2回表
◆10:25 2回表 十番高校の攻撃
四葉 「チェキしていこーーーーーーーー・・・ぜぇ!」
おーーーーーっ
どうやらベンチで訂正されたらしい四葉が、若干とちりながらも
それっぽく叫んだ。さて2回表の開始。オーダーは1回と変更なし。
ここまででシスプリチームは例の憑依システムを遺憾なく発揮し
2点のリード。尤も1回表をたった9球で見事0点に押さえたメカ
鈴凛は日々平穏無事之名馬をモットーとする兄ちゃんに停止されて
しまい、マウンドにはオリジナル鈴凛が上がっている。あの超人野
球を生身の人間が押さえられると到底思えない妹有志何名かが兄ち
ゃん監督に交渉したのだが、
鈴凛 「あ、いーよいーよ、全然問題無し。」
と本人が至って気楽だったので、結局鈴凛がそのままマウンドに
上がっているのだ。尤もそのお気楽さに
兄ちゃ「・・・そんなバカな。」
と兄ちゃん本人は、ごっつい嫌な予感を抱いていたのだが。
爺や 「バッターラップ!」
主審の声があがる・・・が、3塁側ベンチ前のネクストバッター
サークルには誰も居なかった。はて?
と、何処からとも無く流れてくるマイナーストリングスのBGM。
♪ちゃーーららーちゃらららーららーちゃらららーちゃらちゃらー <----(0501)
途端にバッターボックスへ渦巻く一陣の風。いや、花吹雪。
四葉 「なにこれーーー!? けほっけほっ」
山田 「こ、これは! 外部太陽系3戦士の降臨!」
はい、向う正面山田さんの解説通り。甚大な花びら屑をグラウン
ドへ撒き散らしながら、何時の間にか回転台に改造されていたらし
いホームベースの上に3人ものナイスバディな長身の女性がぎゅう
ぎゅうづめ状態で仁王立ちする。マルチスポットライト、いやカク
テル光線を浴びながら型通りの宣言がいみじくも賑々しく行われる。
はるか「新たなる球団に誘われて! 天王はるか、華麗に活躍!」 <----(0502)
みちる「未知なる球場に誘われて! 海王みちる、優雅に活躍!」
せつな「たえなる試合に誘われて! 冥王せつな、美しく活躍!」
そのまま暫くライトとBGMを浴びながらくるくるとアピール。
アピール…。
アピール…。
アピール…。
アピール…。
アピール…。
あの〜。。
・・・数分後。
山田 「・・・満足した?」
はるか「ゴメン、もうチョイ。」
みちる「今を逃すと、次に何時できるか判りませんから。」
終わってしまった番組キャラの悲哀に、3塁側は号泣していた…。
この鬱陶しい登場シーンが本人たちの心行くまで行われた後、
撒き散らされた花びらをグラウンドキーパーの爺やs総出で行われ
るのに約30分を要した。尤もその掃除もクローンロボットに慣れ
ないセーラーチームが、同じ顔の爺さんがわらわらと登場したのに
肝を潰して妖魔だのダイモーンだのと騒ぎ球場ごと島を吹き飛ばし
そうになったため、これを止めるのに一苦労した顛末もあったのだ
が残念ながら割愛する。我々には時間が無いのだ(意味不明)。
そんなこんなで漸く
爺や 「プレイ!」
が宣言されたのだが・・・
四葉 「あのーーー、兄チャマぁ?
バッターボックスって、
両方にバッターが立っても良かったの?」
はるか「問題ない、些細な事だ。気にするな。」 <----(0503)
みちる「細かい事気にしてると、大事なお兄さんがハゲちゃうわよ?」
それは一大事!と騒ぎ始めた四葉は放っておくとして(おぃ)、
ホームベース両脇に珍妙な光景が繰り広げられていた。4番バッター
はるかが右打席に、5番バッターみちるが左打席に同時に入り、そ
れぞれバットを振り上げ構えているのだ。なお次の打者であり外部
太陽系3戦士の冥王せつなさんは、
せつな「しくしくしく(;_;)・・・アブれてしまいました。
まぁ仕方ありませんね。ボックスは二つしかありませんし。」
と、ネクストバッターズサークルで泣いていた。
さてこの光景を眺め、固まっちゃってる両ベンチでは。
うさぎ「ねぇねぇ美奈子ちゃん?あたし、野球のルールって詳しく
ないんだけど、こう言った連携攻撃ってアリなの?」
美奈子「確か『パワフルプロ野球’95』じゃ出来なかったんだ <----(0504)
けど…その後、ルール改正でもあったんじゃないの?」
うさぎ「ふーん、そうなんだぁ。レイちゃん、知ってた?」
レイ 「えっ?あっ?あ、あ、当たり前でしょ!ふん!」
まこと(・・・あっぶねー、知らなかったよ・・・)
可憐 「ねぇねぇ咲耶ちゃん?私、野球のルールって詳しく
ないんだけど、こう言った連携攻撃ってアリなの?」
咲耶 「確か『やきゅつく』じゃ出来なかったんだけど… <----(0505)
その後、ルール改正でもあったんじゃないかな?」
可憐 「ふーん、そうなんだ。お兄ちゃん、知ってた?」
兄ちゃ「・・・そんなバカな。」
山田 (・・・あっぶねー、知らなかったよ・・・)
と、双方ともすっかり駄目状態(爆)。だが、
地場衛「こらぁ!ピッチャーとバッターは1vs1が正しい姿だろう!
