プリンセス・ブライド
ちょっと出遅れ気味ですが、「Princess Bride」について。
あちこちのWeb(日記・レビュー・攻略など)で幅広く取り上げられていますの
で、いまさら特に書くこともないはずなのですが、どうもみる限り、私は相当
変わったバックグラウンドを持ってこのゲームに触れ、しかもそのバックグラ
ウンドに引きずられて最後まで行ってしまいました。
振り返ってみると、かなりバイアスのかかった読み方をしてしまったと思いま
すが、既に偏向してしまった意識の中でこの読み方が正当なものだったのかど
うかが判断できなくなってしまっています。
そこで、fjなら誰かいるだろうと思って、ちょっと書いてみることにしました。
「Princess Bride=プリンセス・ブライド」という方はこの先を読むかどうか
を少し躊躇されたほうがいいかもしれません。
^L
先
頭
や
末
尾
に
余
分
な
も
の
が
つ
い
て
い
る
作
品
を
ご
存
知
な
ら
こ
の
先
は
大
丈
夫
?
^L
# 以下、背景がわからないと意味不明な文章が続きます。ごめんなさい。
私がこのゲームのことを知ったのは、普通の人よりもかなり遅かったと思いま
す。確か9月のはじめ頃。
タイトルだけではそうは思わなかったのでしょうが、シナリオ陣に元長柾木さ
んが入っていると聞いたときに期待したものは、現実と虚構の境界がおぼろな、
ストーリが重なり合うような、重層構造の物語を期待しました。
ゲームをはじめてすぐ、昔々のおとぎ話が出てきたときに、「なんかそれっぽ
いかも」というかすかな望みを感じました。特にお姫さま主体の物語というと
ころが。ただ、冒険物語じゃなかったのが違和感ありましたが、そのまんまで
は芸がありませんし、下手すると興ざめになります。ですから、こんなものか
なとそのときは思ったのです。
その希望は、大正時代の昔話が出るに至って更に増幅されました。しかも、登
場人物が実在の人物であったとなればなおさらです。
# 今思い返してみると、やっぱりかなりバイアスかかってるかなという感じが
# しますね。
「プリンセス・ブライド」というタイトルである以上、お姫さま(王女様)が主
体の話になる、あるいは主体の話が絡んでくるのは当然のことで、現在と遠い
過去を近い過去の話が繋ぐなんてのも割とよくある構成ですから、思い込みっ
てのは怖いものだと。
さて、ここからしばらくは物語の構造的には特に語ることはないと思います。
キャラゲーとしてはいろいろありますけど。
ですが、やっぱりなにか影響を受けているかなという感じがしたのがChapter2
のはじめでした。この、メインストーリそのものを「おとぎ話」と評してしま
う、その形式に。
とは言っても、この後もやっぱりごく普通に話は進行していきますし、あまり
に量的に少なすぎるかなという気はします。ただ、ツボを抑えているというか
イントロダクションとか、そういう要所でこういう手法を使われますから、ど
うしても目立つのかなと。
そして、物語は結末へと向かいます。最終的に一人(初回は聖になりました)を
選んだ主人公がそのお姫様とともにチャペルへと。Chapter1の最後に設定され
た目標でしたし、演出も十分すぎるくらい盛り上がりました。「ゲーム」を管
理する裏方の存在も明らかにされたことですし。ここで、「王子様とお姫様は
幸せに暮らしましたとさ」になってもおかしくはないところです。
エンディングテーマ後にしばらく話が続くのはよくある演出ですし、こんなも
のだろうなと思い、やはり私の考えすぎかと思いました。一瞬は。ところが、
話はそれほど甘くありませんでした。話は終わるどころか新たに問題を提起し
た挙句にいきなりChapter3に入ってしまいます。
しかも、このChapter3が妙に長いし、割とどうでもいい話も含まれてたりしま
す。そうなるとやはり疑念が首をもたげてきます。この冗長、あるいは蛇足と
もいえる後日談はある種の「回答」なのか? と。
そうして、聖から、愛生、葛城、遥奈と進めていったわけですが(この、マニュ
アルの登場順という進め方はそれほど悪いわけではなかったと結果的には思っ
ています)、近過去の事実の補足や各キャラの人格形成に関わる背景などはあ
るものの、基本的には同じ形態のストーリが進んでいきました。
ここまで来て、やっぱり関連は薄いかとふたたび思い始めました。ところが、
最後の枝絵留でまたどんでん返しを食らってしまいました。そもそも、13日目
の夜になにも起こらなかった時点で、他の四人のキャラとは様相を異にし始め
ていることにはすぐ気づくわけですが、最後の最後になって「(1000年前の)そ
の昔話には続きがある」と来るわけです。
はじめに期待した、なにが真実でなにが虚偽かわからない、そんな話。さらに
は真実の話は裏切りから冒険譚へと変貌し、(この物語における)現実へと投影
されていく、もうこの時点で私は完全に「プリンセス・ブライド」という二つ
の作品の共鳴性を確信していました。
結末はちょっとロマンティックすぎたかなという気はしますが、あまりシニカ
ルにすぎると「意味不明」とか「狙いすぎ」とか「逝ってよし」とか言われか
ねませんし、妥当な落しどころとして選ばれたのでしょう。
長々と書きましたが、結局のところ作者は「プリンセス・ブライド(Princess
Bride)」を「プリンセス・ブライド(THE PRINCESS BRIDE)」を下敷きにして書
こうとしたのか、そこまではいかないにしろ、意識していたのかということは
やっぱり気になるところです。
ここまで先入観に引きずられた人はいないでしょうが、THE PRINCESS BRIDEを
知っていて(読んでいて)Princess Brideをプレイした方とか、あるいは事後に
