3回表[5]
◆12:02 3回表 十番高校の攻撃 1アウト 第3打者
四葉 「チェキっていこまぃーーーーーー!」
はーーーーーい!
1点を返されたダメージも何処へやらで、再び首尾定位置に散り
ますます訳の判らなさが増す一方の四葉の掛け声に応えるシスプリ
チーム。迎えるバッターはセーラーチームの名目上主役ことうさぎ。
うさぎ「名目上て何よ!。名実ともに私が主役なのよ!。」
だから、できれば地の文に突っ込むのはやめて頂きたいのだが。
さて、すたすたとバッターボックスに入るうさぎ。・・・だったが。
爺や 「プレイ!」
うさぎ「あっ!いけない!」
何処に逝けない(違)んだか良く判らないが、主審の宣言と同時に
叫ぶうさぎ。そのままバッターボックスで棒立ちになる。目は空ろ。
バットも肩に担いだまま。いきなり元気が無くなった。はて?
鈴凛 「・・・?」
その元気さは「セーラームーン」を見ていた者なら間違いなく
熟知している。また、今時の中高生年代の女の子なら間違いなく
件の番組は見ていた筈だ。と言う訳で、うさぎの元気さは先刻承知
だった鈴凛だが、目の前のうさぎはどうもTVで見ていた時の様子
とギャップがある。それをいぶかしみながら、取り合えず第1球。
バットを担いで項垂れているような様子からして、とても第1球
から手を出すとも思えないから、先ずは何時もの打ち頃の球で様
子見。例え打たれてもバックを信じているから、迷いは無い。
ひゅんっ ぱす。
爺や 「すたーいく、わん!」
主審の声があがる。が、うさぎがそれに反応している様には見え
ない。矢張り様子がおかしい、と首を捻るバッテリー。だがそれは
3塁側ベンチも同じ。たまらず自軍のベンチから野次が飛ぶ。
レイ 「へぃへぃバッター! 元気ないよー!」
美奈子「そんなんじゃ、あっと言う間にカウントスリーだぞー!」
だからってクサしてどーする、ってなもんだが、それでもうさぎ
の反応は無かった。取り合えず、そのまま投げ続ける鈴凛と四葉。
ひゅんっ ぱす。
爺や 「すたーいく、つー!」
ひゅんっ ぱす。
爺や 「すたーいく、すりー! ばったー、あうっ!」
唖然と3塁側ベンチが見守る中、テンポ良くかつ無駄球を一切投
げない鈴凛の投球が、実にあっけなく終わってしまった。
「だあああああ!」 がらがっしゃん
まさか、これほど淡々と進むとは思っていなかった両軍が総ゴケ
する。皆が皆「うさぎなら、良かれ悪しかれ『なにか』やらかすに
違いない」と期待して^H^H^H^H思っていたらしいが、それを上回る
出来だった。ま、うさぎだし。ある意味、確かにヤラカしてくれた。
地場衛「うさこ・・・大丈夫か?」
流石におかしい、と思った地場衛監督がベンチから離れ、次打席
へ向かう1番バッターの美奈子とすれ違いながら帰ってきた、彼女
に尋ねる。と言うか今頃聞くくらいなら、おかしいと思った時点で
チェックしなさいよ。とまれ、こうした時のうさぎを下手につつく
とエラい目を見る事は私生活の繋がりから十二分に承知している彼
は、先ずは自陣から離れた所でうさぎと「二人の世界」をつくり、
優しげに微笑み問い掛ける。さすが種馬、手馴れたものである(爆)。 <----(1101)
地場衛「どうした、うさこ?」 す
うさぎ「あのね、まもちゃん・・・そのね、あのね・・・」 た
地場衛「・・・言い難い、事かな?」 |
うさぎ「・・・誰にも、言わない?」 い
地場衛「僕がうさこの秘密をバラした事があったかい?」 く
うさぎ「・・・おこらない?」 、
地場衛「僕がうさこの言葉をおこった事があったかい?」 わ
うさぎ「ホント? えへへ、まもちゃん、やさしー。」 ん
地場衛、あくまで優しげ。その微笑を見て、ほにゃ、と笑った
うさぎが、言葉を繋ぐ。
うさぎ「ごめんなさい、打席に着いてから気付いたの。」
