Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)

携帯＠です。

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第４０話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう２次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。

Message-ID: <fdl90t$30g4$1@ccsf.homeunix.org>の下にぶら下げています。

（その１）は、Message-ID: <fdlb9p$5ob$1@ccsf.homeunix.org>から、
（その２）は、Message-ID: <ffc19v$1psh$1@ccsf.homeunix.org>から、
（その３）は、Message-ID: <fhor52$i8n$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その４）は、Message-ID: <fitbqv$1l4o$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その５）は、Message-ID: <flqd7m$1fri$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その６）は、Message-ID: <fmt1m5$acr$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その７）は、Message-ID: <fp8a7u$2ort$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その８）は、Message-ID: <fs24kl$1pj1$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その９）は、Message-ID: <fvk0mb$12hq$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その10）は、Message-ID: <g2gb50$2fjp$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その11）は、Message-ID: <g747sc$2ari$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その12）は、Message-ID: <g9db9v$bdn$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その13）は、Message-ID: <g9vukm$2cqe$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その14）は、Message-ID: <gaki7e$220j$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その15）は、Message-ID: <gc7qg2$16qq$1@sakura.ccsf.jp>から、
（その16）は、Message-ID: <ge0hbk$31ia$2@sakura.ccsf.jp>から、

それぞれどうぞ。

★神風・愛の劇場　第１７６話「天使が見える乙女」（その17）

●砲台山公園

「都！」
　偽ジャンヌと都を載せ、「ももたとくりこ」モニュメントは、ゆっくりと夜空へと
上昇していました。
　もしも、怪盗ジャンヌの姿であったなら、一飛びで飛び乗れそうな距離。
　しかし、ロザリオはノインに奪われたままとあっては、変身することは出来ません。
「ん…」
　まろんは、目を閉じて精神を集中しました。
　集中すれば、ロザリオなんか無くても。
　しかし、その努力はまたしても無駄に終わりました。
　変身を諦めたまろんは、目を見開きます。
「あれ？」
　モニュメントは、殆ど移動していませんでした。
　そう言えば、どうやってあのモニュメントを動かしているんだろう。
　あの偽ジャンヌが動かしたのだろうか。それとも、他の誰かが？
　そう思い、まろんはモニュメントの更に上を見上げ、あっと声を上げそうになりま
した。
　モニュメントの上空には、羽根を生やした天使に見える者共が、丁度モニュメント
が中心になるように円陣を組み、モニュメントの動きと彼等の動きは、一致している
ように見えました。
「うわぁ。大変そう…」
　天使の力を持ってすれば、簡単に動かせると思ったのは、気のせいだったのだろう
か。
　遊園地の時には、あれだけ巨大なジェットコースターを破壊してみせたのに。
　どちらにせよ、これはチャンスとまろんは捉えました。
　この程度の速度であれば、下から追跡出来る。
「えっ？」
　走り出そうとしたまろんの身体が宙に浮かびました。
「えっ？　えっ？」
　宙に浮かんだ自分の身体は、モニュメントから反対方向に遠ざかっていて、まろん
は、足をばたつかせました。
「落ち着くですです！」
「セルシア？」
「はいです」
　まろんは、セルシアに両脇を抱きかかえられた状態で、空中に浮かび上がっていま
した。
「丁度良かった。セルシア、あれ、追いかけて！　都が連れ去られちゃったの！」
「駄目ですですっ！」
「どうして！」
　まろんを抱きかかえたまま、セルシアは指を指しました。
　前方には、モニュメントを運んでいるのとは別の、天使に見える者達が何時の間に
か、十数人も立ち塞がっていて、まろんは先程自分を邪魔したのは、あれかと思いま
す。
「あれ位だったら…」
「無茶言わないですです！　ここは一旦引くですです！」
「待って！　嫌！　都が！　都が！」
　足をばたつかせるまろんを必死に押さえながら、セルシアは後退して行くのでした。


