F.K.と申します.フォローが途切れたようなので,経済学には詳しくありません
が,昔読んだ記憶をたどって一言.

"Hiyama_J" <static_2003@writeme.com> wrote in message
news:3f2beb54$1_1@127.0.0.1...

> 以下の例は、私サイドで数字を使ってみたものです。解釈に間違いがあれば御
> 指摘ください。
> -------------------------------------------
> 生産物   アメリカ    ヨーロッパ
> -------------------------------------------
> 食料1単位 1時間分の労働 3時間分の労働
> 衣料1単位 2時間分の労働 4時間分の労働
>
>
>                    
>   (1時間あたりの単位 )
>     アメリカ   ヨーロッパ    合計
> -------------------------------------------------------
> 食料  1単位    1/3単位   (1+1/3)単位        
> -------------------------------------------------------  
> 衣料  1/2単位   1/4単位      (3/4)単位
> -------------------------------------------------------
>
> 【食料はアメリカが比較優位】
> ・アメリカは、衣料1単位分で食料2単位できる。
> ・ヨーロッパは、衣料1単位分で食料4/3単位できる。
>
> 【衣類はーロッパが比較優位】
> ・アメリカは、食料1単位分で衣料1/2単位できる。
> ・ヨーロッパは、食料1単位分で衣料料3/4単位できる。

ここのところ,例として正しいと思いますが,言葉遣いが少し違うのではないで
しょうか.「アメリカのヨーロッパとの関係において,食料が衣料に対して比較
優位」と言うのではないかと思います.比較されているのは,食料と衣料であっ
て,アメリカとヨーロッパではありませんから.


> なお、サムエルソンは他国多財間においても比較優位説が成り立つといってい
> る。[サムエルソン「経済学」(岩波書店)]

ここは「多国多財」のミスでしょうね.


> 1.ヘクシャー・オリーンの定理が、なぜ、比較優位の存在を証明してるのか
> ということです。

証明と言うよりも説明と言うべきでしょうが,生産要素(原料とか土地とか労働
力など)の量に起因するとしていると思います.


> 2.比較優位による自由貿易は、参加する国に対して、悪くても財の現状維
> 持、ふつうは財の増加を保障する定理なのに、どうして、保護貿易をとってた
> 米国の財が膨らみ、比較優位に基づいて貿易をしたポルトガルやスペインがな
> ぜ、英国との自由貿易でノックアウトされたのか、アイルランドは、なぜ、英
> 国と自由貿易でノックアウトされてしまったのか、ということです。

この定理が定数としているパラメタの範囲に制約があったと思います.つまりこ
の定理はいつでも成り立つわけではない.

また,食料とか衣料のような直接消費財でないもの,例えば機械のようなもの
は,パラメタそのものを変化させるので,定理が当てはまらないように思いま
す.特に,産業革命から工業化の時代ではこの要素は大きいでしょう.逆に現在
の先進国消費社会では,当てはまる度合いが大きいかもしれません.


> 3.自由貿易による商品の自由な移動が実現されていれば、投資による利潤率
> の、一定値への収束という経済法則が働く。帝国主義のような海外投資は、決
> して割の合う戦略ではない。にもかかわらず、現代においても、帝国主義では
> ないが、中国に投資するというのは、ヘクシャー・オリーンの定理のまえに、
> 意味のない投資をしているのではないか。商品の自由な移動が実現されていれ
> ば、投資による利潤率の、世界規模での一定値への収束という経済法則が働く
> なら、何も中国という外国に資本投下して高利潤を狙うなどという、ヘク
> シャー・オリーンの定理に反することはしなくてもよいのでは。

需要に違いがあるときは,確か,定理は成り立たないのではないでしょうか.

ところで,この定理のような静的な解を与える経済学は,長い時間の後の均衡点
を与えるので,現実の経済のダイナミクスに当てはめるのは無理があると思いま
す,裁定的な取引が想定できるすべての経済活動の利益率は平均利子率に漸近す
るでしょう.実際の経済活動の動機は,そこに漸近するまでのタイムラグの間に
利益を上げることにあると,私は考えています.だからこそ,企業は1つの製品
でいつまでも利益を上げることができず.絶えざる製品開発を市場から強制さ
れ,それらの総体が社会発展につながる,という点に資本主義市場経済の優位性
があるのではないでしょうか.中国投資にしても,割合短い間に利益を上げる心
算のものが少なくないと思います.

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