Re: Cauchyの積分定理により∫_C u^{s-1}/(exp(u)-1)duが定数となる理由
工繊大の塚本です.
In article <jta08q$kpc$1@dont-email.me>
"Kyoko Yoshida" <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> In article <120706172650.M0102915@ras2.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > 積分路の「差」を考えるのは普通行われることです.
>
> 今回のケースに限らずでしょうか?
はい.
> C_{ε_1}とC_{ε_2}を複素平面上の曲線とする時,
> ∫_{C_{ε_1}-C_{ε_2}}f_s(u)duと書いたら,
> ∫_{C_{ε_1}}f_s(u)du-∫_{C_{ε_2}}f_s(u)duを意味する
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/def_583_2__00.jpg
> という定義が在ったのですね。
曲線 C_{\epsilon_1} - C_{\epsilon_2} というのは,
曲線 C_{\epsilon_1} と, 曲線 C_{\epsilon_2} の向きを
逆にした曲線 - C_{\epsilon_2} との合併を意味するわけですから,
複素線積分の定義からそうなります. ここで, C_{\epsilon_1} と
- C_{\epsilon_2} とは連続しているわけではないし,
その必要もないことに注意しておきましょう.
> それで何故かこれが更に
> ∫_{γ_{ε_1}}f_s(u)du+∫_{-(ε_1ε_2)}f_s(u)du
> +∫_{-γ_{ε_2}}f_s(u)du+∫_{ε_1ε_2}f_s(u)du
> とへ変形できるのですよね。
C_{\epsilon_1} や C_{\epsilon_2} を分解して考えれば
そんなに分かり難いことではないでしょう.
> ここでC_{ε_1}とγ_{ε_1}、C_{ε_2}とγ_{ε_2}は
> 同じ半径・向きとも同じ円周を表しているのですよね。
違いますよ. C_{\epsilon_1} は
実軸上を無限遠から \epsilon_1 まで進み,
\gamma_{\epsilon_1} という円周を回って,
(偏角が 2 \pi 進んだ) 実軸上の \epsilon_1 まで進み,
更に, 実軸上を \epsilon_1 から無限遠まで進む路であると,
何度も述べています.
つまり, \gamma_{\epsilon_1} に, 実軸を無限遠から入ってくる路と,
無限遠に出ていく路を付け加えたものが C_{\epsilon_1} です.
この実軸上の2つの路は別のシートの上にあるものと考えています.
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> に於いて,赤と青の線分ε_1ε_2は一見向きは逆に見えますが
> 赤の偏角は0で青の偏角は2π,
逆です. 青の偏角が 0, 赤の偏角が 2 \pi.
そうでないと, 閉曲線になりません.
> したがって被積分関数がu^{s-1}/(e^u-1)とe^{2πis}u^{s-1}/(e^u-1)と
> なるのでしたよね。
青の上では u^{Re(s)-1} e^{i Im(s) \log u}/(e^u - 1) の積分.
赤の上では e^{2 \pi i s } u^{Re(s)-1} e^{i Im(s) \log u}/(e^u - 1) の積分.
> ちゃんと(?)書けば
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph176.jpg
こちらの図では正しい.
> となるのかと思います。これで証明してみましたら
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop205_283__12.jpg
0 < \epsilon_1 < \epsilon_2 に対して f(\epsilon_1, \epsilon_2)
としているものが 0 になることが分かります.
# 定数になるのは \int_{C_{\epsilon}} f_s(u) du.
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop205_283__13.jpg
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop205_283__14.jpg
> となってどうして最後が0になるのか分からなくなってしまいました。
そりゃあ, ばらしては分からないでしょう.
> これは一体何がいけなかったのでしょうか?
ばらすのがいけない. 閉曲線のままにするから,
Cauchu の積分定理が使えるのです.
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop192_127__04.jpg
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/prop205_283__15.jpg
大事なのは閉曲線の内部でも f_s(u) が一価正則であることです.
> といきなり,Cauchyの積分定理を使えば直ちに0は導けましたが。。
それで良いのです.
> 確かに積分路 -[ε_1,ε_2)+(-[ε_1,ε_2])
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph176.jpg
> で言えば 線分-AB+線分AB という積分路の積分
> ∫_{-AB}f_s(u)du+∫_{AB}f_s(u)duは打ち消しあって0となりますね。
そんな話はしていません.
0 < \esilon_1 < \epsilon_2 のとき,
C_{\epsilon_2} の - [\epsilon_2, \infty) の部分と,
C_{\epsilon_1} の - [\epsilon_1, \infty) の部分とのうち,
- [\epsilon_2, \infty) の部分が打ち消し合って,
[\epsilon_1, \epsilon_2] が残る, とか,
実軸を無限大に進む側でも同じように打ち消し合って,
- [\epsilon_1, \epsilon_2] (但し, 偏角 2 \pi のシート上で)
が残る, といった話です.
> > # 但し, u = 0 を分岐点とする関数 f_s(u) を考えているので,
> > # C_\epsilon の正の実数の部分については, 最初の部分と
> > # 最後の部分は別のシートの上にあると考えておくのが良い.
>
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph176.jpg
> での線分AB(偏角は0)と線分ED(偏角は2π)という具合にですね。
はい.
> 確かに複素積分の定義は
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/def583__00.jpg
> で開曲線で定義されうるものでしたが今はCauchyの定理を使って
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> を積分路とするf_s(u)の積分値が0となる事が分かって,
そのことから分かるのは, \int_{C_{\epsilon_2}} f_s(u) du と
\int_{C_{\epsilon_1}} f_s(u) du との差が 0 となること,
つまり, \int_{C_\epsilon} f_s(u) du が, 正数 \epsilon の
取り方に依らず, 一定であることです.
> しかもこの単純閉曲線は
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph174.jpg
> とどう積分路を意味するという段取りだったのはないですか!?
<http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg> と
<http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph174.jpg> とは
同じでしょう.
> それなのに
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph171.jpg
> は閉曲線だが
> http://www.geocities.jp/sayori_765195/graph174.jpg
> は閉曲線ではないとはどういう事でしょうか?
そんな話はしていません.
私が言ったのは「 C_{\epsilon} は閉曲線ではない」です.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735