阿部と申します。

あまり印象批評はしないようにとは思っていたのですが、
たまにはしゃべりたい時もあるので投稿します。

今朝(2003年12月10日)付の朝刊各紙は、自衛隊のイラク派遣
基本計画閣議決定のニュース一色でした。

特に面白かった記事は、毎日新聞1面と3面の「平和立国の試練
第1部 1」でした。この記事は、与党、公明党の動きなどの国内
事情だけでなく、朝鮮半島情勢にも目を配り、米国のネオコンの
動きをも捉えており、けさの他紙をざっとみた限りはなかった
視点でした。他紙が既に報じていたとしても、今朝という
タイミングがよい。

同じ「平和立国の試練」というタイトルが付いた12、13面特集は、
これまでの自衛隊PKO活動や自衛隊海外派遣を巡る歴史と論議を
まとめるとともに、Q & A方式で解説。これも読みごたえのある
特集でした。

外報面に掲載された岸本欧州総局長の論説も、米英の外交方針と
仏独(大陸型)の外交流儀の違いを引き合いに出し、日本外交を
論じたもので、興味深かったです。

ただ、社説がいったい何を言いたかったのかさっぱり分からない
もので、ほかの記事がよかっただけに、読んでいてがっかりです。
社説というより、解説になっていて、何かを主張していると
いえる部分も、ありきたりのことしか言っていない。
http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200312/10-1.html

朝日のようにはっきりと反対論を掲げるでもなし、さりとて
読売や産経のように賛成論はちょっと、という腰の定まらない
ところが、ありありと現れていました。
よく「朝日・毎日」「読売・産経」という対比で捉えられる
ことがありますが、毎日新聞の論調はどちらかというと現状追認の
部分が多かったりするような印象があります。現状追認といっても、
読売新聞ほど確固とした主義があるのではなく、必ずしも賛成では
ないのだけど現実を考えると流されてしまう、みたいな感じ。

このあたりの腰の定まらなさが、毎日新聞の印象を弱めていると
したら、もったいないです。

ただ「庶民」あるいは「生活者」(とくくることは危険もあり
ますが)という視点をうまく定め、是々非々をうまく貫けると、
おもしろい位置取りができるのではないかなと思います。

つまり、はじめに主義主張ありきではなく、この施策(例えば
自衛隊のイラク派遣)は、われわれにとってどういうメリット
(米国との同盟、中東利権などか?)/デメリット(近隣諸国
からの不信感、テロの標的になる可能性、「平和主義」に傷
などか?)があり、比較するとどうなのか。その結果、どちらに
重きを置くべきだから、こうするべきだ、という主張の組み立て
方で行くと、面白いのではないでしょうか。

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阿部圭介(ABE Keisuke)
koabe@mcc.sst.ne.jp (NetNews用)
関心 ・専門分野 :
 新聞学(ジャーナリズム、メディア、コミュニケーション)