Re: HTT GO WEST! -live@7thDct- #005
こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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│ 【 軽 音 部 、 西 へ - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day -2day 03:35PM ### @ 桜が丘高校 職員室 @
「え!軽音部の方々が、いらっしゃらない!?」
一般の高校の放課後は割と早い。夕刻の日差しには未だ早めの明るい光が差し込む
職員室の中に、澄んだソプラノが響き渡った。三々五々残っていた職員たちが目先の
仕事から面を上げ、声の主を探す。栗色の長い髪をツインテールに分けた、割と小柄
な何処かの学校の制服姿の少女が、入り口最寄の職員を捕まえて声を上げていた。
少女「どういう事ですの!?」
職員「だから軽音部は本日から明後日まで、招待を受けて出掛けているんです。」
少女「招待って何処からですの!?」
職員「えーっと、確か、学園都市の、」
そこまで聞ければ十分、とばかりに少女は職員の首根っこを掴んでいた手を離し、
脱兎の如く職員室から駆け出していった。
職員「あ、ちょっと!」
来客の氏素性は学校のセキュリティの為に一応押さえておかなくてはならない。
職員は少女からほんの2〜3秒遅れで職員室から顔を出し、
職員「...あれ?」
数十m先まで見渡せる学校廊下の何処にも、もう少女がいない事に驚く事になった。
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### D-day -2day 03:37PM ### @ 桜が丘高校 隣接道路上 トレーラーカーゴ @
ひゅん、と窓のない鋼鉄の貨物カーゴの中に風が巻き起こる。貨物用の薄明かりの
中に、その少女が舞い降りる。何処の扉も開けず、何処の窓も開かず。
が、薄明かりの中で待機していたらしい数名の人影は、そんな少女に何も動じず、
すぐに回りを囲んで口々に尋ね始めた。何れも制服姿の少女。茶髪ショートカットの
少女はツインテールの彼女と同型、他2名はセーラー服、残り1名は紺ベスト。
「守備は!?」「どうだったの!?」「皆さんはいらっしゃったんですか!?」
その声の何れもに答える訳でもなく、一言だけ言い捨てた少女。
「やられましたわ!先手を打たれました!」
はっ、として中央の少女を囲む皆が黙る。誰もが懸命に「次の1手」を考えている。
だが相手に出し抜かれたと言う思いは重い。ましてこれこそ乾坤一擲の手だったのに。
と、そこにコンコンと、カーゴの外から叩く音が響く。紺ベストの彼女が答える。
何時もは瞳に力強い光を宿す彼女だが、今は流石に元気なく萎れている。
「姐さん、姐さん?」
「え、何?」
「そろそろ車を出して良いっすか?こんなデカいトレーラー、そうそう止めとける
地域じゃないんでココ。」
「…判ったわ。とりあえず車を出して。」
「行き先は?」
紺ベストの彼女が、周囲の少女を見る。暫く押し黙っていた彼女たちが、悔しげに
頷く。こちらも悔しげに彼女らを見ると、紺ベストの彼女が言う。
「学園都市へ。」
数秒も経たないうちにトレーラーが動き出したのが判る。立ったままでは転ぶだけ
になるのも詰まらないので、三々五々彼女たちが座る。鋼鉄の箱の中だが、学園都市
の技術が使われているトレーラーに加えて、予定されていた事態のためにあらかじめ
カーペットも敷いてきたので、座り心地は悪くない。
まさか、またこの5人だけで桜ヶ丘を離れるとは、誰も思っていなかったが。
一様に押し黙ったままだった彼女たちだったが、最初に口を開いたのはツインテー
ルの彼女、白井黒子だった。
黒子「…それで、どうなさいますの、学園都市に戻って? 固法先輩。」
美偉「多分もう、軽音部の皆さんは局に拉致されている筈。
だから学園都市に戻って、彼女たちを助けだします。」
佐天「それって、明らかに風紀委員(ジャッジメント)の業務逸脱ですよね?」
