国買いの世界的金融危機は、アメリカのサブプライムロ−ンのリスクを回避するために、金融工学を駆使して、小刻みに切り刻んで、優良債権に混ぜた証券を作り上げ、世界中の金融機関に売り捌き、それが焦げ付いたのが原因であることは周知の通りである。
 しかし、これを資本主義の末路だと思うのは誤りだと思う。
 資本主義は、自由な市場経済を前提として、投下した資本を増価させることを使命とする制度であるが、今回の金融危機は、これを無原則に野放しにした結果なのだ。
 米国のもの造り産業は、自動車を除いて1980年代に日本に敗れ、1990年代には中国をはじめとする新興国に敗れ、その代わりに、もの造りからバクチ的なマネ−経済に軸足を移したしたのだ。それと共に、金融工学を発展させ、様々な金融派生商品やレバレッジなどの金融手法を開発し、それを取り入れてきたのである。
 その傍ら、米政府は、「市場のことは市場に任せておけば、うまくやるのだ。政府は介入すべきではない」という市場万能主義を固執した。
 その結果、バクチ的マネ−経済が暴走し、今回の金融危機を招く羽目に至ったのである。
 その裏には、米国民の借金して消費するという国民性と中国や産油国の膨大な余剰資金の米国還流という事情もあったことは見逃せない。
 今回の金融危機については、FRBのバ−ナンキ議長も「金融規制が不十分だった」ことを認めながらも、現在のアメリカの法制では、「FRBの規制の役割は、銀行にのみ限られており、野田の証券会社や住宅金融に対する規制強化は十分にはできなかった」とも述べているのだ。
 このように、「市場万能主義」「政府不介入の放任」「規制法なし」の三悪が、是正されない限り、このような金融危機は遠からず再発するのである。
 この危機を機に、ドイツではマルクスの資本論が、日本では小林多喜二の「蟹工船」が読み返されている、というが社会主義に転換することなどは絶対にあり得ない。
 バクチ的マネ−経済の暴走を規制することで切り抜けられるはずである。
 村上新八