漢と漢の魂のぶつかり合いが行われてこその野球だぞ!」
と、これまた若干理念先行型なるも一応ルール通りに抗議し始めた
のは、セーラーチーム側監督だった。だがしかし。
はるか「漢と漢の魂のぶつかり合い? 汗臭い表現をしてくれるな、
汚らわしい。私達は両軍合わせても女性ばかりだぞ?」
みちる「それに私とはるかは一心同体。二人で敵に立ち向かって
こそ、正しい姿なのです。理解していませんでしたの?」
はるか「そうとも。この華麗なる戦場に、むさ苦しい男の論理なぞ
介入させて欲しくないものだな、まったく。」
みちる「怒らないで、はるか。監督はちょっと、昔の事に拘りたかっ
ただけなのよ。そう。はるか昔の、華々しい過去の姿に。」
はるか「あぁ、爺さんには良くある事だな。だが、今スポットを
浴びているのは私たちなんだ。引っ込んでてくれ。」
これでクリティカルヒットを喰らってしまった監督へ、亞里亞が一言。
亞里亞「じ〜〜さ〜ん〜は〜、よ〜〜ず〜み〜・・・」 <----(0506)
地場衛「うっうっうっ、うわぁああーーーーーーーん!(;O;)」
強く生きろよ、地場衛(笑)。
そして当然1塁側監督から抗議が入る事も無く、かつ主審である
クローンロボットが人間の行為に逆らおう筈もなく、そしてこうし
た時に介入するはずの彼女も
眞深 「面白いから、いっか。」
で行動を起こさなかったため、ゲームはこのまま行われる事になっ
た(爆)。クローンロボットを統括制御している、この人工島も支え
る巨大電子脳ことMEMOL(嘘)と主審がリンクし、直ちに <----(0507)
爺や 「複数バッターの同時打席は可。但しストライクゾーンは最
も大柄のバッターの物を適用し、ストライクはバッターの
数に掛けて一元的にカウントされる。フォアボールは全て
のバッターが振らなかった場合のみを4球まで数える。走
塁は一人でもアウトの者が居た場合、全員アウトとする。」
なるルールが適用された。つまり今回の場合、彼女らが2回同時に
見送るかバットを空振りすれば、いきなり2アウトだ。
兄ちゃ「・・・そんなバカな。」
異議は認められない。予算に着いては一考しよう(意味不明)。 <----(0508)
爺や 「プレイ!」
監督の呟きを無視し、プレイ宣言がまた響く。やおら鋭い視線を
向けてマウンドを睨み、阿吽の呼吸でバットを構える、はるかとみ
ちる。略してはる*みち。まるで売れない演歌デュオの様。
はるか「スペースソードブラスターで吹き飛ばされたいらしいな…」
こりゃ失礼(^^;)。しかし地の文に突っ込むのは止めて欲しい。
さて、こうして歴戦の勇者に真正面から睨まれる事になった鈴凛。
普通なら睨まれただけで震え上がり座り小便を漏らしてへたり込ん
でもおかしくないくらいなのだが、
鈴凛 「・・・狛犬?」
こんな事を考え、くすり、と笑っているくらいなのだから、随分
と余裕があるようだ。ちょいちょい、と指先のブロックサインで
キャッチャーの四葉とサインを交換する。メカ鈴凛そっくり(と
言うよりメカ鈴凛がオリジナルの動作をコピーしているのだが)
のワインドアップで、先ずは第1球。
びゅびゅっ!
