At Sun, 14 Nov 2004 00:24:20 +0900,
in the message, <20041114002420cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote
>>> もし交通事故を起こしていたら、不問には付されなかっただ
>>> ろうと思います。(これは法律の素人である私の想像です。)
>>
>>その通りです。
>
>そうはなりません。
>構成要件に該当する行為(及び結果)があっても
>違法性を阻却するんだから
>結果の発生の有無は結論を左右しません。
>(追跡したのが警察官と置き換えてみるといいでしょう。)

これは読み方の問題ではありますが、結果の発生の有無によって違法性阻却の
可否が決るという意味ではなく、「当該具体的」追跡行為が(携帯電話使用も
含めて)結果を発生させるような態様であったことが正当行為と言えるかどう
かの判断資料となるという意味と考えれば、事故を起すような「当該具体的」
態様の追跡行為は手段として相当性を欠き当該行為が構成する犯罪につき違法
性を阻却しないということはあり得ます。

# 私はそういう意味だと読みましたが、確かに、単に結果の有無によって決る
 と言っているようにも読める。
 と言うか、多分、少なくとも元投稿は区別してないんじゃないかな。
 なお、もう一つの読み方も可能。
 それは、「事故を起したときに責任を問われる」その責任とは、「運転中の
 携帯電話使用」に限らず「何らかの法律上の責任」と読むこと。
 これはかなりこじつけになってくるのですが、「まったく法律を意識してい
 ない」場合には、漠然とながらこのように考えていることが多いと経験的に
 言える
 (実際、あながち外れてもいないと思う。)。
 即ち、そこで問題となる責任は「交通事故それ自体の責任」であってもい 
 い。
 従って、事故を起したときに「さすがに事故の責任までは不問にはならな
 い」という意味と読むことができる。
 無論それでも、「携帯電話使用が事故の唯一の原因」であったならば、携帯
 電話使用が正当化される限りにおいて過失がないから事故の責任もまた否定
 される。
 もっとも大概は、「その状況下においては携帯電話の使用を中止すべきで
 あった」となることが多いと思うけどね。
 自動車の運転状況は刻々変るのであって、ある状況では携帯電話使用による
 犯人追尾が適法でもある状況では違法ということはありうる。
 法令行為とか正当「業務」行為に当る場合は類型的で比較的判りやすいが、
 それすらも最終的にはあくまでも「個別具体的な状況によって決る」。
 まして一般的な正当行為のような非類型的正当化事由はますます「個別具体
 的な状況によって決る」。

警察官であっても無謀な追跡で事故を起せば、手段の相当性を逸脱しているの
で法令行為として違法性を阻却しない、ということがあり得るのと同じです。

無論これは、単純に結果が生じたからではなく結果を生じるような態様だった
からということ。
だから裏を返せば、結果を生じなくても態様が相当でないと言えるのなら同じ
こと。
また、結果を生じても態様が相当と言える限り違法性を阻却する。
もっともこれは一応理屈上の話で、実際には結果が生じない限り問題とはなら
ないとは思いますが
(と言うか、現に結果を生じていないにも拘らず結果を生じるような態様だっ
 たと言えるのか?というのが問題。)。

なおついでに言えば成立する犯罪が結果犯(除、未遂犯)の場合は、結果が生
じない限り問題とならないのは理の当然。
だって構成要件に該当しないんだから違法性阻却事由なんて問題になりようが
ない。

ちなみに、携帯電話使用が事故と無関係なら当然携帯電話使用は問題にならな
い。

>刑法35条や37条不該当で、単に起訴裁量主義の結果として
>起訴されなかったってだけなら
>確かに結果の有無で変わる可能性は出てきますが
>そうすると
>「たとえ犯人を捕まえるためであっても運転中は携帯電話を使うな」
>というルールが存在していることを前提にするところ
>そういうルールが存在しているなら
>逆に「結果が発生していない」ことで
>起訴猶予にする理由に欠けることになります。

それ以前に、交通反則通告制度の適用のある今回の違反については、警察官が
切符を切るかどうかだけの問題です。
切符を切ったが反則金の支払を拒否して通常手続に移行したが検察官が不起訴
にしたって話じゃない。
であれば、起訴裁量の問題として論じるのは不適当です。

# そして切らなかった理由が本件においては政策的配慮によるものと考えるの
 は別投稿の通り。
 切らなかったのが法令上の具体的な根拠のある行為かどうかは、不明。


以下、おまけの一般論。

人身事故を起したのであれば業過致死傷罪になればその原因となった道交法違
反行為は交通反則通告制度の適用除外となり、起訴裁量の問題となります。
もっとも、例えば飲酒運転で人身事故を起しても、飲酒運転が業過致死傷罪と
併合罪となる(=法定刑が変る)にもかかわらず不起訴となることはよくあり
ます
(例の危険運転致死傷罪創設の契機となった事故を起したドライバーは飲酒
 運転は不起訴になっているはずです。)。
まして、法定刑の変らない科刑上一罪の場合は、犯情に特に影響しない限り、
起訴しなくても不思議ではないと思います
(もう一つの目的として審理を速くするために中心的犯罪のみを起訴すると
 いうこともある。
 オウム事件は百を超える罪状のうち、不起訴だけでなく途中での起訴取下げ
 も含めてかなり絞ったはず。)。

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SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp