イラク問題で、しばしば「テロリストの攻撃」という文言が使用されるが、あま
り吟味もすることなく、安易に「テロリスト」という言葉が使用されているよう
に思われる。
米英軍はイラク全土を制圧したことになっているが、考えてみると、イラク軍も
サダム・フセインも米英軍に降伏したわけではなく、休戦協定すら結ばれたわけ
ではなく、まして平和条約が結ばれたわけでもない。
ということは、理屈の上では未だ戦争状態ということで、イラク側から見れば戦
闘状態は継続中ということになるだろう。
正規軍による戦闘でない戦闘、という意味では、「テロ」というより「ゲリラ
戦」と呼ぶ方が正しいのではないだろうか。
「テロ」という用語の使用は、戦闘の実態を故意に矮小化し、大したことはな
い、ごく一部の人間によるつまらない行為のように見せかけようとする意図が背
後にあるように思われる。
米英軍は相手政府の抹殺をめざしたから、そもそもこの場合、休戦交渉をするに
も交渉相手が存在しないことになる。イラク側としては地下にもぐるしか手はな
いわけで、米英軍と交渉するということも出来ない。
米英軍のイラク攻撃は、日中戦争時の日本と中国の関係を連想させるものがある。
南京を占領した日本軍は、蒋介石政府は事実上壊滅したものとみなし、「国民政
府を対手とせず」と声明し、「新興支那政権の発展を期す」とした。
現在では、この近衛声明は、交渉相手を自ら否認する馬鹿げた声明だったという
ことになっているが、それと類似のことを米英軍がいまやっている。
当時、日本を非難していた米英が、今、かつて非難した日本の行為と似たことを
やっているというのは歴史の皮肉であろうか。