著作権教誨インタビュー (1 April 20x0)
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<完成された著作権システム>(April fool)

本レポートは 20x0年4月1日、著作権教誨におけるインタビューによる。


著作権のコントロールはついに完全になった。
あらゆるコピーは監視され、著作権料が自動的にチャージされる。
コピーを仮に違法な使用に供しようとしても、システムが自動的に阻止する。
これによって、著作権侵害は起こり得なくなり、あらゆる人が著作権に関して安
心していられる世界が到来した。

全世界が国際著作権システムに加入している。
このシステムに加入しない国家は『ならず者国家』と見倣され、国連による武力
行使が決定されている。

1970年台までは個人的なコピーは自由だった。 しかし、コンピュータとインター
ネットの普及により個人的なコピーも違法であるような解釈がなされるようになっ
て来た。 20世紀も終る寸前に、原理的にコピーができないシステムが開発され、
実用化された。 コピープロテクト破りは技術的には簡単であるが、法的に如何
なるその種の技術も違法とされた。
21世紀が始まった時、著作権は認めるが、コピーは自由にさせよ、という要求が
湧き起こり、この著作権システムが開発される発端になった。


著作権のコントロールを完璧に行なうため、あらゆるコピーは電子的に行なわな
ければならなくなった。
電子鉛筆が提供され、殆どあらゆる人が使用できるようになった。 体が不自由
でも、たとえ手がなくても使用できるよう、様々な形式の電子鉛筆が開発された。
これによって、メモのための過去の鉛筆は使用を禁止される事になった。

全ての著作活動とその使用を完全に監視するため、あらゆるコンピュータは
1S0 規格であることが義務づけられている。 違法なソフトウェアは中央(政府)
機関による認証の段階で拒絶される。 指キタス時代ではありとあらゆる所にこ
の 1S0 コンピュータが仕込まれており、あらゆる無線も 1S0 によるネットワー
クの構成物の一員である。 人が扱う物全てには RF タグが仕込まれており、こ
れによって人間に(インプラントで) RF タグを移植しなくても、人物を特定でき
るようになっている。(監視カメラ、指紋や網膜照合といったもので頻繁に RF
タグと人物の整合性が確認されている。)

環境問題から、紙を媒体とする図書は発行禁止となった。 全ての図書は電子的
に出版される。
紙に代わる、電子紙が開発された。 やや厚めの紙のようなディスプレイで、極
めて高精細である。 もちろん、ワイヤレスであり、従来の紙のような感覚で使
用できる。
この電子紙に高精細のディジタイザが仕込まれた物と先の電子鉛筆とが現代の筆
記用具である。 全ての操作が記録され、何時でもプレイバックできる。 昔なが
らの分筆家はこれを好むようだ。 必要に応じて文字コードに認識変換される。

本そっくりの装丁の電子本も登場した。 ただし、枚数が紙より大部少ないが、
同時に開くページは限られているから、瞬間的に表示を切替える事で実効ページ
数を確保できる。 本をめくる雰囲気も再現されている。

全ての人は、過去に読んだ本、見た映画、テレビ、インターネット、あらゆる著
作物の参照が全て記録されている。 従って、独自の著作物制作である事が著作
権システム側から保証される。 個別の作品が同一内容であった時、過去に盗作
の嫌疑を掛けられた事が良くあったが、そのようなもめ事はなくなった。
過去の作家には調査魔とも言えるような、徹底的な調査をベースに作品を書く作
家がいたが、これは今では過去のものになりつつある。 なぜなら、ありとあら
ゆる所に他人の作品を直接的にしろ間接的にしろ引用する形になるため、自分の
本のために他人に著作権料を徴収される結果になるからである。 つまり儲から
ない。

最近の研究者は過去の研究を調査しようとしない傾向が顕著である。 学会でそ
の研究が過去のどれそれと同一であると指弾されるよりも、著作権料を徴収され
るのを嫌うようだ。 著作権システムによってその研究の独自性が保証される結
果、自分の研究自体を著作権として確保できるというメリットもある。
最近、各学会の形骸化が顕著になり出した。

あらゆる情報を電子化する時に、それを行なった者に新たな著作権が与えられる
事になった。 これによって、著作権切れで、それまで 全く自由にコピーできて
いた物に突然著作権が発生した。 これによって巨大な富を手にしたのはもちろ
ん出版社である。

今や、バッハにもベートーベンにもモーツァルトにも新たな著作権があり、これ
ら古典を演奏すると自動的に出版社に著作権料が徴収される。
最近のニュースでは、中学生の数学の教科書でピタゴラスの定理に関して著作権
料が徴収されたことで話題になった。

料理番組を見て、レシピを手書きして、ちょっと手を加えて、お隣に教えて上げ
たら、著作権料が放送局に支払われていた。 殆どの人は自動支払い(自動徴収)
なので気が付いていないが。

この著作権システムの予期せぬ効果として、犯罪(粗暴犯を除く)の激減が起こっ
た。 特に、贈収賄や政治違反が皆無になってしまった。 またグレーであったロ
ビーストの活動も金に絡む物は消えてしまった。 金にものを言わせる時代は終
り、情報にものを言わせる時代になったのである。


薔薇色の著作権システムだが、極最近、やっかいな不穏な動きが感じられる。
南夕闇国は国内の著作権システムに手を入れて、あらゆる国民の思想調査に乗り
出した。 国際条約で想定していない事態であったが、国連の非常任理事国のほ
とんどが武力制裁を叫び始めた。 しかし、なぜか常任理事国の全てが一致して
この事態を黙殺している。
著作権システムは個人の生まれた時からの(いやそれ以前から)あらゆる著作権情
報を収集、管理している。 何を読んだか、何を書いたか、誰と通信したか、誰
と話したか、一人ごとで何を言ったか、どこへ行ったか、等など。 これらプラ
イバシーに関する内容は同システムでは厳重に管理されている。
権力者が著作権システムに介入してはならない事が、国際条約で定められている
のだが、誘惑に負ける所があるようだ。 超大国の麦国の AIC が著作権システム
に侵入しているらしいことは有名だが、いまだ証拠がない。

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未来レポータ: 山田邦博
               1 April 2004

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