刑法上の一要件としての構成要件(Re: 構成要件という言葉の疑問)
少々説明が不充分なので、「まともに読む気のある人向けの」:-P補足説明。
例えば刑法6条。
(1)犯罪後に刑の変更があった。
(2)変更後の刑の方が軽い。
という二つの要件を充たすと、
・裁判時に後法を適用する。
という効果が発生します。
しかし、この(1)(2)は刑法上の要件であっても「構成要件」ではありません。
もっと適当なのは、刑法36条1項、39条1項。
正当防衛になればあるいは心神喪失であれば、犯罪が成立しませんが、正当防
衛の成立要件あるいは心神喪失であったという要件は「構成要件」ではありま
せん。
……違法性阻却事由、責任阻却事由が構成要件のわきゃねぇな。
つまり、刑法上の要件はすべてが構成要件であるわけではありません。
刑法においては、他の法律との関係どころか同じ法律の中ですら、構成要件を
構成要件でない他の要件とは区別しています
(と言うか、区別したからこそ「構成要件」とわざわざ名前が付いているのだ
が。
そして、この区別することこそが構成要件論だというのが前回の投稿。)。
……もうこの段階で「構成要件は理論上、他の要件とは区別した扱いになって
いる」というのが明らかですな。
# 誤解を恐れずに言えば、構成要件というのは、刑法上の要件の内の一部の要
件に対して、犯罪論理論上の便宜としてつけた名前。
この「(犯罪成立)要件の内一定のものを構成要件として(他の犯罪成立要件
と)区別した」ということが構成要件論の肝なわけです。
犯罪成立要件の内の違法性・責任に関する要件(あるいは犯罪成立要件以外の
例えば刑法の適用に関する要件など)と構成要件とを区別しないと構成要件論
は成り立たないのです。
区別するのが構成要件論なのだから区別しないなら構成要件論は成り立たな
いと。
もし、この「区別する」ことがおかしいというならそれは構成要件論を否定す
るということに他なりません。
否定したければするのは勝手だけど、それは日本国における刑法学の主流とは
まったく相容れないと
(日本国刑法典自体、ドイツ刑法の系譜なので構成要件論の影響を受けている
とは思うけどね。
まあだけど構成要件論以外の理論体系で読むことは可能だから別に大した問
題じゃない)。
# 仮に自分が構成要件論を否定するとしても、構成要件論に立脚した他人の書
いた教科書の記述を「構成要件をあまりに大げさに捉えすぎ」などと言うの
は的外れもいいところ。
構成要件論を採用する著者の記述を構成要件論を否定する立場から読み解く
のがそもそもおかしい。
言い換えれば、一定の立場からの記述を他の立場からの記述として評価する
のが大間違い。
……ちなみにだ、構成要件も又「法律上の要件」である以上、その意味におい
て他の法律における要件(あるいは刑法の構成要件以外の要件)と同じ「要件
である」というのは間違いじゃぁありません。
って言うか、「当り前」です。
だけど、それは「どちらも、法律上の効果を発生させる条件」という意味で
「同じ」だけであってそれ以上でもそれ以下でもないです
(法律が突き詰めれば要件と効果から成り立つ以上、「要件」はすべて等しく
「要件」に決ってる。
だけど、それはそれだけのこと。)。
つまり、「構成要件も又、他の法律における要件同様法律上の要件の一つであ
る」というのはその通りだけどそれを述べたところで当り前すぎて「何の意味
もない」ということ。
# もしその点を捉えてあーだこーだ言っているのなら、言ってみたところで大
して意味のない事を「あまりにも」「大げさに捉えている」だけのこと。
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SUZUKI Wataru
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