河野真治 @ 琉球大学情報工学です。

ファインマン・レクチャーは、Caltech (カルフォルニア工科大学)
のファインマン先生の講義録です。わかりやすい。何だが、物理
の教程としては異質。なので教科書としては使えません。問題は
ファインマンが計算力がありすぎること。なので、計算をわざと
避けている講義なんだよね。

中学高校では物理は「F=ma」つまり、力を基本とするニュートン
流の力学を教えるのだけど、それは、現代的には、まったく時代
遅れ。量子力学的には間違っているし、相対論的には不変量でさ
えない。間違っているもの教えるから、理解できるはずない。

なので、ファインマンレクチャーも、ランダウ先生とリフシッツ
先生の力学の本も、F=m a なんて、出て来ません。当然です。
ファンマンの方は作用中心で、ランダウはラグラジアン中心。

でも、量子力学に必要なのは、作用でもラグラジアンでもなくて、
ハミルトニアン。これは、エネルギーに直接対応したものなので
理解しやすいです。例えば、運動のハミルトニアンは、1/2 mv^2 。
これを一回微分すると、 mvで運動量が出て来て、もう一回微分す
ると ma が出て来る。なので、これしかなければ、ma=0 で、自動
的に「粒子だけだったら、加速度0の慣性運動」ってのが出て来る。
便利だ〜

F-ma が理解しやすいと感じるのは、アリストテレス流の「押して
いる間、物体は動く」という「力」という概念が残っているから
だと思う。実は、F は、人間の感覚てきな力とは全然違うのに。
そういう「だめだめな実感に基づいた推論」を排することが、力
学を学ぶことなのに... 

高校の物理と数学自体を、ハミルトニアンを理解するために再構
成するべきだと僕は思う。その方が、実は、対称性を利用した問
題解法を優先できるので「微分を先に教えない」という中学高校
の方針とも整合性があると思う。ハミルトニアンの主張は、実は、
「物体の動きは力学系の状態で一意に決る」 というだけだし。

ラグラジアンとか作用が二次の微分方程式なのに比べて、ハミル
トニアンは一次の微分方程式なので、その分、計算がやさしいし。
ハミルトニアンだったら、「量子力学を学ぶための解析力学入門」

    http://tinyurl.com/ywh6h7

これがお勧めの入門書だと思う。

で、計算力が付くと、ランダウ・リフシッツは面白いです。逆に
ファインマン・レクチャーは計算が出て来ないのでつまらない。

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Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科