黒髪ストレートのセーラー服少女からそうツッコまれ、美偉は一瞬、押し黙った。
が、黒子が言葉を引き取り、続ける。もう一人のセーラー服少女初春飾利が続く。
黒子「風紀委員(ジャッジメント)の業務逸脱を言うなら、今の活動もそうですわよ。」
初春「無許可での都市外外出、無断での都市外住民との接触、都市外での能力使用、
ほかエトセトラエトセトラ...数え上げれば軽く、セヴンアップですね。」
佐天「退学処分、かぁ。」
美琴「退学だけで、終わるなら、ね。」
はっとして、黒髪ストレートの少女は傍らの茶髪ショートカットの少女を振り返る。
自嘲気味に笑いながら、御坂美琴は言葉を続けた。
美琴「レベル0の佐天さんやレベル1の初春さんは兎も角、学園外でも実用になる能力
を発揮できる私や黒子や固法先輩は、学園が離しゃしないわ。良くて飼い殺し、
悪ければ...」
自分たちが今、どれだけの事をやっているのか、やらかしているのか。事を始める
前から覚悟がなかった彼女たちではない。が、計画の難度が上がるにつれ、また敵の
動きがこちらの予想を超えるにつれ、まだティーンズの彼女たちが恐れをなすのも
また無理からぬ事だった。
初春「でも、それでも私たちがやらなくちゃならないんです!」
頬を赤らめてまで、必死の形相でそう叫ぶ、まだまだ子供と言える程度の彼女。が、
そのストレートな言葉は、もう一度、ここに集う彼女たちの意志を固めた。一瞬だけ
挫けかけた表情を再び引き締めると、美偉は初春を促した。まだ瞳に光は戻らないが。
美偉「初春さん、桜が丘高校のサーバーに侵入出来る?」
初春「もう出来てます。」
そう言いながら初春が背中のデイバッグから愛用のネットブックを取り出す。通信
回線は流石につい先ほど偽名で入手した携帯経由だが、ネットブックのスペックと
ツールは学園都市のものがそのまま外界でも使える。外界の市井のサーバーのセキュ
リティなど、初春の腕に頼るまでも無く紙細工も同然だった。情報担当は速度戦優先。
黒子が桜が丘高校に接触している間に、初春は桜が丘高校関連の全てのサーバーへ
侵入を完了しデータを拾い上げていた。そう、学園都市の外と内では数十年以上の
技術格差が存在する。民生用コンピュータのハード・ソフトと言えど例外ではない。
美偉「メールサーバーから軽音部関連の文章を拾って。学園都市関係の物だけでいい。
それをざっと見せて。」
たたん、と初春がキーボードを操作する。ブック液晶面の上端に着いたカメラ兼用
のプロジェクターからカーゴの内壁へ複数のウィンドウをざらっと映し出す。全員が
それらを眺め、使えそうな情報をもう一度浚い打そうとしていた。
初春「迂闊でした。接触は、つい3日前。学園都市で週頭のバックアップデータを
ハックした時は、こんなのありませんでした。」
佐天「仕方ないって。学園都市のサーバー相手じゃそれが精一杯だよ。」
黒子「だから、随分と電撃的な作戦ですわね。御陰で、ほらこのメール、副長自らの
アドレスですの。道理であちこちの部局の頭を飛び越して色々出来る訳ですわ。」
美琴「オマケに随分と大盤振る舞いだ。よっぽど無理矢理にでも招待したかったみたい。
『食事も宿も御心配なく…何人でおいで頂いても結構です…お迎えにあがります』
すげー。アゴアシ付きで人数無制限てか。どうやって入管許可書のハンコを掻き
集めるんだか? あれ人数分要るんだぞ。」
初春「それ、要らないと思いますよ?」
え?と美琴が初春を振り返る。プロジェクターとして使っているネットブックへ、
初春は手元のモバイルを繋ぎ別データを操作し表示する。黒塗りのリムジンが映る。
初春「桜が丘高校近隣の市街監視カメラの映像です。今から約4時間前。」
佐天「うひゃあ!学園外部理事用のリムジンじゃない!走ってるの初めて見た。」
黒子「なるほど。これなら都市外壁の無人ゲートはフリーパスですの。」
美琴「有人監視されていたって、これにチョッカイ出す警備員なんてないよね。」
美偉「待って!」
は?と全員が固法先輩を振り返る。一心不乱に考え込んだ表情をしている先輩が、
再び上向く。…瞳に光が戻っている?
