Thu, 17 Mar 2005 21:06:55 +0900,
in the message, <423972e0$0$19077$44c9b20d@news3.asahi-net.or.jp>,
himtkitk <himtkitk@insat.rnu.tn> wrote
>明らかな、刑法犯ですね。

実は、「明らか」ではなかったのではありますが。

>使うと詐欺罪になると聞いていましたが、、、

それは欺罔されてます。:-)

テレホンカード式電話機で偽造(ないし変造)テレカを使用しても、電話機は
機械であり機械相手に詐欺罪は成立しません。
電話局で電話料金の支払いのために「人間相手に」使用すれば別ですが。

# 自動改札でキセル乗車をしても詐欺罪にはならない。
 鉄道営業法違反にはなる。
 ATMで偽造キャッシュカードを使用しても窃盗罪にはなるが詐欺罪にはなら
 ない。
 自販機で偽造通貨を使用しても詐欺罪にはならない。
 理論的には窃盗罪
 (もっとも詐欺罪と偽造通貨行使罪とは吸収関係というのが判例通説
  なので、自販機使用の場合の窃盗罪でも同じと解すべきではある。)。

もともと、有価証券でなくても電磁的記録不正作出罪および不正電磁的記録供
用罪でテレカの偽造(変造)と使用は処罰できなくはない(キャッシュカード
とかの偽造はこちらで対応していたはず。)ので、有価証券性の問題は結局は
「交付」を処罰するための話。

もっともそれでも、券面に何の記載もないいわゆるホワイトカードは野放し
だったりして穴を埋めるために平成13年に法改正したわけですが
(で、ついでに(?)所持も処罰対象にしたと。)。


ちなみに、一般人をして真正な有価証券と誤認させるに足る外観を備えること
が必要で、露骨にいんちきなカードであれば有価証券偽造(変造)には当らな
いというのが名古屋地判平成5年4月22日(電磁的記録不正作出罪で処断し
た。)なので、「テレホンカードを不正に改竄するのが有価証券偽造罪になる
とは限らない」ので念のため
(まあ簡単に言えば、テレカの偽造は何罪になりますか?と言われたら、
 色々ありうるということ。)。
この点、前田先生は「ちょっと変だなと思う程度なら偽造(変造)に当る」と
していますが。

ところで、大雑把に言うと「残度数のあるものはそのままでも一応使えるので
書換えるのは変造、残度数のなくなったものは既にただの紙(?)切れなので
書換えるのは偽造」と解するのが通説の先。
しかし、実務上は残度数が残っていたかどうかは判らないこともあるので変造
で処理することが多い様子
(テレカの場合はパンチ穴で判るはずだが。)。

なお、電磁的記録不正作出罪と有価証券偽造(変造)罪と支払用カード電磁的
記録不正作出罪の罪数関係がどうなるのかはよく判らん。
多分特別関係なのだとは思う(支払用カード電磁的記録不正作出罪が他の二罪
の特別規定じゃないかな。)。

ただ、有証偽造と支払カード電磁的記録不正作出とでは保護法益が異なるので
数罪となるのかもしれない。

ここで、カードの社会的信頼を保護する必要がある場合なお文書偽造となりう
るとする説もある。
つまり、例えば電磁的記録を改竄「せず」に券面の記載のみを高額プリペイド
カードのものに書換えて金券屋に売るとかいう場合は、有証偽造罪および変造
有価証券行使罪となりうる。

とすれば、両方書き換えた場合、偽造と不正作出の両罪が成立し観念的競合と
なると考えることもできよう。

なお、判例の一体説を採ると、磁気情報の書換えと券面の書換えは等価であ
り、まとめて一つの偽造(変造)行為と考えるのだと思う。

-- 
SUZUKI Wataru
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