Re: (v_1+v_2)(×)w=v_1(×)w + v_2(×)wの証明
工繊大の塚本です.
In article <ccb01d18-b9c0-4ee5-8a81-ea5bbf59223c@a17g2000prm.googlegroups.com>
cchikakoo <cchikakoo@yahoo.co.jp> writes:
> In article <081026204016.M0123705@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > # R は 1 をもつとしていて,
>
> Rは単位的可換環でなければならないのですね。
本当はテンソル積の定義にはその必要がないのですが,
貴方のテンソル積の定義に用いられている T の
生成元に (rx, y) - r(x, y), (x, ry) - r(x,y)
が入っていて, r(x, y) が入っているので T は
R 係数の線形結合を考えているようですのに,
(rx, y) というものも同時に考えてもいますので,
(rx, y) は 1 (rx, y) のこととして R 係数の
線形結合と見做せるには, R には 1 がないと
まずいわけです. 上の二つの代わりに
(rx, y) - (x, ry) の形のものを生成元として
単なる加群として構成して, それに R の作用が
自然に入ることを言って, R加群を構成する方が
一般的な遣り方だと思います.
# 他にも考え方はあると思います.
ここでは体上の加群, 即ち, ベクトル空間の
テンソル積と同様に, 1 をもつ可換環 R 上の
加群のテンソル積も定義できる, という観点
から定義がなされているのだろうと思います.
> > # span(V×W) は V×W の
> > # 全ての元を基底とする自由左R加群ですね.
>
> V×Wの全ての元ですか,,?
> ならV×Wの元は無限個ありますよね。
> (V,Wは左R加群なので)
> と言う事はspan(V×W)の次元は無限次元?
そうです.
> > 各類を構成するのは span(V×W) の元ですから,
> > v(×)w = { u = Σ_{i=1}^N r_i (x_i, y_i) ; u ≡ (v,w) (mod T) }
>
> {(x_1,y_1),(x_2,y_2),…,(x_N,y_N)}はspan(V×W)の基底なのですね。
基底ではありません. 重複無く取るのであれば, 基底の
一部ではあります. V×W の全ての元を集めたものが
基底です. 上の # の所に書いた通りです.
> > と書くべきでしょう. T を法とするときの, (v, w) を含む類を
> > [(v, w)] と書くならば, v(×)w = [(v, w)] であるというのは
> > その通り.
> > V(×)W = { [u] ; u ∈ span(V×W) }
>
> これは大変参考になります。こっこんなにシンプルに書けるのですね!!
u = Σ_{i=1}^N r_i (x_i, y_i) の形であることは
忘れてはいけません.
> > ということです. 一般に類の和が又類になることを既に
> > 知っているとすれば, これを示すのに必要なことは,
> > span(V×W) の元 (v_1, w) + (v_2, w) が
> > 類 [(v_1+v_2, w)] に入ること, 即ち,
>
> 一般での類別では集合Xの類をC(a)と表す事にすれば
> (i) a∈C(a)
> (ii) C(a)=C(b)⇔C(a)∩C(b)≠φ⇔a≡b(mod T)
> (iii) X=∪{C(a);a∈X}
> は知っていますが,,,
> 今,V(×)WはC(a)+C(b):=C(a+b)と定義すると群をなすから
> "類の和が又類"が言えるのでしょうか?
R加群 span(V×W) を部分 R加群 T で割る類別において,
C(a) + C(b) を C(a + b) で定義「出来る」ことが, 先ず,
示されるわけです. つまり, a' ∈ C(a), b' ∈ C(b) で
あれば, a' + b' ∈ C(a + b) となるので, C(a + b) は
C(a) と C(b) の代表元の取り方によらず定まるのが
商群の話の基本です.
> 実際,
> v(×)w,v'(×)w'∈V(×)Wを採ると,
> v(×)w+v'(×)w'をどのように定義するのでしょうか?
ですから, [(v, w) + (v', w')] とするだけです.
> (v+v')(×)(w+w'):=v(×)w+v'(×)w'と定義すると,
それは駄目です. (v + v')(×)(w + w') は
v(×)w + v'(×)w + v(×)w' + v'(×)w' です.
> v+v'∈V,w+w'∈Wなので(v+v')(×)(w+w')∈V(×)Wとなり,
> 結合法則は(v(×)w+v'(×)w')+v"(×)w"=v(×)w+(v'(×)w'+v"(×)w").