地場衛「何に?」 す
うさぎ「アタシが悪いのかな?うん、そう、わたしよね。」 た
地場衛「そんな事は無いさ。」(きら〜ん★) |
うさぎ「ホント?」 い
地場衛「ほんとほんと。だから、言ってごらん?」 く
うさぎ「・・・もう、駄目なの。」 、
地場衛「?」 つ
うさぎ「・・・すいてたの。」 |
地場衛「・・・何が?」
この時点で回答が判り切っていた地場衛監督だったが、そこ
は長年の付き合い。ぐっとこらえて、正しい自己申告を待つ。
うさぎ「・・・おなか、すいてたの。もう12時だから。」 す
た
全く予想通りの答えが返ってきて、もりもりと全身から | <----(1104)
気力が抜けてゆくのを実感する地場衛監督。 い
く
地場衛「・・・だから?」 っ
うさぎ「あっちにいってから気付いちゃって。」 す
地場衛「いや、そーじゃなくって・・・」 り
うさぎ「ほらアタシ、おなかがすいてると全然駄目でしょ? |
だからほら、バットも振れなかったし。」 、
地場衛「・・・そんなバカな。」 ば
うさぎ「ううん、もう駄目。もう1歩も歩けなぁい。」 っ
地場衛「大丈夫だよ。うさぎは強い子だ。」(浮歯) た
うさぎ「うぅん、うぅん、もうダメぇ。」 |
地場衛「まったく、甘えんぼさんだなぁ、うさこは(^.^)」 、
うさぎ「えっへっへ(*^・^*)、おんぶして。」 あ
地場衛「おぃおぃ、ここでかい?(*''*)」 う
うさぎ「やぁん、おんぶおんぶー。だっこでもいーよ?」 っ
地場衛「ホントに甘えんぼさんだなぁ。ほぉら、高い高い。」
うさぎ「やっ、まもちゃん!そんな、いきなり!うふふふふ」
地場衛「はははははは、うさこは軽いなぁ、鳥みたいだぁ。」 <----(1105)
美奈子「って二人の世界で、何やってんのよおっ!」
どげげしっ
お花畑でワルツを踊っていた地場衛とうさぎに、背後から旋風脚 <----(1106)
が喰らわされた。たまらずグラウンドに顔面から突っ込みそのまま
土煙を上げてざざーっと滑ってゆき全く勢いを殺さないまま客席壁
へ突っ込み崩れた瓦礫の下敷きになる二人。が、一瞬後には全身か
らパラパラとコンクリート屑や小石を落としながら、そのまま美奈
子に食って掛かるうさぎ。流石歴戦の勇士、打たれ強い(おぃ)。
うさぎ「いったーい、美奈子ちゃん! いきなり蹴っ飛ばすって、
どー言うことぉ! だいたい、そーいったキャラってレイ
ちゃんのキャラでしょ!」
美奈子「ぅやかましいわよっ! だいたいさっきのお茶会で、あ〜
んなにまこちゃんや白雪ちゃんお手製のケーキをぱくつい
てたのはうさぎちゃんでしょっ! それなのにもうお腹が
すいたって、一体どー言う事よっ!」
うさぎ「そこはほれ、ごはんとケーキが入る場所は、別だから。」
美奈子「そーいう事は食後にケーキ食べる時に言うの!」
うさぎ「んもー、それならそうと最初から言っておいてくれれば、
美奈子ちゃんの分もちゃんと取っといてあげたのに。」
美奈子「そーいう問題じゃないの!」
うさぎ「あ、いらないの? じゃーあの余ってたタルト、貰っちゃ
ってい〜い? そー言えばイチゴショーキも。いーの?」
美奈子「う・・・それとこれとも話が別!」
うさぎ「だって美奈子ちゃん、こないだダイエット失敗したって言
ってたし。ごはんの後にケーキって、また失敗するよ?」
美奈子「いーの! 食事とケーキが入る場所は、別だもん!」
うさぎ「そーいう事ってごはんの後にケーキを食べる時のだって。」
もはや一言もなく、しかし憤懣やる形無しの表情で「がるるる…」
と唸りながらうさぎを見据える美奈子。一方うさぎは「美奈子ちゃ
ん、そんなにケーキが食べたかったのかなぁ?」と、ぽややんと美 <----(1107)
奈子を眺めている。当然このままじゃ埒があく訳が無いので、そこ
