長島です。

いちおう、現行ルールの解釈って線では、
<bgbcun$9uk$2@newsl.dti.ne.jp>に書いておきました。

In article <bgb6ob$mjt$1@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>,
"Takachan" <takatsuka@k3.dion.ne.jp> wrote:

>審判の判定に基づくボールカウントは、法律用語で言うところの公知の事実に
>該当するのではないかと。

まぁ誰でもわかりきっていることなのは明白ゆえに
必ずしも審判の専権にしなくてもいいんじゃない?
というのは1つの意見だと思います。

ただ、(一般用語でなく)法律用語としての
「公知の事実」を採用していいのかどうかは考えちゃうところでもあります。
「公知の事実」って概念は主に訴訟法の分野で使われるものですが、
なぜそんな概念があるかというと、
「わざわざ当事者が証明しなくても裁判所はわかってますよ」
つまり、刑事訴訟でいうなら、あくまで裁判官が
犯罪事実を認定するための材料であることには
(公知でない)事実と変わらないわけです。
さらに、ある事実が公知の事実かどうかを判断するのもまた裁判官。

野球で裁判官にあたるのは誰かっていうと…審判なわけで。
そうすると、判断をあくまで審判に委ねる姿勢に変わりがなくても
そんなに不思議でない、って考え方もできちゃう。

>審判の判定の余地が無い具体的事実については、選手からの確認ぐらいは
>認めるよう規則を改正すべきだと思うのですがどうでしょう。

規則を改正すれば、そういう運用も不可能ではないとは思いますよ。
現行の野球規則は、もっと単純にできているってだけで。

法律の喩えが出てきたんで、もう少しこの喩えで話すと、
裁判も判定もその構造はいっしょで、
(1) 事実の認定 (2) ルール(法律)のあてはめ
の二段階構造をもっています。
(「要件」「効果」って言い方もするし、法律の世界だと
「事実問題」「法律問題」って言い方もします)

たとえば、
・投球が定められたある範囲内を通過した…(1)
・その投球をストライクとする…(2)
って感じ。

日本の裁判だと(1)(2)を裁判官が一緒にやってしまうし、
野球の判定はほとんどの場合(1)(2)を瞬時にやってしまうんで
いまいち判然としないところですけど、
たとえばアメリカの小陪審だと(1)=陪審員、(2)=職業裁判官と
役割が分かれているんで、この構造がつかみやすいかもしれません。

そうすると、公認野球規則9.02(a)と9.02(b)の違いは、
(1)については審判が最終
(2)についてのみ、監督が抗議できる
という分け方ができます。

で、この裏には、
(1)については絶対に正しいものを見分けられる者などいない
=だからこそ、誰かの言うことを信じることにして進めるしかない
(2)については事実が確定していれば答は1つのはず
=だからこそ、「正しくない」と指摘ができる
って思想があると思います。

この思想に基づくと、ボールカウントについて
「誰が見たって同じ答しか出ないはずだ」といえるとすれば、
必ずしも審判に判断を委ねる根拠がなくなるという考え方は
ありかも知れません。

…で、私はその思想を背景に、
ボールカウントは(2)相当かと思っていたけど、
「でもカウントはルールじゃなく事実の問題だよなぁ…
 なんかしっくりこないなぁ…」
自分で自分の考えに首をひねっていたところ。
ようやく、現行ルール上はこれも(1)相当だと理解できたところです。

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