青龍 wrote:
>  日本で、沖縄戦や広島・長崎への原爆投下、各地での空襲についての被害の記
> 憶が未だ語り継がれていることを考えれば。

で、この「記憶」というやつを日本政府がないがしろにすると、国民の反発を招
くのと同様に、

> 同様に、中国でも日本の侵略による被
> 害の記憶が語り継がれていることは容易に想像出来るでしょう。どちらも被害の記
> 憶は現実の痛みとして残っているのです。

中国政府もこの「記憶」を尊重しないと国政が立ち行かないわけですね。

で、問題は、国内の国民感情に配慮しつつ、なおかつ冷静に事実を調査して、そ
の「事実」をおたがいの国民に理解させることなんですが、中国政府にとっては
そんな配慮は大きなおせわでしょう。

なにしろ、中国政府は、日本をスケープゴートに使って国民をまとめることの利
便性をそう簡単に手放せないわけです。国民が「日本鬼子」とか「魚釣島」とか
さわいでいる間は、民族間のいさかいや貧富の差による政府への不満は一時的に
お休みになりますから、政府としてはこれに代わる便利なものが見つからないう
ちは、とりたてて、日本との「相互理解」を推進する理由もないわけです。

さらに、中国が今後台湾をどうするかと考えたときに、魚釣島の領有権は中国政
府にとって、戦略的にもゆずれない要素のひとつなわけですが、この島の領有権
の主張を国民の間で感情的に盛り上げておくためには、これを過去の日本の侵略
の記憶とからめておくのが一番効果的でもあります。

# むろん、中国政府が大っぴらに反日感情を煽れば国際問題になりますから、
# 中国政府としては、国民の反日感情が盛り上がるとそれを一定期間ほった
# らかしにする、という消極的な方法でこれを利用するわけですが。

したがって、

>  このような被害感情を無視して相手の批判を難癖だと決めつけるのでは、相互の
> 理解や歩み寄りは不可能になるでしょう。

これは正論ですが、中国政府の立場からすると、日本国民がこれを「難癖だと決
めつける」かどうかは、政治的には実はどうでもいいことで、むしろ本音として
は「理解や歩み寄り」を積極的に推進する理由はないわけです。

だからこそ、と言っちゃなんですが、

>  どうも、最近の論調を見ていると、反中国感情を煽り立て、中国の批判なんか無視
> しろという主張が目立ちます。このような一方的な敵視は、当然相手方の反発を招き
> 悪意の連鎖につながっていくのではないでしょうか。

そういう意味では、この「反中国感情を煽り立て、中国の批判なんか無視しろと
いう主張」は、むしろ、中国政府を利するものであって、中国からすると望むと
ころなわけです。

ということは、逆に青龍さんのような主張がまともに実現することは、中国政府
を苦しめることになるわけです。もちろん、青龍さんとしては、政府の都合なん
かくそくらえですよね;-)


萩原@グリフィス大学