はサイドからのフォローが入る。
地場衛「おぃおぃ美奈子ちゃん。キミらしくないなぁ。」(^_^)
此方も流石歴戦の勇士。加えてダンディ。埃や欠片一つ無く、ピ
シッと元通りの「無駄な爽やかさ」で美奈子を諌める。思わずぽー <----(1108)
となってしまう美奈子。既に蹴飛ばした事なぞ忘却の彼方。
美奈子「ごめんなさい・・・まもるさん・・・ただ、うさぎちゃん
があんまり能天気だったものだから・・・」
地場衛「うさこがのーてんきでぽややんであっぱらぱーなのは何時
もの事じゃないか。気にする事じゃないよ、ね?」
美奈子「そう・・そうね。うさぎちゃんが考え無しの能天気の寸足 <----(1109)
らずのボンボンのぽややんのあっぱらぱーってのは、昔か
らだったわね・・・ごめんなさい、まもるさん。」
幾ら何でもそんな某死神の様に悲惨な事は無いと書き手は思うの <----(1110)
だがそれは兎も角、さり気無く惨い酷い事を言いながらも美奈子は
落ち着いた。其処を逃さずフォローを入れる地場衛監督。さすが。
地場衛「そうさ。だから気にせず、がーんと打ってきて。」
ぴききっ
うさぎ「何の音?」
地場衛「・・・さぁ・・・あ。」('';)
地場衛の目の前に、真っ暗なオーラが立ち上った。
美奈子「クレッセント・ビームシャワー!」
地場衛「んぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
美奈子の全身、表皮からコンマ2mmの所から数千本のビームが <----(1111)
一斉に立ち上り、それが悉く空中でホーミングし、爽やかに微笑む <----(1112)
地場衛へオールレンジアタックを掛けた。幾ら歴戦の勇者であって <----(1113)
もビームライフルを持たずコアファイターにも乗り込まずガンダリ <----(1114)
ウムγ合金の装甲にも守られていないのでは、ひとたまりも無い。 <----(1115)
あえなく、戦艦すら打ち抜くビームで全身を焼かれる地場衛監督。 <----(1116)
無論、全身アフロだ(意味不明)。 <----(1117)
ちなみに一瞬前まで監督の傍にくっついていたうさぎは、彼女なり
の危機察知能力を全開で発揮し、瞬時に危険から離れていた。まさに
「兎」の名に相応しい回避筋の選択と言えよう(謎)。 <----(1118)
美奈子「どーせあっさり三振しましたよ! あんな、バッターの手
前でUターンするような球なんて打てる訳無いじゃないの
よっ! だからどーせ出番もありませんでしたよ、ふん!」
こう黒焦げの監督へ言い捨て、鼻息荒くどすどすと足を踏み鳴ら
しながら、3塁側ベンチに帰ってゆく美奈子。
うさぎ「まもちゃ〜ん、だいじょーぶ? 生きてる? ま、死んで
てもいっか。きっと、私が、すくってあげるから。」 <----(1119)
つんつん、とかつついて無責任な事を言いながら、こちらも3塁
側ベンチへ帰ってゆくうさぎ。銀水晶を握っているから超強気。
地場衛(そう言えば、なにか背景で、主審の声が・・・)
思い返しても、もう遅い。自分たちが作っていた「二人の世界」
で折角の出番を丸潰しにされ烈火の如く怒っていた美奈子の心に
漸く地場衛が思いついた時には、既にセーラーチームがグラウンド
の片隅で消し炭になっている監督なぞ一顧だにせず守備位置に散っ
た後だった。合掌、礼拝。ち〜ん。
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水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
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