ども、みやこしです。

公式サイトでも告知されていますが、「福島県イギリス村ツアー」が催行決定
だそうで。
↓
http://www.emma-victorian.com/event.html

日帰りで3万円弱、というのが辛いです。東京近郊に住んでいれば参加する所
ですが…(^_^;
東京駅まで往復する方が、ツアーそのものより時間もお金もかかりそう(実際
はそこまでお金はかかりませんが)。
#せめて集合が9時なら…。

「英國戀物語エマ」第九章「ひとり」

■葬儀
 教会の墓地で、しめやかにとり行われている先生の葬儀。参列者は、エマ、
アル、アルのカード仲間の四人だけ。先生の晩年が、非常に孤独であった事を
窺わせる場面です。
 その生涯の最後に、エマという「生徒」を得た事は、先生にとって何より幸
福な事であったと思われます。
 小鳥が舞う空をエマが見上げているのは、空に還った先生の魂を思っている
のか、この場にいない誰かの事を思っているのか。

■晩餐会にむけて
 一方、先生の死を知らされていない様子の坊っちゃまは、晩餐会の準備に追
われています。

 これは、第七章で、父リチャードがエレノア嬢にエスコートを申し入れた件
ですね。
前回、父に完全にやり込められたせいか、「弱みを見せたくない」為に出席す
る事にしたようですが、それがかえって事態をややこしくしそうな感じです。
ハキムが揚げ足を取るような事を言ったり、エレノア嬢が坊っちゃまに惚れて
いる事を再認識させたりしているのも、坊っちゃまに注意を促しているのかも
しれません。

 それはともかく、ハキム・ガールズの無言の連携は、相変わらず見ていて可
笑しいです。
と言うか、坊っちゃま、身支度ぐらい一人でしろよ、と(^_^;

 また一方、アニーさんにコルセットを締め上げてもらっているエレノア嬢。
何というか…やってる事はただの着付けなんですが、艶かしい場面です(^_^;

アニーさんがやっているような、コルセットを足で押さえながら締めるやり方
というのは、原作でも何度か出てきますが、原作者様も大変お好きなようで。
ただ、エレノア嬢については、原作では今のところ無かったので、これを機会
にと、アニメでやってしまったのではないかという気が(^_^;

 ちなみに、ここまでの場面はオリジナルです。

■後片付け
 自室で、一人回想に耽るエマ。回想しているのは、初めて先生の家に来て、
自分の部屋を与えられた時の事です。
#第五章でちょっとだけ出てきましたね。
「狭くて古い」と先生が言うのも気にせず、嬉しそうにしている小エマが可愛
い(^_^)

 そこに訪ねてくるアル。家具なんかの片づけを引き受けている辺りは原作通
りですが、坊っちゃまに連絡云々と言う辺りはオリジナルです。前回で、先生
にエマの事を頼まれる場面を明示的に入れた事を受けての改変でしょう。

 アルを見送ったあと、一人黙々と家の中を片付けて回るエマ。キッチンを磨
き、ランプの油を抜いて、洗濯紐を片付け、飾ってあった写真を丁寧に紙で包
んで仕舞う。掃除をしながら、想像の中の先生に返事をしてしまうのは、未だ
先生の死を実感できていないからでしょうか。

 この場面、原作でも台詞やモノローグが一切無く、エマが後片付けをしてい
く様子がひたすら描かれていくのですが、最早話す相手がいない家の中で、一
人立ち働くエマの様子が、何とも言えない寂寥感を醸し出しています。
 また、エマが最後に手に取った坊っちゃまの写真をどうしたのかを見せない
のも、にくい演出です。他の写真と一緒に仕舞ってしまったのか、それとも…
と想像するのもまた楽しい。
#エマの性格からすると、先生のものだから、という事で一緒に仕舞うという
#方が可能性が高そうですが。