THE PRINCESS BRIDEを読んだという方が他にいらっしゃらないかなと思って、
こんな感想じみたことを書いてみました。
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ここから先はレビューとか日記を読んでいても解決しなかった疑問など。
ちょっと詳細な図とか出したりしますので、終わっていない人はこの先は読ま
ないほうがよろしいかと思います。
^L
それは、ベアトリクスの家系について。家系といっても娘(養女)四人は相互に
は血が繋がってなかったわけなのでどう表現して良いかよくわかりませんが。
ともかく、最初聖を終えた時点ではこういう家系構造かと思ったわけです。
祖母 祖母 祖母 祖母
┌┴─┐ │ │ │
早智子 翔子 母 母 母
│ │ │ │ │
聖 愛生 葛城 逢坂 枝絵留
ところが、葛城と逢坂を終えた時点でどうもこういう構造であることが示唆さ
れます。
祖母 祖母 祖母
┌┴─┐ │ │
早智子 翔子 女1┬父┬女2 母
│ │ │ │ │
聖 愛生 葛城 逢坂 枝絵留
つまり、家系がひとつ足りないのではないかと。ですが、私は大きな見落とし
をしていました。理人もこの系列のひとつに加えないといけないのですね。つ
まりこうなります。
祖母 祖母 祖母 祖母
│ ┌┴─┐ │ │
母 早智子 翔子 女1┬父┬女2 母
│ │ │ │ │ │
理人 聖 愛生 葛城 逢坂 枝絵留
めでたい。ところが、枝絵留のストーリを進めるにつれてなんだか変な雲行き
になってきました。すなわち、
ベアトリクス─────────┐
┌───┬─┴─────┐ │
: : : │
祖母 祖母 祖母 祖父=実弟
│ ┌┴─┐ │ │
母 早智子 翔子 女1┬父┬女2 母┬父
│ │ │ │ │ │
理人 聖 愛生 葛城 逢坂 枝絵留
という系図になってしまったわけです。ベアトリクスの四人の娘のうち一人は
どこへ行ってしまったのでしょう? ありうる可能性としては、
・子孫を残すことができず、断絶した
・管財人が追跡できなかった
あたりを考えつきますが、お話的には母の家系がなんらかの形でベアトリクス
の娘たちに繋がっているのではないかと考えたいですね。で、中谷家は持ち前
(?)の調査能力でそれを突き止め、ゲームへの参加を認めたと思いたい。
そうなると、父方の祖母と母方の祖父が日本人ということなので、
ベアトリクス────────┐
┌───┬────┴──┬────┐ │
: : : : │
祖母 祖母 祖母 祖母┬祖父=実弟
│ ┌┴─┐ │ │
母 早智子 翔子 女1┬父┬女2 母┬父
│ │ │ │ │ │
理人 聖 愛生 葛城 逢坂 枝絵留
という具合になっていい感じ:-) です。
あと、枝絵留の出自に関しては、年代というか、世代のギャップも気になると
ころです。祖父がベアトリクスの実弟ということなので、祖父→父→枝絵留と
いう三世代で1923年からの80年をカバーしなくてはならないのではないかと思
われるからです。もっとも、ベアトリクスが娘たちを育て始めたはるか後に弟
が生まれたという可能性もないわけではないのかもしれません。このあたりの
描写が作品内にあったかどうか覚えていないのですが。
これは、他の系統についてもいえるような気がしています。現世代の年齢を建
前:-) で考えると、18〜20歳というところになりますから、残りの60年を二世
代でカバーしないといけません。ベアトリクスの娘たちは関東大震災の時点で
新生児だったことが示唆されていますので、平均的に見てそれぞれ30歳くらい
で子を設けることになります。これは戦前〜戦後すぐという年代を考えるとあ
まりに無理があります。特に、早智子さんや翔子さんが物語登場時点で50歳近
いってのはちょっとヤダ。:-)
というわけで、四世代でカバーすると20年×4になってちょうどいいのではな
いかと思いました。こうなるわけですね。
ベアトリクス────────┐
┌───┬────┴──┬─────┐ │
娘 娘 娘 娘 │
│ │ │ │ │
祖母 祖母 祖母 祖母┬祖父=実弟
│ ┌┴─┐ │ │
母 早智子 翔子 女1┬父┬女2 母┬父
│ │ │ │ │ │
理人 聖 愛生 葛城 逢坂 枝絵留
あと、実の娘は誰なのかというのも気になりますが(チェロつながりでいくと
理人か枝絵留が直系ということになります)、系図をいじくるのはこの辺まで
にしておいて、最後に「プリンセス・ブライド(THE PRINCESS BRIDE)」につい
て。
どういう作品かを説明するのはあまり好ましくないのではないかと思いますの
で、出版社とかだけ。早川書房からハヤカワFT85として出ています。長いこと
絶版だったのですが、しばらく前に30周年記念で重版されました。確か、重版
希望のかなり上位にいたためだからのはずです。
ただ、市中の一般書店で手に入れるのは難しいでしょう。SF/FT専門店はとも
かく、大型書店でもあるかどうか非常に怪しいと思います。ですから、確実に
手に入れたいのであれば、ネット通販がよいのではないでしょうか。
調べた範囲では、たいていのネット通販に在庫があるようです。
今となっては手法も語り口も刺激に欠け、著者の意図を見透かしてしまう人も
多いかもしれません。ですが、時期を考えるとかなり良作なのではないかと思っ
ています。最後の10行を読んであきれるためだけに買っても損はないかもしれ
ないとすら思っています。
--
中山隆二
nakayama.ryuji@anet.ne.jp
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