美偉「アゴアシ付き・・・人数無制限、なのね? 外部招待が。」
美琴「メールには、そう書いてありますね。しかも事前申請は無し。」
美偉「あのリムジンがゲートを通過した時のデータ、集められる?」
初春「大丈夫です。ゲートチェックデータは普通に警備局の公開データですから。」
美偉「そうじゃなくて、ゲートのアクセスキーとかリムジンのパスコードとか、全部。」
黒子「判ってますの固法先輩?それ、普通に犯罪教唆ですわよ?」
初春「…大丈夫、です。今回は秒単位でリムジンの通過時データが揃っていますから、
電界データとか磁歪データとか周辺情報から集めて、整合出来ます。」
はぁ?と黒子が初春へ振り向く。にこ、と幾分悲壮な面持ちで微笑みながら、初春
が黒子に表情で答える。毒を食らわば皿まで、と。やれやれ、と黒子が頭を振る。
美琴「…だから先生!? シスターズのネットワークは使えないの!? …あぁそう。
つまりそっちは、そのくらいには何とかなったのね…ん。後は使いどころ、か。」
Pi。と軽い音を立てて美琴が手元の携帯を切る。使い慣れた学園都市の携帯とは
違うので、わざわざ電源ボタンを探してから押したりしている。何事?とこちらを見て
いる黒子や佐天へ、やれやれと言った表情で頷く。だが残念そうな表情ではない。どう
やら、こちらにもまだ希望の芽はありそうだ。徐々に皆の表情が上向いてゆく。
ガンガン!とカーゴに音が響く。何事!?と全員がそちらを向くと、美偉が運転席
をカーゴ越しに呼び出していた。なんすか?と助手席のヤンキーが顔を出す。
美偉「今から2日以内、明後日の夕方までに、コレと同級のトレーラー集められる?」
ヤン「ドライバー付きで、スか? そりゃ姐さんからの声掛りって言ゃあ、
俺らみたいに外に出たビッグスパイダーの仲間(ツレ)が、もうナンボでも。」
美偉「うん、集められるだけ集めて。それと、別口に10台…いや、5台でいい。
車ごとかなり無茶するかも、な条件で。今晩までに。お願い。」
ヤン「ムチャって...わぁりました!別口で腕が立つやつ、5台を集めます。」
美偉「忘れないで。そっちの5台は、かなり古いタイプで、ね。」
ヤン「判ってますって。EGIも付いてないようなディーゼルで、でしょ?」
ヤンキーがグッと親指を立てると助手席に引っ込み携帯電話で話し始める。と、
こちらでも美偉が、これも美偉のコネのヤンキーが何処からか手に入れてきた携帯を
使い始める。あっけにとられながら3人は美偉を見るばかり。初春だけはネット
ブックを鬼のように酷使している。繋げられるだけの携帯(これも美偉のと同様に
ヤンキーが何処かから手に入れてきたもの)を繋ぎまくり、そのうち脚まで使って
叩き始めるんじゃないかといった勢いでキーボードを叩きまくっている。
美偉「…うん、そう。だからアンタの昔のコネで、あの時と同じ様に、明後日の夕方
までに何人集められる?…フザケないで!全然足らないわよ!あの時と、ううん
あの時以上なくらいに頭数が欲しいの!…そう、頭数さえあればいい!質なんか
どうでもいい。それをあの時と同じ様に…そう、詰め込んで。あの時と同じに。
…そのくらい?うん、まぁいいわ。じゃ場所は同じ。そう、台場ふ頭。じゃ。」
Pi。美偉が携帯電話を切る。何事?と美偉を見る3人の向こうで、初春が上気
した頬で顔を上げる。こう言う表情をドヤ顔と言うのだろう。ネットブックから携帯
を1台外し、美偉へ投げる。
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今回は、一先ず此処迄。 では。
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