こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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  │ 【 軽 音 部 、 西 へ  - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day -1day 07:45AM ### @ 学園都市 第6学区 収容施設 @

  かたかたかたかたかたかた ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ がじがじがじがじがじ

律 「・・・メシが遅ぇーぞコラ! さっさと持って来いやコッチは大事な客人だぞ!」

  と何処かに仕掛けられている(と聞いた)盗聴器に向かって叫んでいる。

  律のイライラが止まらない。昨日からずっとこんな調子。

  傍目で見ていても判る。大暴れし出さないだけ未だマシだが。昨日の大暴れの所為で
 壊滅してしまい、未だ修理にも交換にもこないフォーン・ブースとやらの残骸を見て、
 イライラがとまらない律を見て、澪はまた溜息をつく。

澪 「・・・はぁ。」
律 「っだよー、景気悪いなぁ。」
澪 「当たり前だろ。この状況で景気が良い顔をしていられる奴がいたら見てみたいよ」
律 「だからって塞いだ顔をしてたって事態は好転しないっつーの。」
澪 「大暴れしたってイラついたっても、ね。また昨日みたいなアクションをする気?」
律 「・・・あれは、悪かったよ。でもなぁ、」
澪 「わかってる。私だってあれは我慢出来なかったし。」

  そう言いながら、二人でフォーン・ブースの残骸の山を見やる。瓦礫の中には、辛う
 じて元はドラムセットであったりベースギターであったりアンプであったらしい残骸も
 見て取れる。今となっては地金戻し向け再生可能産業廃棄物一山幾らな代物だが。

律 「アイツら、澪のベスを差し置いて、あんなの寄越して『本物ですよー』って!」

  ぼすっ

  どうやら昨日の顛末をまた思い出してしまったらしい。憤懣やるかたないと言った、
 烈火の表情で律が枕を殴りつけている。そんな律を見て、なんだか澪は可笑しく思う。

  ふふっ

  あ、良かった。澪が笑った。ほ、として律も、へへっと微笑む。

  こちらも同様、自分の愛機ではないソックリの偽物を一発で見破った律と澪だったが
 何せ大物のドラムセットが相手。連絡が取れてから練習しよう、とセットを二人掛かり
 で組み始めてからだったから、連絡する前に愛機に触(さわ)れた唯や梓に比べ、気付
 くのは若干遅れた。が気づいた途端に「なんだよコレは!」とメイドに噛み付き従業員
 に噛み付きMAR?とか言ってる黒スーツに噛み付きフォーン・ブースのモニタ越しに
 ロクでもない言い訳をする副長とやらに噛み付き、結局自分たちが体良く拉致監禁幽閉
 されている事を黒スーツな局員に暗に明に示され自覚した後はそりゃもう大暴れ。かく
 て格の次第と相成った。まぁ暴れたのは主に律だったが、最初に威張りくさった副長が
 映るモニターへフェンダー(のソックリさん)を叩きつけたのは澪だった。普段は怒ら
 ないどころか人見知りで怖がりで泣き虫な澪なのに、あの時の澪の形相は、そりゃあ
 そりゃあ怖かった。半泣きの般若だぞ。が、そんなコッチの恐怖はおくびにも出さず。

律 「・・・なんだよ?きもちわるいなぁ。」
澪 「え?あ、違う。ゴメん。」
律 「?」
澪 「それと、・・・ありがと。」
律 「わかんねーよ?」
澪 「真っ先に怒ってくれて。」

  律は自分のドラムセットより先に「なんだこのフェンダーは!」と叫んだのだった。

律 「澪だって怒ったじゃん。それも最初に。」
澪 「あ、ほんとだ。そっか。」
律 「そーだよ。」

  また、二人で見交わし、ふふっと笑う。

さわ「・・・ダメねやっぱり。」

  それまで窓際で自分の携帯を操作していたさわ子先生がベッドサイドに戻る。

澪 「やっぱり繋がりませんか。」
さわ「J-Phoneなのに。」
律 「・・・さわちゃん、なにそれ?」
さわ「えぇ!あ、そうか知らないのね。CMネタは風化するってホントなのね。」

  なんだかこっちへ戻ってきた時より一層がっくり来ているらしいさわ子先生を見て、
 相手の拉致監禁っぷりがホントのホンキである事を今更ながら自覚する。117にも
 104にも繋がりYAHOOだってGOOGLEにだってGREEにさえも繋がる携帯なのに、何故か
 110にも119にも2ちゃんにも自宅にも友達ンチにも繋がらず掲示板にも書き込め
 ない。交換器の段階で操作されている事は間違いなく、つまるところ携帯は使えない。

  部屋の片隅で控える、メイド服のあの子が教えてくれたとおりだ。

律 「こっちのメールも、ぱー。サーバーに取りにもいけない。新着なーし。」
澪 「不思議だ。律とさわ子先生からのメールは届くのに。」
さわ「つまり、そう言う相手なのよ。私たちが今、敵に回しているのは。」

  ぞ、とする。背筋がそそけ立つ。昨日、あの子からバスルームで聞いた時には、熱い
 湯船に浸かっていても寒気がした程だった。その感覚が今も蘇る。

律 「どーやら、冗談ごとでもフカシでもねーって事だ、な。」

  真剣に考え込んだ顔つきをしながら律が言う。一心不乱に何かを考えているらしい事
 は、何時もの膝を抱え込んだ姿勢で判る。こう言った時、こんな時の後に律が下す判断
 は信頼出来る。だから部長。こんな時なのに何故か澪はほっとしながらその律を見る。

  ふ、と視線だけで律が部屋隅のあの子を見やる。瞼だけで目配せをし、かすかにあの
 子が首肯するのを見た。澪も、さわ子先生も、瞼だけで頷く。

  戦闘、開始だ。

律 「おーい! ちょっとー!」 再び、部屋の盗聴器に向かって律が叫ぶ。

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今回は、一先ず此処迄。 では。
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