工繊大の塚本と申します.

In article <e0daf05c-c5b6-4d5d-9f90-5b10bb865bf2@z16g2000prd.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/category/category_p7.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/category/category_p9.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/category/category_p11.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/category/category_p13.jpg
> 
> いまいち分かりません。
> 集合論の公理(外延性の公理,空集合の公理,対の公理,合併の公理,無限集合の公理,
> 冪集合の公理,置換公理,正則性の公理,選択公理)
> を使わずに何の公理を使うのでしょうか?

だから, 集合論の公理は使わず, 議論するものを set とは
仮定しないわけです.

> メタ圏とメタグラフって何なのでしょうか?

議論するものが集合論の範疇に収まるものであろうとなかろうと,
与えられた公理を満足するものがあれば, そういう呼び名をつける,
ということです.

> 対象や射は無定義語と聞いたのですが, 無定義語の定義は
> 「定義を持たないものらしいもの」らしいのですが
> 定義を持たない語が定義とはどういう意味なのでしょうか?

 metagraph における object や arrow は
「各 arrow には domain と呼ばれる object が定まる」とか
「各 arrow には codomain と呼ばれる object が定まる」といった
公理によってその性質が定まるものです.

それ自身についての定義は無く, それらの間の関係についての
公理からその性質が定まるようなもののことを, 普通,
無定義語と呼んでいます.

> 以下は何とか自力で解釈に努めました。
> 
> 対象は何かのものの集まりだと解釈しました。

そう思っておけば十分でしょう.

> 集合は集合全体の集合とかは矛盾をはらむので

 sets の全体は set にはなりませんが,

> 集合を厳密に定義する事は不可能なのですよね。

 set には集合論での公理による厳密な定義があります.

> 集合全体の集合とか,位相全体の集合とか群全体の集合とかは

集合全体とか, 位相空間全体とか, 群全体とか, ですね.

> 何の本で"領域"と呼ぶと以前見かけた事があります。

 class ですね.

> よってここでの対象の集まりは領域の事かとも解釈いたしました。

議論で現れるものが set でなくても, つまり,
 object や arrow が set でなくても, 又,
 objects の全体が set になっていなくても,
 arrows の全体が set になっていなくても,
以下での公理を満足するようなものであれば,
扱おうという話です.

> そして,対象が集合に相当する概念?
> よって対象の集まりを領域と言い,Ob(P)と表す(ここでのPは何かの条件を表す)

まあそう考えるのが分かりやすければそれで良いと思いますが,
要は, ある metacategory C の object というものが
議論するものとして了解できるものであれば,
それで十分です.

> Ob(P)と表記したら,Pと言う条件を満たす対象ならなる領域。
> そしてOb(P)={a,b,c,…}とかOb(P)={a;P(x)}で表す事ができる。
> 対象aが領域Ob(P)の一部の時,a∈Ob(P)と表記する。

そういう表記は議論するものが set であるかのような
誤解を与える恐れがありますから, text ではわざと
避けてありますね.

> Ob(P)=Ob(P)は∀x∈Ob(P)に対し,x∈Ob(P)
> そして,∀x∈Ob(P)に対し,x∈Ob(P)になっている事と定義できるのだと思います。

これは意味不明です.

> 2つの領域Ob(P)とOb(Q)が在ったとすると,a∈Ob(P),b∈Ob(Q)に対し,
> 対領域,a×bを射(morphism)と呼び,
> aとbの射の集まり(つまり,そのような射の領域)をMor(a,b)と表す。

これは何か誤解があるようですね.
どうして二つの領域を考えるのでしょう.
「a×bを射」というのも意味不明です.

> f∈Mor(a,b)とすると,

 arrow f について, dom f = a, codom f = b は,
公理から, 決まるので, f は f: a → b とも書かれますが,
 metacategory では
 object a を domain とし, object b を codomain とする
 arrow f の全体が set になるとは仮定しないので, 
誤解を避けて, text ではそういう記法を使っていないようですね.

> a∈Ob(P),b∈Ob(Q),c∈Ob(R)の時,f∈Mor(a,b),g∈Mor(b,c),h∈Mor(a,c)とする。
> domh=aでcodh=cの時,fg=hと表し,合成射と呼ぶ。

ここも Ob(P), Ob(Q), Ob(R) となっているのは
誤解があるようです. 又, dom f = codom g のとき
 f○g が定義できて, それを h とすれば
 dom h = dom g, codom h = codom f となるのです.
順序・向きには注意しましょう.

> ∀f∈Mor(a,b)に対し,fg=f 且つ,gf=fなるg∈Mor(a,a)が一意的に存在する。
> このgを恒等射と呼ぶ。

各 object a について, arrow 1_a があって,
 arrow f について dom f = a であれば, f○1_a = f であり,
 arrow g について codom g = a であれば, 1_a○g = g です.
左右で話が違いますから, 注意しましょう.

> そして,対象a,b,cと射の領域Mor(A,B),Mor(B,C),Mor(A,C),Mor(A,A),Mor(B,C)を
> 圏と呼ぶ。

どうも誤解があるような気がします.

 text では category というと, 議論するものが sets で
公理を満たすものになっているもののことです.

 category C には objects の全体の set O と
 arrows の全体の set A が定まっていて,
二つの写像 dom: A → O と cod: A → O があり,
(各 object に恒等写像を対応させる)写像 id: O → A があり,
合成可能な arrows の pair の set を A ×_O A で表すと
( A ×_O A = { (f, g) ∈ A×A | dom(f) = cod(g) } です)
写像 ○: A ×_O A → A があり,
(写像の像を ○ での二項演算として表します)
 a ∈ O について dom(id(a)) = a, cod(id(a)) = a であり,
 (f, g) ∈ A ×_O A について, dom(f○g) = dom(g),
 cod(f○g) = cod(f) であり,
 f, g, h ∈ A について, dom(f) = cod(g), dom(g) = cod(h) のとき,
 f○(g○h) = (f○g)○h であり,
 f ∈ A について, f○id(dom(f)) = f であり,
 id(cod(f))○f = f である, わけです.

 O = Ob(C) と書くこともあるでしょうが, この text では
わざわざ O とも書かないで C そのものをつかい,
 a が C の object である, というのを a ∈ C とする,
と断ってあります.

又, わざわざ A とも書かないで, f ∈ A のことを
 f in C とする, と断ってあります.

更に, { f ∈ A | dom(f) = a, cod(f) = b } のことを
(Mor(a, b) でなく) hom(a, b) と表記しています.

> と以上のように解釈してみたのですが…
> かなり勘違いしてますでしょうか?

 category を理解すれば, 差し当たって宜しいのではないかと
思います. metacategory は set であることを落とすのです.

なお, metacategory のことを category とし,
この text での category のことを small category とするのが
普通だろうと思います.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp