# 引用順序は適宜変更します。

鴻池さん:
>>S+_n, S-_n はどのような意味で使っておられるのでしょうか?
>   n
>   Σ |a_k| = S+_n  { |a_k|でa_kが正のものだけ抜き取った部分級数}
>   k=1
>    n
>   Σ |a_k| = S-_n { |a_k|でa_kが負のものだけ抜き取った部分級数}
>   k=1
> という意味で使用しました。

わかりました。
ただ前に書きましたように、「級数 (series)」という語は無限級数に
対して使うのが一般的で、有限数列の和(の式)には言わないと思う。
だから「部分級数」という言葉は「正であるすべての a_k からなる級数」、
「負であるすべての a_k からなる級数」と読めます。
 # うるさいことを言えば、正の項、負の項はそれぞれ無限にあるとは限らず、
 # 有限個しかない(さらには1つもない)場合もあります。
 # もっともそういった場合までいちいち(無限)級数かそうでないかを
 # 場合わけするのでは面倒なだけ。

なお絶対値記号を使えば S+_n, S-_n は数式で表せます:
 S+_n = Σ_{k=1 to n} (|a_k|+a_k)/2
 S-_n = Σ_{k=1 to n} (|a_k|-a_k)/2

>>S-_n は -(S-_n) ですね。
> 
> ということで,S+_n及びS-_n は常に正となるので,−は不要と考えました。

最初に書かれた:
> a_nが負であるものだけを取り出した部分級数をS-_nとすれば

からは S-_n は負の a_n (a_k) の和、つまり負(非正)に読めます。
また:
> Σa_n = S+_n + S-_n なので,Σa_n も収束する。は,
> Σa_n = S+_n - S-_n
> の書き間違いです。

これとの不整合もありました。

> で,Σa_n は, Σ{n=1 to n} a_n の意味で使用しています。

これだと和の上端の n と添え字変数の n との区別がつきませんよね。
積分だと:
  x
 ∫ f(x) dx
  a
みたいな書き方は普通にしてしまいますが、総和の場合には見かけません。
もっとも積分の場合でも、被積分関数の中に上端の変数が入ってくると:
  x
 ∫ f(x-t) dt
  a
のように積分変数を書き換えないとわけがわからなくなってしまいます。

> Σ|a_n|の収束値がAとすれば,S+_n < A  及び S-_n < A ということを
> 言いたかったんですが。

OK

>>>Σa_n = S+_n - S-_n なので,Σa_n も収束する。
>>>
>>>最後の行はどうしてかと問われたら,ちょっと困るけど。

第 n 項までの部分和を S_n とすれば、上が言っているのは
  S_n = S+_n - S-_n
です。
こうしておいて、出自が級数(数列の和)であることは忘れてしまって、
数列 S_n, S+_n, S-_n の間の収束関係、具体的には差の極限公式の適用
として考えればいいわけです。

なおちょっと注意が必要な点として、次の解答は似て非なるものです:
 「Σ|a_n| は収束するから、S+_n, S-_n は収束する。
  そこで lim S+_n = P, lim S-_n = M とすれば、
  Σ|a_n| = P+M であり、一方 Σa_n = P-M だから Σa_n も収束する。」

問題:鴻池さんの解答とどこに違いがあるでしょう?

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蛇足

一般に Σa_n は収束するが Σ|a_n| は発散する場合、
級数 Σa_n = a_1 + a_2 + ... + a_n + ...
は「条件収束する」と言います。

数列 { a_n } からなる級数 Σa_n が条件収束するとき、
次のことを示してください。
1) lim a_n = 0(これは収束級数ならいつでも成り立つ)

2) S+_n, S-_n を鴻池さんの定義通りとするとき:
  lim S+_n = ∞、lim S-_n = ∞
  
3) 各項の和をとる順番を変更した
  Σ a_{p_n} = a_{p_1} + a_{p_2} + ... + a_{p_n} + ...
 を考えます。ただし p_1, p_1, ..., p_n, ... は
 1, 2, ..., n, ... の並べ替えです。
 このとき、任意の実数 c に対し、適当な並べ替え { p_n } を行えば:
  Σ a_{p_n} = c
 とできる。
 つまり条件収束級数は、和をとる順番を変えることで任意の
 値に収束させることができる。
 (さらには±∞に発散させたりもできる。)

(平賀@筑波大)