●オットー隊陣地

　都達と怪盗ジャンヌが激闘を繰り広げている間、トキも人族と思われる敵との戦い
を繰り広げていました。
　敵は、術を封入した銃弾による攻撃、魔法陣による防御、転移術及び浮遊術による
移動、それに指揮官の４名からなるチームを組み、そのチームが複数存在して、代わ
る代わるトキの死角から攻撃を仕掛けて来ることを戦いの最中、トキは観察しました。
　もっともその攻撃は、昨日の戦いでもはっきりしていたのですが、トキの障壁を貫
くには至らないものでした。その為に、安心して観察に徹することが出来たのですが。
　人族達が、警察がすぐ側に展開しているこの地で銃撃を平然と行っている理由もす
ぐに判明しました。この周辺に簡易な遮音障壁が展開されており、射撃音の多くを遮っ
ていたからです。
　敵の仕掛けが大体判った段階で、トキは決断を迫られます。
　さほどの脅威では無い敵に背を向け、アクセスの救援に向かうか、それとも目の前
の敵を行動不能に陥らせ、後顧の憂いを断つか。
　トキは当初、後者を選択しようとしました。敵の攻撃力はそれ程では無いとは言え、
人族の用いる術と武器の多彩さは、何をして来るのか予想がつかないだけに不気味で
した。
　しかし、その判断は誤りだったのではないか。
　トキはそう思い始めていました。
　敵の防御が想像以上に強固であり、手加減をしていては、敵を行動不能に陥れると
いう当初の目的は達成出来そうに無かったからです。
　手加減をしなければ、何とかなるか。
　何とかなるかもしれませんが、そこをトキの常識が邪魔をします。
　トキ達天使にとって、人間の命を奪う事は、最大の禁忌だからです。
　魔界側に与する人族は、天使達が守護すべき人間には該当しないのではないか。
　人間界において、人族による反撃で少なからぬ損害が出ていることから、その様な
議論は昔からあったと記録には残されています。しかし、トキの知る限り、この件に
関しては明確な結論は出ていない筈でした。
　人間の命を奪った天使の辿る道はただ一つ、──消去刑。
　それが、決まりでした。


　昨日の戦闘で明らかとなってはいたものの、攻撃の効果は薄いものでした。
　自ら小隊の指揮を取っているオットーは、敵の天使がこちらに背を向けミナ達の方
に増援に向かってしまうことを恐れていましたが、幸いにして敵はこちらと交戦する
選択をしてくれたために、最小限の義務を果たすことは出来そうでした。
「ＫＶと初めて出会った時を思い出すな。軍曹」
　傍らの“軍曹”にオットーは話しかけました。
「あの時よりは大分マシです」
「最後はどう仕留めたかな」
「あの頃は、パンツァーファウストもありませんでしたからね」
「そうだったな。では、それで行くことにしよう」


“大変だ！　都がミナに連れて行かれそうだ!!”
　それまで、後方の状況について伝えてこなかったアクセスが連絡して来たのは、ア
クセスの増援に向かった方が良かったのではないかとトキが思い始めた時でした。
“そちらで何とかならないのですか？”
“今、レイと戦ってる最中だ。セルシアが戻って来たけど、敵も多数で手が出せな
い！”
　まさか、如何にまろんの近くにいる存在とはいえ、直接普通の人間を誘拐するとは。
　それに敵も多数？
　目の前の敵に集中していたトキは、捜索半径を広げて驚きました。
　彼の同族と思われる存在が多数、公園の上空に忽然と出現していたからです。
“今すぐそちらに向かいます！”
　本来の戦場の在処を忘れ、明後日の方向で本来であれば脅威にもならない敵を相手
に時間を浪費してしまった。そんな判断ミスが、彼を焦らせていました。
　身を翻らそうとしたトキ。
　その目の前に、頬に傷をつけた人族の男がただ一人で空中に立っていました。
　彼は右手に武器らしき筒の様なものを持っていました。
「おっと。ここから先は行き止まりだ」
　その人物をトキは知っています。
　昨日、稚空と共同で退けた相手でした。
「すみませんが、退いていただけないでしょうか。先を急ぎますので」
　トキは、彼が敵の指揮官級だと直感していました。
「すまないが、こちらも仕事なんでね」
「ならば、力づくで押し通りますが」
「上等！」
　昨日の経験から、彼が今手にしている武器は、高威力だがほぼ直線にしか飛んでこ
ない──正確には曲射弾道を描いているのですが──武器と、追跡して来る代わり威
力が小さい武器のどちらかだとトキは判断していました。
　稚空から聞いた話を信じるとすれば、この種の武器は、武器そのものの構造上の問
題や、射手を保護するため、極近距離では使えず、又、距離により大きく威力が変化
することは無い筈でした。
　それらの情報を踏まえ、トキが出した結論。
　回避するよりは、むしろ高速で敵に接近し、近距離で攻撃を加える。
　一瞬で決断を下すと、トキは移動を始めました。