■晩餐会のエレノア
 さて、晩餐会にやって来た坊っちゃまとエレノア嬢。エレノア嬢は、坊っち
ゃまの機嫌が悪そうなのを、自分のせいかと危惧している様子。さすがに、坊
っちゃまもその辺は気を遣って、以後は表情を柔らかくするように努めている
感じです。
 海ガメのスープを見て、
「海ガメって料理されても水の中なんですのね」
などと、いささかズレた感想を述べるエレノア嬢がまた可愛い(^_^)

 この晩餐会の様子は、ほぼ原作通り。原作では招待客だったメルヴィル氏が
主催者になってるとか(原作では主催者の名前は不明)、会話の内容が若干省
略されてるとか、ぐらいの違いです。ただ、男女の左右が、原作と全部逆にな
っているのはちょっと気になる所。本作では、構図なども結構原作に合わせて
いる事が多いので、位置をわざわざ変えているのには何らかの意図が入ってい
ると思われます。
#こちらの方が正式なのか?

 戦場と化しているキッチンで、鴨の焼き具合を見て、
「んー、完璧。さすが私」
と、みょーに自信満々なキッチンメイドがいるのも原作通り。この人、名前は
ありませんが、言ってる内容は重要です。

 一応、会話が弾んでいるように見える、エレノア嬢と坊っちゃま。
「家の伝統に恥ずかしくない振舞いをなさいって。お母様って、二言目には伝
 統、伝統って言うんだもの」
「伝統は、確かに大切だと思います。長い間受け継がれるには、それなりの理
 由があるのでしょう。でも、守る為だけに守る伝統は、僕は嫌いです。それ
 じゃ固執だ」
 エレノア嬢が何気なく言った言葉に、語気をややきつくしてしまう坊っちゃ
まも原作通り。
 まあ気持ちは判らなくもないですが、エレノア嬢に言ってもしょうがないで
すね。
 ここで、エレノア嬢が憂いた表情のまま場面が終わってますが、原作では、
坊っちゃまのフォローがもうちょっとあって、エレノア嬢が笑顔に戻って終わ
ってます。この辺りの、エレノア嬢の心情の描写の違いは結構大きいような感
じがするのですが、さて。

 一方、一人で質素な夕食をとるエマ。坊っちゃま達が出席している、華やか
で豪華な晩餐会との対比といった構図は、本作では度々出てきたものです。
 ご飯を貰いに来た猫に、お別れを言うエマは原作通り。猫が喉を鳴らしたり、
ミルクを舐めたりする音なんかも細かいです。

 やがて、晩餐会も終わりに近づきました。
 ある紳士が、エレノア嬢と坊っちゃまとを恋人同士と勘違いしたのを、父リ
チャードが訂正したと思いきや、
「もっとも、私はそうなってくれればよいと思っておりますが」
 などと、すかさず外堀を埋めるかのような発言をするのも原作通り。さすが
父、たまたま出た会話さえすかさず利用する辺り、抜かりはありません。坊っ
ちゃまも、こういう場所で正面切って父の言葉を否定する訳にはいかないでし
ょうし。

 女性達が別室に移ってからの、エレノア嬢とグレイスとの会話も、大体原作
通りですが、エレノア嬢が、坊っちゃまに好きな人がいるかしら、と言うのは
オリジナルです。この台詞が入っている為、原作では無邪気な感じにしか見え
ない所が、やや大人っぽく見えてます。
 そのせいか、グレイスの気苦労も、原作より増えているような感じがします
が(^_^;

 その後、温室で休んでいる所で、坊っちゃまが打ち明け話をしようとするの
を遮って、先に帰ってしまう所もオリジナルです。

 この、エレノア嬢に関する一連のオリジナル部分を見ていくと、エレノア嬢
のキャラに対する、原作とアニメとの差が浮き出てきます。原作のエレノア嬢
は、本当にまだまだ「少女」といった感じで、坊っちゃまの内心には気付かず
に、その言動に一喜一憂しているような所があるのですが、アニメでは、そこ
まで「子供」ではないように見えます。その分、坊っちゃまとの事はより深刻
になる気がするのですが、さてどうなりますか。