はるか「・・・そんな」
みちる「嘘でしょう?」
そりゃ確かに目を疑うだろう。1回表で見せた剛速球にタイミン
グを合わせ、はるかが高め、みちるが低めを狙って鋭くスイングし
たバットは見事に空を切った。ちなみに上記の音はボールの音では
なくスイングの音である。そして振り切ったバットを戻そうともせ
ず、驚愕している彼女たちの間を、静々とボールが飛んでゆく。あ
まつさえ、モンシロチョウがその上に止まっている程の速度で。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽむ。
爺や 「すたーいく! つー!」
十数秒を掛けて四葉が構えるミットに収まった球を確認し、主審
がコールした。超遅球。しかもフォームが1回表のそれと全く変わ
らない。何処ぞの長寿野球漫画プロ野球編で見られる様な、見事な
球だった。剛速球を投げ終った時と全く同じポーズのまま、四葉の
ミットへ正確に肩口を向けていたマウンド上の鈴凛と合わせ、躍り
上がって喜ぶシスプリチーム。それも当然だろう。
はるか「これは・・・・・」
みちる「難しいわね・・・」
たった1球で追い込まれてしまった二人。が、然程焦っているよ
うにも見えない。其処は矢張り歴戦の勇者。きちんと対策があった。
はるか「どちらが来るか判らないなら、」
みちる「どちらか一方に夫々タイミングを合わせれば良いだけ、ね。」
つまり剛速球と超遅球の両構えで行こうと言う事らしい。アイコ
ンタクトで、はるかが剛速球、みちるが超遅球にタイミングを合わ
せる事が打ち合わされる。
そして鈴凛が、第2球を投げた。
びゅっ!
はるか「くそっ、また超遅球かっ。みちる!」
みちる「えぇ! 任せて!」
剛速球のタイミングでバットを振り切ってしまったはるかが、正
面でまだバットを振らずに構えるみちるに声を掛ける。満を持して
ボールから目を離さず構え、気力を貯めているみちる。
が、そんな彼女らにも、ルールは容赦無かったのだった。
爺や 「すたーいく、すりー! ばったーず、あうっ!」
はるか「そんな!」
みちる「まだ振ってないのよ!」
そう、みちるは。しかしはるかはものの見事に空振りしている。
初球で振らされた、はるかとみちるの合わせて2振。そして2球目
の、はるかの1振。あわせて三振。
はるか「しまったぁ!」
つーか、普通気付くけどね。
はるか「スペースソードブラスターで吹き飛ばされたいらしいな…」
こりゃ失礼。だが地の文に突っ込んでもアウトはアウト。しかも
一気に2アウト。当然、躍り上がって喜ぶシスプリチーム。だが。
せつな「さて、どう料理してあげましょうかしら?」
歴戦の勇者は、まだ残っていた。どうやら超遅球が2球続いた事
で、この鈴凛が剛速球を投げられないらしい事を予想した様だった。
危うし、鈴凛。このままでは間違いなくバックスクリーンだ。
鈴凛 「ふーん・・・でも、そう簡単に打てるかな?」
が、鈴凛はそれでも、淡々と超遅球を投げた。予想通りの結果に
目を爛々と輝かせ、ふわふわと一直線(?)に飛んでくる超遅球を待
つせつな。来い、来い、来い、来い・・・来た!
せつな「貰いました!」
満を持して、バットを振ろうとするせつな。だが、しかし。
せつな「こ、これは!・・・打てません!私には打てません!」
目の前をふわふわと通り過ぎるボールを凝視し、バットを振り上
げながら、せつなは只見送った。悔しげに、しかし愛おしげに、
モンシロチョウが止まっている、超遅球を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽむ。
爺や 「すたーいく! わん!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽむ。
爺や 「すたーいく! つー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽむ。
爺や 「すたーいく、すりー! ばったー、あうっ!
すりーあうと、ちぇんじっ!」
確かに、セーラー戦士中最も心優しき常識人である冥王せつな嬢
に、蝶を叩き潰すような事なぞできる筈がない。見事な鈴凛の心理
作戦勝ちだった(ぉぃ)。再び躍り上がって喜ぶシスプリチーム。対
するセーラームーンチームにも、流石に焦りの雰囲気が出始める。
なお「キャッチャーに向かい一直線に飛ぶ超遅球」の秘密は3回
表に持ち越し。果たして蒼髪の天才少女は、それを解けるか?
■2回表 終了 |1|2|3|4|5|6|7|8|9|− ■
■Sailors|0|0| | | | | | | |0 ■
■Sisters|2| | | | | | | | |2 ■
■ NEXT 四葉・花穂・白雪 ◆ マウンド まこと■
水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735