Yoshitaka Ikeda <ikeda@4bn.ne.jp> writes:

> Ishikawaさんの<3F35D094.B9D29380@yk.rim.or.jp>から
> >だけど、話題を拡散してすみませんが、純粋というか
> >一見応用がみつかってない分野の数学とかにつぎ込むための
> >研究費は Institute of Advanced Study みたいに、ほかの学問と
> >一所にあわせた研究機関で捻り出すしかないのかな。
> >京都大学の数理解析研究所とか法人化にともなって
> >どうなるのでしょう。
> >(300年位たったら応用に気付くような人もでてくる
> >分野もあるわけだし。)
> 
> 公開鍵暗号なんかは、フェルマーの小定理の応用だったりするので、
> 一概に、なにが無駄とは一言では言えないでしょうね。

300年位といえば、ヨーロッパの近代科学の黎明期ですね。

それまでも、ギリシア、インドにも科学はあったわけですが、
ヨーロッパの近代科学の特徴といえば、

1. アカデミー、科学雑誌など科学の成果を相互にやりとりし、数世代研究の
   蓄積が途切れることなくなされる社会システム作り上げたこと。これに対
   しギリシア数学では数十世代その意義を理解できないギャップがあった。
        
2. 基礎から応用までギャップのない知識体系作り上げたこと。解析力学が、
   17-18 世紀の日常生活にどう関係するか、すぐには答え難い点だが、航海
   術で天体観測から緯度、経度を出すため(摂動含めた)精密な天体運動の
   予測の需要あったことで関連はつく。
   だからといって、航海術の必要のため解析力学が発展したわけではないが、
   ギリシア数学のように基礎と応用が絶縁していたわけでもない。

3. しかしながら、本格的な科学技術の産業への応用は、産業革命も後半になっ
   たころである。電気の応用、熱力学を応用して熱機関の効率向上。
   さらに基礎科学への公的支出が膨らんだのは第2次世界大戦が大きい。
   原子爆弾もあるが、それ以前にレーダーとソナーの開発。
   数学に関連して暗号技術、コンピュータ(チューリング)もありますね。

   戦後、レーダーのマイクロ波技術開発の余波でテレビといった民生品、基
   礎科学へはラムシフトといったもの、他にメーザーもありました。
   
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過去の経験からして、科学技術の中でどれが役にたつ、たたないは、現世代だ
けで早急には決められないが(そもそもこの合意なくしては基礎科学への公的
資金の投入は考えられない)、どれが広範囲な関心を持たれるかにより資金配
分が左右されるぐらいはいえますかね。

あと、社会環境によって基礎科学へ投入される公的資金の割合は当然変化しま
すね。
長期的には基礎科学への社会の関心度によって、社会の経済成長力が左右され
る面があるかも知れない。
# 産業革命の後半での例のように。

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Kiyohide NOMURA
Department of Physics,
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