 晩餐会の終了後、キッチンでメイドさん達がしている会話の内容は原作通り。
例の自信満々な人がまたまた登場です。
「料理人といえど、味で貴族様を感動させる事ができたその一瞬はね、対等に
 なれるのよ」
 なかなか含蓄のある言葉ですが、これが、エマと坊っちゃまとの間にある障
壁を乗り越えるヒントになるのかどうか、現時点ではまだ判りません。
 晩餐会の、ひいては主人の社交界での成功をも左右する料理人だからこその
台詞とも思えますが…。

 帰りの馬車の中で、晩餐会での父の発言に抗議する坊っちゃまも原作通り。
ただ、
「子供じみた情熱だけで言ってるんじゃありません。父さんの言う、ジョーン
 ズ家を背負う責任だって、僕なりに考えています」
 と言うくだりはオリジナルですが。
 でもこれ、「本当に考えてるのか?」と思わずツッコミ入れたくなりますが(^_^;
エマとの仲と、家に対する責任とを両立できる方法なんてあるのかどうか。
父と兄とが対立している横で、友人でもあるエレノア嬢の事も考えなければな
らないグレイスが可哀相です。本当に気苦労が多そう(^_^;

■ひとり
 深夜、蛇口から滴る水の音で目を覚ましたエマ。蛇口を締め直してから、自
室に戻らず、居間で暖炉に火を入れます。赤々と燃える暖炉を見つめるエマの
目に、じわじわと涙が溢れ、独りになった事を実感して泣き出してしまいます。

 台所の水音まで響く静まり返った家の中。遠くから聞こえる犬の吼え声。誰
もいない居間で、そこだけ明るく暖かい暖炉の前で小さくうずくまるエマの後
ろ姿。これでもか、というぐらい、エマの孤独な様子が描かれる場面です。原
作では、僅かにエマのモノローグが入るのですが、それさえも排して、画と音
だけでエマの孤独を描写する演出は、さすがという感じです。

 エンディングの後、あの猫が、別の家にご飯を貰いに行く場面は、原作の
「Sequel」から。第一章以来、ずっと先生の家に来ていた馴染みの猫も新しい
家を見つけた今、エマは本当に独りになってしまうのかと気をもみつつ、続き
は次回。

■次回予告
 第十章「すれ違い」。
 予告の映像を見ると、何か父リチャードとエマとの直接対決か!?みたいな雰
囲気ですが、果たして。
 次回の演出は、第五章の演出も手掛けた、金澤洪充氏だそうで、また氏のブ
ログで裏話などが読めるそうなので、そちらも楽しみにしています。

■全体をみて
 今回は、原作単行本第2巻の第十話と第十一話を合わせています。エマのパ
ートが第十話、坊っちゃまのパートが第十一話と、別れている二つの話を平行
して交互に描く形とし、若干のオリジナル部分を追加して構成してあります。
 原作第十話は、24頁中14頁に台詞もモノローグも一切無いという、アニメに
すると作画が泣きそうな話なのですが(何せ、口パクで枚数を稼ぐ事ができな
い)、晩餐会の話と合わせて上手く纏めてきたと思います。まあ、晩餐会の場
面も、人は多いわ、ものを食べる芝居は描くのが難しそうだわで、やっぱり作
画泣かせだと思いますが(^_^;
 オリジナルの場面は、エレノア嬢に関する部分が多かったように思います。
原作では、次にエレノア嬢が登場するのは、単行本第3巻まで待たねばならず、
もし原作通りの展開で1クールで終了すると、エレノア嬢は今回で退場になっ
てしまいます。まさかそんな事をするとは思えませんので、何か構成を考えて
いるでしょう。今回のオリジナル場面も、その為の布石であろうと思われます。
 物語も、あっちもこっちも大変で、果たして収拾がつくのかという感じにな
ってきましたが、ここは監督の構成力に期待したい所です。

では。

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宮越 和史@大阪在住(アドレスから_NOSPAMは抜いてください)
BGM : ループ by 坂本真綾