> 零元の存在は0(×)0∈V(×)Wと採ればよい。
> 逆元の存在は(-v)(×)(-w)∈V(×)Wと採ればよい。
> 交換法則も明らか。
> よってV(×)Wは(剰余)群をなす。
> でいいのでしょうか?
商群において和が定義できることさえ示されれば,
後は元の群での結合法則, 零元の存在, 逆元の存在,
交換法則から, 自然と従います.
> つまり,加法を[(v_1, w)] + [(v_2, w)]:=[(v_1, w)+(v_2, w)]と定義するのですね。
> 右辺は(×)で表しようがありませんね。
>
> すると
> v(×)w,v'(×)w'∈V(×)Wを採ると,
> v(×)w:=(v,w)modT,v'(×)w':=(v',w')modTで表す事にすれば
> ((v,w)+(v',w'))modT=(v,w)modT+(v',w')modT …(*) と定義するのですね。
そうです.
> こう定義すると
> 結合法則は((v,w)modT+(v',w')modT)+(v",w")modT
> =((v,w)+(v',w'))modT+(v",w")modT=(((v,w)+(v',w'))+(v",w"))modT
> =((v,w)+((v',w')+(v",w")))modT(∵span(V×W)の元は和に関して結合法則をなす)
> =(v,w)modT+((v',w')modT+(v",w")modT).
> 零元の存在は(0,0)modT∈V(×)Wと採ればよい。
span(V×W) には 0 があるとしているのです.
span(V×W) では 0 と (0, 0) とか (v, 0) とか
(0, w) とかは違うものです.
V(×)W において, [0] = [(0, 0)] = [(v, 0)] = [(0, w)]
となることは証明できますから, それでも良いのですが.
> 逆元の存在は(-v,-w)modT∈V(×)Wと採ればよい。
[(-v, -w)] = [(-1)v, (-1)w)] = [((-1)(-1)v, w)] = [(v, w)]
ですから, それは違います.
逆元は [-(v, w)] = [(-1)(v, w)] = [((-1)v, w)] = [(v, (-1)w)]
= [(-v, w)] = [(v, -w)] ∈ V(×)W です.
> 交換法則も明らか。
> よってV(×)Wは(剰余)群をなす。
> でいいのでしょうか?
以上の留保付きでOKです.
> 私が掲げた
> T:=span{(x_1+x_2,y)-(x_1,y)-(x_2,y),(x,y_1+y_2)-(x,y_1)-(x,y_2),
> (rx,y)-
> r(x,y),(x,ry)-r(x,y)}
> の各生成元
> (x_1+x_2,y)-(x_1,y)-(x_2,y), (x,y_1+y_2)-(x,y_1)-(x,y_2), (rx,y)-
> r(x,y), (x,ry)-r(x,y)
> はV×Wの元なのだからですね。
いえ, span(V×W) の元です.
> Σ_i a_i ((x_{i1}+x_{i2}, y_i) - (x_{i1}, y_i) - (x_{i2}, y_i))
> + Σ_j b_j ((x_j, y_{j1}+y_{j2}) - (x_j, y_{j1}) - (x_j, y_{j2}))
> + Σ_k c_k ((r_k x_k, y_k) - r_k (x_k, y_k))
> + Σ_l d_l ((x_l, r_l y_l) - r_l (x_l, y_l))
> は確かにV×Wの基底の一次結合で表されてますね。
span(V×W) の基底 V×W の一次結合に書き直すことは
出来ます.
> > もっとも,
> > (v_1+v_2, w) ≡ (v_1, w) + (v_2, w) (mod T)
> > を示すのは,
> > (v_1+v_2, w) - (v_1, w) - (v_2, w)
> > が T の生成元の一つなのですから, 自明です.
>
> なりほど。Tの定義から(v_1+v_2, w) - (v_1, w) - (v_2, w)∈Tになってますよね。
> だから(v_1+v_2, w) ≡ (v_1, w) + (v_2, w) (mod T)で
> (ii)より(v_1+v_2, w)modT=((v_1, w) + (v_2, w))modT=(v_1, w)modT+(v_2,
> w)modT(∵(*))
> で(v_1+v_2)(×)w=v_1(×)w + v_2(×)wが成り立つのですね。
>
> 納得です。
河野さんのようにこれだけ指摘すれば良かったのかも
知れませんが, 細かい勘違いが後で大きな誤解を生む
かも知れませんので, 気が付いたところは申し上げて
おきました.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
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GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735