安井@東大です。

>>> 安井 in <ymrm65hr6ugy.fsf@as302.ecc.u-tokyo.ac.jp>,
>>>>  ・民主党…小選挙区得票率42.16%, 議席数12
>>>>  ・自・公…小選挙区得票率42.12%, 議席数13
>>>> ごく僅かな差ではありますが、小選挙区での合計得票率と獲得議席数は逆
>>>> 転しています。

>> GONさん in <boqtfl$rpp$1@news511.nifty.com>,
>>> 1議席程度じゃほとんど誤差の範囲でしょう。

> 安井 in <ymrm3ccchg0w.fsf@as302.ecc.u-tokyo.ac.jp>,
>> この逆転現象は「誤差」ではなく、特定の得票分布がもたらす必然です。

GONさん in <bpvlh0$prd$1@news511.nifty.com>,
> たった0.04%の違いで精々1議席ですから誤差の範囲だと思います。
> 例えば得票率が10%も違うのに逆転が起こったら問題だと思いますが
> 精々数%で最小単位議席の逆転ですから誤差の範囲だと思います。

小選挙区制の下での議席配分は、総得票数と得票分布によって一意に定ま
ります。そうである以上、それは「誤差」ではありません。


>>  # なお、このパターン以外にも、“ほとんどで惜敗”政党と“一部で勝
>>  # 利し、残りで惨敗”政党との間で得票率と議席数の逆転現象が生ずる
>>  # ことがあります。カナダの1993年総選挙では、全国政党である進歩保
>>  # 守党が16.0%の得票率で2議席しかとれなかったのに対して、ケベック
>>  # 州の地域政党であるケベック連合は同州でのみ票を固め、全国単位で
>>  # の得票率は13.5%でしかなかったものの、進歩保守党を大きく上回る
>>  # 54議席を獲得しました。
> 
> しかし、それは単純小選挙区制だから起こることであって日本のような
> 比例を加味した制度では起こりづらいんじゃないの?

日本の現行制度でも十分に起こり得ます。
例えば、もし仮に、中国ブロック・四国ブロックの自民党が党中央に反旗
を翻して独自の新党を結成した場合、今回の総選挙の数字でいくと、
  全国得票率:小選挙区で5.18%、比例区で3.55%
  獲得議席数:小選挙区で29、比例区で8の合計37議席
という規模の政党になりますが、これを共産党の
  全国得票率:小選挙区で8.13%、比例区で7.76%
  獲得議席数:小選挙区で0、比例区で9の合計9議席
という数字と比較すれば、そこでは全国得票率と議席数の逆転現象が生じ
ていることが分かります。


> ところで、日本の小選挙区制って比例代表並立制?それとも併用性?
> 当初は並立制でしたが惜敗率を加味した時点で併用性になった気がしますが・・・

日本の現行制度は小選挙区比例代表並立制です。併用制ではありません。
並立制とは、小選挙区部分での議席配分と比例代表部分でのそれとが完全
に分離したものを指します。要するに、全然別の制度の選挙を二本立てで
行うわけです。
 # だからこそ、「並立」制という名前が付けられたわけで…。
それに対して、併用制は基本的に、
 ・議席全体の配分を比例代表で決定した後、
 ・具体的な当選者を小選挙区当選者(ドイツの場合、その割合は全議席
  の半分)で充当していき、
 ・小選挙区当選者では充当しきれない分を比例代表名簿の順に充当して
  いく、
という制度です。基本は比例代表制ですので、人によっては小選挙区併用
型比例代表制という呼び方をすることもあります。
 # 細かいことを言うと、ドイツの制度での議席配分方法はもう少し複雑
 # なのですが、ここでは割愛します。
日本の現行制度では、小選挙区部分での議席配分と比例代表部分でのそれ
とを完全に分離していますので、紛れもなく並立制です。

また、GONさんは「惜敗率を加味した時点で併用性{ママ}になった」と
論じてもおいでですが、前記事でも
>>    GONさんは惜敗率に言及しておいでですが、惜敗率というのは同順
>> 位の比例候補者の中での当選順位を決める指標であるに過ぎないのだとい
>> うことを失念しておられるのではないでしょうか。比例区での当選者数を
>> 決めるのはあくまでも比例区票の得票数であり、小選挙区での死票の数や
>> 惜敗率ではないのです。
と指摘した通り、惜敗率が議席配分そのものを左右することはありません
し、そもそも、「議席全体の配分を比例代表で決定」という要素が欠けて
いる以上、それは併用制ではありません。
 # やや乱暴な言い方をしてしまえば、惜敗率というのは、党が自分で決
 # めても良いはずの比例名簿の順位決定を有権者に丸投げして委ねると
 # いう制度です。何度も言うようですが、これによって獲得議席数が増
 # 減したりするということはありません。


> 要は選挙制度はその選挙区の民意が素直に繁栄されれば良いんです。
> 典型的な例が山崎元自民党幹事長の落選です。民主の候補が大差をつけて当選
> しましたからその選挙区の民意は山崎さんにNO!を突きつけたわけですよね。
> これが惜敗率が加味されていなかったら山崎さんも民意とは反対に比例で救われて
> 当選してしまっていただろうと思います。

細かなことかもしれませんが、自民党の山崎拓副総裁(当時)の惜敗率は
90.3%ですので、「民主の候補が大差をつけて当選」とまで言い切るのは
いかがなものかと思います。
 # ちなみに、この90.3%という数字は、全国の高惜敗率落選者ランキン
 # グで第6位に入るほどの“惜しい”数字だったりします。
 ### もっとも、そのランキングの1位から4位までが九州ブロックの他の
 ### 自民党候補者で占められていますので、復活当選の可能性という点
 ### から言えば、山崎候補の惜敗率の“惜しさ”はそれほど高くないと
 ### も言えますが。

それと、現行制度上、惜敗率を比例選出議員の決定に利用するかどうかは、
政党の側の裁量に委ねられています。今回の山崎候補のケースでは、たま
たま自民党が重複立候補者全員を等しく同順位に並べ、その中での比例復
活当選者の決定を惜敗率に委ねるという決定を下したが故に、GONさんが
御指摘になったような結果になったわけですが、もし仮に、自民党がその
ような名簿順位決定をせず、当選回数や閣僚・党三役経験などの順にしっ
かりと序列付けしてしまっていたならば(現に、共産党は全ブロックの比
例名簿順位を自分達で先に全て決めてしまっています)、恐らく、自民党
副総裁たる山崎候補はかなり上位に登録されて当選していたことでしょう。
 # さらに言えば、完全に順位を決めるところまでいかずとも、閣僚や党
 # 三役を務めている候補者の同列順位を、他の重複立候補者の同列順位
 # よりもワンランク上に優先させるだけで、山崎候補は無事に復活当選
 # を果たしていた計算になります。
-- 
*  Freiheit  | 安井宏樹(YASUI Hiroki), jyasui@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp     *
*  Recht     | 東京大学大学院法学政治学研究科・比較法政国際センター      *
*  Einigkeit | (現代ドイツ政治,ヨーロッパ政治史)                        *