昇降機の維持管理業務は法令上は特に特定の業者でなければならない規定は無い。即ち独立系と言われる業者に管理委託を行う事を禁止はされていない。
 この事は自動車の車検をメ−カ−系デイラ−以外で行ってはいけないとされていないのと同じである。

 今回の事故は昇降機では絶対に死亡事故は起こり得ないとの神話を覆す結果となったが、果たしてメ-カ-責任を何処まで追及出来るのかは疑問が残る。 この事は車の整備不良に起因する事故は先ず整備工場が負うべきであり、整備工場は車両特性を熟知しておく必要がある。当然整備依頼者(車両所有者)にも日常点検義務は生じる。

 整備点検マニュアル等は基本的に整備工場側が作成すべきものであって、必ずしもメ−カ−が個々の整備工場に配布するべき性格のものではない。
 機械機器は日進月歩、日々刻々進歩し、微細な変更は自動車の場合概ね二ヶ月に一箇所以上行われている。系列外の整備業者はこの情報を知り得る立場に無いから、必然的に旧態の復元を行う事となる。 整備とは購入時の機能を復元する事であるので、整備が適正に行われていれば事故は起こり得ないと言える。

 昇降機を設置する建物を設計、所有する機会があり、個々のメ−カ−、整備会社の実態を見て回った経験から言えば、メ-カ-系のメンテナンス会社はメ−カ−社員の移籍や出向者が多く、設計意図と特性を良く理解し、当然他社製品の特性を理解しれいるし、いち早く改良された部品、情報で対応するので通常では今回の様な事故は起こり得ない。

 今回の事故と同型の異常が多く報じられているが、停止階の床と停止高さとの誤差は最大で30mm迄とされているが、一般に5mm違えば自動的に高さ調整され、通常2mmの誤差以内で運転されている。 今回の様に30Cm以上違ったり、ドア−が閉まらな等は、即座に使用停止すべき異常であり、この面で建物所有者の管理責任は免れない。
 異常を認識して供用していた者が先ず責任を問われるべきと言える。

 次に制動装置の異常に関して、ワイヤ−のオイルが付着していた事は設計上のミスか、本来カバ−がされている部分のカバ−を取り外していたか不明だが、常識的に言えば制動装置にはかば-が取り付けられている。
 主機の制動装置が全く用を成さない場合を想定して、多くのメ−カ−は昇降機籠部分にガイドレ−ルに押付ける又は挟む方法で籠自体ワイヤ−が切れても停止している様に設計している。異常があれば此れが作動する筈である。

 今迄の報道から推察して、制御系の異常即ち制御用基盤のROMに異常があったと思われる。異常信号の検知は比較的簡単に発見出来る筈だし、他の異常例から明らかに推測出来る。 
 今回の事故は基盤不良を放置していた側に大きな責任があると思う。

 投稿された様に、独立系管理会社への部品供給や情報伝達は確かに系列管理会社とは差がある様子だが、知る限りでは部品供給を行わない程の差別は行われていない。
 むしろ、価格競争で安価に走り、結果として、本来行うべき作業がなされていないとの疑問の方が強い。

 決してメ-カ-を擁護する意図は無いが、積算したら確実に赤字となる価格で引き受けている管理会社があるのは確かな様子です。 昇降機は基本的には何処のメカ−の構造も大差なく、適正に確認作業を行えば事故はあり得ないといえます。
 制御コンピュ−タ−の異常であれば、前駆現象を危機感を持って捉えなかった管理者の責任も免れません。