首相や閣僚が、靖国参拝の理由を説明したり、戦没者に対する追悼のことばを捧げるときに、よく使われるのは「尊い兵士たちの犠牲の上に今日の日本の繁栄がある」というフレ−ズである。
 これに対してある老兵は「理性的に考えれば戦後の繁栄と兵士の死は全く関係ない」と言っているが、これは全く正論であり、筆者も常々そう思っていたことである。
 これまでの戦争で戦死した者の死は、判断を誤って戦争に突入した為政者に原因がある「ムダ死」である。
 「ムダ死でした」では本人にも申し訳ないし、遺族も無念だから、「兵士の死という尊い犠牲の上に今日の日本の繁栄がある」などと綺麗ごとを言って誤魔化しているだけである。これはインチキ政治家のやることである。
 8月15日恒例の「全国戦没者追悼式」での天皇のお言葉には、そんな表現はどこにもないが、麻生首相の言葉にはそのフレ−ズがきちんと出ていることが何よりもの証拠である。
 一方では「戦争は悪だからやめよう」と言いながら、このフレ−ズでは「戦争は国の繁栄の基礎になる」ということにもなりかねないのだ。
 好い加減な言葉遊びはやめてもらいたい。
 村上新八