佐々木将人@函館 です。

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On 3月18日, 午後4:13, 柏崎 礼生 <reo.kashiwaz...@gmail.com> wrote:
> 権利の侵害が発生するのはどの時点なのか、ということがよく分からない
> でいます。

権利の侵害となる行為をした時点なのが原則です。
精密な議論をするのであればこれでも大雑把すぎるのですが
柏崎さんの疑問としていることを解消するためであれば
この程度の粗さの定義で大丈夫だと思います。

誤解してはいけないのが
「侵害された者が侵害を認識した時点……ではない。」
というところです。

> 著作権の侵害は、訴えられ判決が出て初めて「侵害」という事実が (侵害した時点まで遡って) 成立するのか、

これはありません。
訴訟というものは「既に発生消滅している権利義務」の有無を争うものです。
権利義務が訴訟の中でもしくは訴訟の結果で発生消滅するものではありません。
実を言うと訴訟の中で権利義務が発生消滅する類の「形成訴訟」という類型はありますが
形成訴訟を独立の類型として論じるくらいですから
特別のものなのです。

> 例えば著作物を公衆送信可能な状態に置いた時点で「侵害」という事実が成立するの
> かが分かっていません。

著作権法23条は
「著作者は,その著作物について,公衆送信可能化を行う権利を専有する」としていますから
著作者以外の者は公衆送信可能化を行う権利を有していないわけで
にもかかわらす公衆送信化を行えば,
「その時点で」
著作者の公衆送信可能化を行う権利を侵害しています。
※個人的には「侵害」を「事実」としない方がわかりやすいと思いますが……。

> 権利の侵害は司法が判断するまでは留保されるのか、

そんなことはありません。
哲学や物理学では「認識と存在は分離できない」と考えるべき分野がありますが
法解釈学では「認識と存在は明確に分離できる」のが思考の大前提です。

> 親告罪ならば犯人を知って6ヶ月以上放置したなら侵害という事実がなかった事になるのか、

これも違います。
親告罪というのは「告訴がなければ公訴を提起することができない」罪のことです。
(例 刑法209条2項)
確かに刑事訴訟法235条には6か月という期間制限の話が出てきますが
ここではその効果は「告訴をすることができない」です。
いずれ刑事訴訟手続を開始することができないというだけのことです。

「裁判をやってないのだからあるかどうかわからない状態なのだ」と言い張ることは可能ですが
そうなるとそれはもはや言葉の使い方の違いという話であり
「法解釈学ではそうは考えない」で終了です。
言い換えると刑法の事例式問題には
ある程度具体的な事実を示して犯罪が成立するか否かを問うパターンのものがありますが
そういう問題はたいてい裁判になっているかどうかは書かれていません。
だからといって「本件は裁判を経ていないので犯罪が成立するかどうかわからない」とか
「本件は裁判を経ていない以上犯罪にはならない」などと書いたら
落第確定です。

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