ、とても怖いものであったという記憶があるだけでした。
しかしこの面々の中で、もっとも恐怖を感じていたのは自分では無い。
そう弥白は確信していました。何故なら。
「そろそろ良いかしら?」
暗がりの建物の中から、陽光溢れる外へと出た頃、弥白は自分の隣にいる佳奈
子に声をかけました。
彼女はしっかりと弥白の腕にしがみついていて、その目はしっかりと瞑ってい
ました。
このホラーハウスの中ではあまり意味の無い行為ではあったのですが。
「あ、あのごめんなさい!」
顔を真っ赤にして、慌てて離れようとする佳奈子。
その肩に手を置き、弥白は佳奈子の髪をそっと撫でてやりました。
「や、弥白様」
「落ち着いた?」
「は、はい」
「ツグミさんを一人にしては駄目よ」
弥白が言うと、佳奈子は慌てて先に進むツグミの所に駆け寄って行きました。
「佳奈子お姉さん、熱でもあるんでぃすか? 顔が真っ赤でぃす」
そう全が言うと、益々佳奈子の顔は赤くなりました。
そんな彼女の表情をとても可愛らしく思う弥白なのでした。
(第172話・つづく)
なかなか話が進まない…。^^;;;;
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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