図書館の本棚を眺めていたら、「地には平和を」の新風舎文庫版という
やつに遭遇しました。あまり聞き慣れない出版社ではありますが、内容
的には、1963年の同題の短篇集を2003年に文庫化したものらしいです。
40周年記念とかそんな感じだったんでしょうか。ま、それはともかく、
とりあえず未読のもの(ともう1本)だけ、ササッと読んできました。

いちばん印象に残ったのは「釈迦の掌」。導入部のあたりは中年オヤジ
のエロ奮闘記というか、瞬間移動装置の変わった使い方の話、みたいな
感じなんだけど、最後まで読むと一種のホラー。つうかこれ、よく考え
たら「たんぽぽ娘」じゃないですか。

調べてみると、「釈迦」の初出は1963年。「たんぽぽ」の初出は1961年
で、邦訳初出は1967年っぽい。小松氏がオリジナルを読んだか人伝えに
あらすじを聞いた可能性もなくはないけど、ひとまず偶然と解釈してお
く方向で。ていうか、仮にイタダキだとしても、これだけアレンジして
あれば、さすがというしか。

つか、「釈迦」を読んだあとで「たんぽぽ」の内容を思い返すと、あれ
も実は結構怖い話なんじゃないか、という気がしてくるし。もしも小松
氏がそんなふうに「たんぽぽ」を読んだのだとしたら、それはやっぱり
さすがというしか。

あと、「失格者」とか「ホクサイの世界」は、いかにも「トワイライト
ゾーン」とか「世にも奇妙な物語」向きの、コンパクトにまとまった、
良く出来た作品と思いました。逆に「蟻の園」は、せいぜいウルトラセ
ブンかな、とか。←ヲイ

「易仙逃里記」は、中身は案外どうってことなかったけど、とりあえず
タイトルがエキセントリックのもじりなのにいま気づいた。

で、全11作品のうち上記を除く6作品はいちおう既読だったのですが、
それでもつい再読しちゃったのが「終りなき負債」。なんか好きなんで
すよね、これ。でも今回再読して気づいちゃったのが、この作中世界の
労働環境って、いまの現実の日本の非正規労働云々のそれと大差ない、
ってこと。資本主義の本質つったらそれまでなんだろけど、なんつうか
ヤな感じ。
--
AMAUMA