　目の前の敵が姿を消した──実際には高速で移動を始めただけ──瞬間、オットー
の口元が歪みました。トキが前進を始めた時点で敵との距離は、オットーの手持ち武
器を使うには近すぎる距離で、これは敵──トキ──が背を向けた時のために用意し
ていたにすぎません。
　オットーは背中に背負っていた物を取り外しました。
　ほぼ同時に、トキは直近に出現しオットーに対して攻撃を加えようとします。
　それは、至近距離からの光球による攻撃。もちろん、手加減をしての攻撃で、これ
で死に至ることは無い筈でした。
　そのトキの目の前でオットーが忽然と姿を消します。
　予めの手筈どおり、部下の魔術師がオットーを転移させたからでした。
　転移には時間がかかるのですが、出現した時には既に準備を始めていたのです。
　残されたのは、先程外した荷物。光球を止めることは出来ず、トキはそのまま光球
を発射します。ただし、その荷物に光球は当てないように。
　光球がその荷物を逸れ、地面に向かって飛んで行きました。
　しかし、トキの努力はあまり意味はありませんでした。遠隔操作又はタイマーによ
り、どちらにしろその荷物──瑠弾砲弾の炸薬部分に魔術を封じ込めたもの──は爆
発する運命にあったからでした。
　眩い閃光と共に、これまでとは比較にならない程大きな爆発音が響きました。
　それは、広い面積をカバーしている上、急造であったために性能の高くなかった遮
音障壁を通して外の警察にまで爆発音が届いた程でした。


「どうだ？」
　転移が終了すると同時に、オットーは戦果を確認します。
「天使１、急速に下降して行きます…。今、地面に落着した模様」
　即座に、返事が返って来ました。
「敵のダメージは？」
「良く判りません。が、敵に動きはありません。かなりのダメージを与えたことは間
違いないかと。ひょっとしたら、倒せたのかも」
「それはどうかな」
　まだ若い部下にそう言いつつも、オットーはかなりの手応えを感じていました。
「冷や冷やさせないで下さい」
　対物狙撃銃のスコープから目を離していなかった軍曹が言いました。
「だが、重装甲の敵には、肉迫するしか無かろう？　それに、アイツには俺のコレク
ションを沢山壊されたからな。借りは返さないとな、うん」
　オットーはそう言いつつも、相手が馬鹿正直に真っ直ぐ飛んで来なければ危なかっ
たと感じていました。
「…で、あの天使さん、地面でのびている様ですが、どうしますか？　今なら捕虜に
出来ます」
「放っておけ」
「は？」
「捕虜にしてみろ。昨日のように必死に取り返しに来るだろう。だが、地面でのびて
いるなら、敵はそれを置き去りにはしないだろう」
「……了解」
　そう答えつつも、あまり軍曹は納得していない様子でした。
「各隊に連絡。我、天使１撃墜。これより現陣地を撤収。各隊の後退の援護に回る…
とな。諸君、今宵の地獄はここまでにしよう」


●郷土資料館

「嫌！　離して！」
　空中でじたばたと暴れるまろんを抱きかかえ、セルシアはツグミと稚空の待つ郷土
資料館の隣の建物の屋上まで戻って来ました。
「落ち着くですです！」
　戻って来たセルシアはまずまろんを一喝しました。
「あ…。だって、都が…！」
「落ち着けよ、まろん」
　今度は、稚空が声をかけました。
「稚空。大丈夫なの？」
　稚空のことをツグミが抱きかかえているのを見て、ちょっと嫉妬しつつ訊ねました。
「何とかな。まだあちこち痛いが。それより都だが、今、アクセスがトキを呼び戻し
た。トキにあの天使達を攪乱させて、その隙に…」
　その時、爆発音が響きました。
「何!?」
「あっち！」
　耳で方角を確認したツグミが指さした先を見たまろん達。
　そちらの方角に、巨大な黒煙が黙々と広がりつつあるのが、星明かりでも判りまし
た。
“大変だ！　トキがやられたらしい！”
　直後、セルシア、稚空、まろんに対し、同時に心の声で連絡がありました。
「何？」
「トキが!?」
　まろん達は、セルシアの方を見ました。その場の誰もが、一番動揺すると思ったセ
ルシアは、両の拳を握りしめ、ぶるぶると震えていました。
「セル…シア…？」
　少し間をおいて、恐る恐る、声をかけたまろん。
「……です」
「え？」
「まずは、都ちゃんを取り戻すですです！」
「え、でも…、敵が……」
「あの位の数、大したこと無いですです」
　さっきと言ってることが違うと、思わずそう突っ込みたくなったまろん。
　ですが、セルシアの表情を見て、突っ込むのを止めました。
「稚空君！」
「お、おぅ」
　稚空までセルシアに迫力負けしている様子でした。
「稚空君はツグミさんとイカロスを安全な場所に。それから、トキを救出に行くです
です」
「わ、判った。だが…」
「アクセス！」
“…レイを抑えておけば良いんだな!?　うわっ…とと”
　激しく交戦中の様子のアクセスから返事がありました。
「ですです！　そしてまろんちゃん！」
「は、はいっ！」
「まろんちゃんは、セルシアと一緒にミナちゃんを追いかけるですです！」
「あ……うん！」
　表情をぱあっと明るくして、まろんは肯くのでした。


●桃栗町某所　ノインの館

　レイ隊とオットー隊の戦果は、直ちにノインの館にいたノイン達に伝えられていま
した。
「大戦果、と言って良いのでしょうか」
　ソファに座っているミカサに、お茶を運んで来たユキが訊ねました。
　枷が外れた今となっては、部隊の中でも最強とも言える力を持つユキ。
　しかし、彼女はその力を自分とミカサのためにしか用いるつもりはありません。
　それが故に、今回の作戦では自ら望み、ミカサの側でお使いにでかけたエリス達の
代わりにお茶くみなどをしていました。
　概ね何時もにこやかな表情──人によってはにやけている表情と評される──を崩
さないノインとは異なり、ミカサは複雑な表情を見せていました。
「このままでは済まない。そうお思いですね？」
　思ったことをそのまま、ユキは口にしました。
「敵は未だ戦力を残している。第一まだ、神の御子は真の力を発揮していない。彼女
が真の力を発揮すれば、戦況はたちまち一変するだろう」
「ロザリオはここにありますが…？」
　ノインはロザリオが収められた箱の方を見て言いました。
「だが、それはこの前も同じ条件です」
「そうですね。だが、今日は変身は出来ないようだ」
「この前の時も、東大寺都の命が危険に晒された時に彼女は変身した」
「今回も、そうだと？」
「確証は全くありませんが」
「ならばいっそのこと、東大寺都を置き去りにするように命じますか」
　ノインが訊ねました。この場の最高指揮官はノインである筈ですが、彼自身は全く
この作戦の指揮を執るつもりが無いようでした。
「確かに、それは一つの策ではありますが…」
　腕組みをし、暫し黙考したミカサは決断します。
　やがてミカサは作戦をノインに相談し、許可を得ると直ちに出陣するのでした。


●郷土資料館

「じゃあ、トキのこと、宜しくですです」
「任せろ」
　どう見ても動けるとは思えなかったのに、稚空はツグミ、続いてイカロスを抱えて
郷土資料館と外を二往復してのけ、その後トキの救出に向かいました。
　後には、セルシアとまろんが残されました。
　セルシアの作戦、それは単純にして明快なものでした。
　作戦目的は都の救出。その為に交戦は必要最小限のものを除き行わない。
　セルシアはまろんを抱え、警察に動きを見られないよう不可視術を用いて飛ぶと共
に、まろんは障壁を用いての防御と都の回収。
　セルシアの主張では敵──セルシアは、あの娘達と呼んだ──は、広範囲に散開し
過ぎており、高速で接近した場合、全兵力を相手にせずに済みそうだとのことでした。
「まろんちゃん。目を閉じるですです」
　すぐにでも飛び立つかと思ったのに、セルシアはそんなことを言いました。
　言われたとおり目を閉じると、ふわりと自分の身体をセルシアが包み込むのが感じ
られました。柔らかいなぁ。思わず、にやけそうになる頬をまろんはきりりと引き締
めます。
「良いですか…。まろんちゃんは、今、何をしたいですか？」
「え？」
　意味が判らず、まろんは問い返しました。
「心を合わせるために必要ですです！　だから…」
　その言葉でまろんは理解しました。
「都を……都を助けたい！」
「同調完了」
「え？」
「行くですです！」
　ぐん、と突き上げるような感覚があり、気がつけばまろんはセルシアに抱えられた
まま、遙か上空へと飛び上がっているのでした。

（つづく）

　どうやら年内に終われそう？
　では、また。

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